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 3人をさくっ、と片付けた後、アリサは観客席に戻る。

 迷宮主であるゴーレムは倒されていた。もの言わぬ岩の塊と化し、心臓部であるコアは真っ二つに割れていた。


 互いに互いの健闘を称え合うカミーラ達。

 全員無事だ。

 ホッ、と胸を撫で下ろす。


「……お前。アイツらはどうした?」

「全員、片付けておきましたよ。回収で有ればどうぞご自由に。伸びているので片付けるのは難しいかもしれませんが」


 アリサを睨みつけて来るバートランドを無視し、カミーラ達の下まで向かう。


「どうかしら? お姉さま! 私達はやってのけたわよ!」


 迷宮主を倒せた事が誇らしいのか、満面の笑みを見せるカミーラ。


「凄いですね。皆さん。私の補助が無くても、迷宮主を倒す事が出来るなんて。……では、早速戻りましょうか」


 迷宮主、ゴーレムのドロップ品を回収した後、アリサ達は帰還用の魔方陣へと乗り込む。

 眩い光に全身が包み込まれていく中、アリサは気付く。

 観客席に座るバートランドが、ずっとアリサを見つめている事に。


(これは、目を付けられたか?)


 恐らく、アリサがかなりの実力者である事にも気付いているだろう。

 面倒な事、この上無い。

 溜息を吐きながら、アリサは迷宮を後にするのだった。







 課外実習の翌日。

 移動教室へ向かう途中。

 アリサは突然、脇道から伸びて来た腕に捕まれた。気付いた時には強く引っ張られ、脇道に引き込まれてしまう。


 アリサを連れ込んだ犯人は、赤色の狼みたいな髪型に、筋骨隆々な体つきが特徴的なバートランドだった。

 そのまま、壁際に追い込まれる。

 ドン! と、壁を通して伝わって来る衝撃。


 壁ドンされた。

 女子がときめく代名詞ではあるものの、アリサの心には全くと言って良い程に響かない。前世が男性だったのが原因かもしれない。


「何か用ですか?」


 人気の無い場所に連れ込まれた。

 にも関わらず、アリサの態度は変わらない。

 表情に一切の怯えは無かった。


「お前、俺と戦え」

「嫌です」


 間髪入れず、アリサは断った。

 攻略キャラの1人であるジュダスとは訳が違う。あの時は公衆の面前での申し出だった為、断ってしまえば角が立つ。

 だからこそ要求を受け入れた。


 断わったとしても、誰も見ていないから問題無い。……まあ、貴族の要求を平民が断る、と言うのは不味い気もするのだが。

 バートランドは再び壁ドンを行う。

 今度は、先程よりも強く。


「お前に拒否権があると思うのか?」

「私が貴方に勝てると思ってるんですか? 戦ったとしても、負ける未来しか見えません。だったら、最初から戦わない方が良い」


 アリサの言葉に、バートランドは納得した様子を見せていない。

 酷く不満そうだ。


 ――バートランド・フォン・ブリッジ。


 攻略キャラの1人であり、暴行クソ野郎。

 騎士団長の息子、と言う事も有って「力」を重んじている。「力」を重んじているだけなら良かったのだが、成長するにつれて強ければそれで良い! と言う考えを持ち始め、力意外の全てに無頓着になってしまう。


 結果として、力が弱い者は見下し、力が強い者で有れば嬉々として喧嘩を吹っ掛けて来ると言う、とんでもないモンスターが誕生してしまった。

 自己中心的なので、協調性なんて皆無。


 自分の言う事を聞かない奴は、全員、力で分からせれば良いとかいう、ガキ大将の考えに染まってしまっている。

 攻略キャラの為、一定の好感度を稼げば彼氏、彼女の関係になる事が出来る。

 が、奴のスタンスは変わらない。


 例え相手が恋人であっても、自分の言う事を聞かないのであれば平気で暴力を振るう。顔面や鳩尾をぶん殴る辺り容赦がない。

 ある意味、真の男女平等主義者と言えるだろう。

 男であろうと、女性であろうと暴力を振るのだから。


 そんな暴行クソ野郎にも関わらず、甲斐甲斐しく世話を行ったり、暴力を振られながらもデートに赴くアリサの姿は印象に残っている。

 暴力を振られても尚、優しく微笑む姿にゾッとした。

 普通に怖い。


 因みに、好感度が高いとバートランドの心境にも変化が訪れる。

 暴力を振る事に対して罪悪感を覚えるのだ。最初は、暴力を振る事は当然と思っているのでかなり成長したように感じられる。


 尤も、暴力は振る。

 単に暴力を振った後「俺はなんて駄目な奴なんだ」と自分を責めるようになるだけなので、根本的な解決には程遠い。


「ごちゃごちゃうるせえんだよ。明日、グラウンドで決闘だ。来なかった、分かるな?」

「分かりませんよ。と言うか、さっきから勝負にならないって言ってますよね? 私と貴方が戦えば、間違いなく貴方が勝ちます」

「誤魔化すな。お前は課外実習でアイツらを倒した。少なくとも、それなりにやれるだろ? それに、仲間が迷宮主と戦っている時に、お前1人だけ手を出さなかった所も怪しい。だから、俺と戦え」


 誤魔化しが通用しない。

 そもそも、この程度でバートランドは折れたりしないだろう。

 軽く、溜息を吐く。


「分かりました。決闘を受けます。代わりに、お金を下さい」

「……お前、ふざけてるのか?」

「ふざけていません。決闘を受ける代わりに、貴方は私に金銭を払って下さい」


 決闘を受ければ、また注目されてしまう。

 波風の立たない平穏な学園生活から、また遠ざかってしまうだろう。

 端的に言って、アリサ側に利が無い。


 だからこその金だ。

 アリサの要求に対して分かり易く怒りを露わにするバートランド。壁に拳を、力任せに叩き付ける。

 怖くは無い。


 アリサはジッと、バートランドを見つめ続ける。

 やがて、バートランドが折れた。

 酷く忌々しそうに舌打ちをする。


「金を払えば、お前は決闘を受けるんだな?」

「はい。出来れば、金銭は多くして下さい」


 金を貰う事を条件に、アリサはバートランドの決闘を受ける事を了承した。

 場所は学院のグラウンド。

 そこで、一対一の真剣勝負を行う。

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