表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

18

***




なぜ突然記憶が戻ったのか、その理由は未だにわかりません。

もしかしたらあの日、妖精の王は死んだのかもしれません。

やつが死んだために、私の封印は解かれたのかもしれません。


もしそうだとしたら、残念です。

生きているうちに、やつに一矢でも報いたかったです。


けれど、こうなっては仕方ありません。

やつには地獄で報いることとしましょう。


ですが、ウェンディ。

あの娘は、まだ生きているでしょう。

妖獣は今もなお人を襲うことなく、大人しいまま、深淵に蔓延っています。

それはおそらく、ウェンディがいるからでしょう。

あの女はきっと、妖精の王に連れられて入った深淵の中で、妖獣たちを癒したはずです。

アンジェラ様を殺した堕獣がそうであるように、人に対する敵対心を削ぎ落したはずです。


ウェンディは人びとによって創られた説話通り、深淵の女王として君臨していることでしょう。

堕獣と妖精に囲まれて、幸福に暮らしていることでしょう。


私は復讐します。

なにも知らないでいるウェンディに、この手記を突きつけてやります。

自分の幸福が誰の犠牲の上に成り立つ者なのか。

自分は誰の骸を踏みにじって生きているのか。

思い知らせてやるのです。




アンジェラ様。

私のただの一人の主様。


私は誓いを破りました。

貴方に人生のすべてを捧げることができませんでした。

お詫びのしようもありません。


ですが、見ていてください。

私は必ずや、貴方の汚名をそそぎます。


衆愚どもに真実をつきつけてやります。


幸い、貴方が残してくれた財が、修道院にはまだ多く残されています。

そのすべてを使って、私はこれを本にします。

国中にばらまき、民の認識を改めさせます。


そしていつか。

必ずや、深淵にいるウェンディのもとまで届けます。




待っていてください、アンジェラ様。

天国にいるであろう貴方の耳にも、きっと、あの女の慟哭を届けてみせますから。






これを読んでもなお、あなたは、アンジェラ・ダーリングを怪物令嬢と呼べますか。

もし未だにアンジェラ様を怪物だと、卑しい悪女だと思っているのなら、恥じなさい。

あなたの眼は曇っている。耳は遠く、鼻と舌は麻痺している。

この世のすべての真実からもっとも遠いところに、あなたはいる。


悔い改めなさい。

人間でありたいのなら。

貴方自身が、怪物に成り果てたくないのなら。


二度と、私の主を、

アンジェラ様を、怪物などと呼ばないでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ