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写真で奇跡を起こします!絆をつなぐフォトグラファーの異世界物語  作者: 鶴丸 左京
第一章:フォトグラファー異世界へ
7/31

7、初仕事2

 



「あの写真板のこときっと聞かれるぞ。素晴らしいものだが、悪い奴等に目をつけられても困るからな、旅の魔法師に作ってもらった、ということにしておいた方がいいだろう。

 それと空中映像の方は内緒にしてくれ。今日改めて、あの写真の価値が計り知れないものだと、実感した。リン自身にそのつもりが無くても、悪用されたら大変なことになるからな。それに何がどこまで出来るのか、検証途中らしい。」


「そうさね、リンは故郷から出てきたばかりなんだろう?世間知らずじゃ、騙されかねないねぇ。その方がいいだろうさ。客に聞かれたら、そう答えておくよ。それにしても国境近くの山奥出身と聞いたが、すごい技術があるものだねぇ。こういうものは、発展した都市なんかにありそうなものだがね。」


「…それについては、いずれ話す。それまでは、知らないフリをしていてくれ。リンを守る為にも。」


「なるほどね…。ワケありってことかい。いいさ、リンは言葉使いも丁寧な上に、良い子で働き者だからね。今はそれだけで十分さ。しかしアイザックにしては面倒見がいいじゃないか?いつも一線引いて、踏み込まないアンタが、リンに関しては親切にしているじゃないか。」


「…すまん。そうか…、縁を感じてるからなのかもしれんな。リンと出会ったのは、ルボワ森林のエアリスの墓の近くなんだ…。墓参りの帰りに、リンと出会ったんだ。」


 両手で木製杯を包みながらアイザックは話す。


「そうかい…。不思議な縁だね…。もう5年くらい経つんじゃないかい?もしかしたら、エアリスが出会わせてくれたのかもしれないねぇ。あの世でアンタのことを心配しているんじゃないかい?あの子のことだから、幸せになってほしいと願ってるさ。アンタの心の問題さね。」


「そうだろうか…。気持ちは…整理できつつあると思うが、まだ誰かと深い関係になろうとは思えないな…。ただ、リンのことは放っておけないからだろうな。出会った時の瞳が、酷く怯えていて、心細い迷い子のような目をしていたんだ。きっと今は、自分に暗示をかけて気を張っているんだと、何故かわかるんだ。」


「安心しな!任されたからには、リンのことは私も気を配って協力するさ。」


 バシッとアイザックの背中を叩くレイラの表情から、頼もしさが伝わってくる。


「あぁ、頼んだぞ。ちょくちょく顔は出すようにするからな。」



 話をしていると、良い匂いが厨房から漂ってくる。



「ところで、今日の夜飯もリンが考えたんだろう?どんなメニューなんだ?無くなる前に食べたいんだ。」


「それは、リンに聞いた方が良さそうだねぇ。リン、ちょいと来ておくれ!」


 少し、待ってもらえますか?と声が聞こえて、待つこと数分。何種類か小皿に取り分けたものを、トレーに乗せてリンが厨房から出てきた。


「今日の夕食に出すメニューを、レイラさんも食べた方が説明しやすいと思いまして、全種類を少量ずつ持ってきました。アイザックさんも試食してもらえますか?」


 そうして、野菜炒め・ポテトフライ・唐揚げを食べ方や特徴を説明した。二人とも、喜んで試食してくれ、味の感想などを聞かせてくれた。

 どれも塩味ばかりだけれど、お酒に合うからOKということだった。一通り説明した後、調味料の種類が他にもないか、二人に尋ねた。レイラさんは料理が不得意だから、正直分からない、ということで市場にいけば何か見つかるかもしれない、という話だった。


 明日の仕込みはとりあえずスープは作っておいて、他のメニューは早朝の市場に行ってからになった。何か見つかるといいな。早朝散歩しながら、写真も撮ってみようかな。



 そうして始めた夜営業も盛況で、お酒と食事をを楽しむ人で賑わっていた。ホールから賑やかな話し声や笑い声が響いてくる。


「居酒屋のような雰囲気は、どこの世界も変わらないんだなぁ。」



 ここが異世界ということを忘れそうになる。そんなことを考えていると、厨房で調理してくれているジェラルドに声をかけられる。


「リン、ポテトフライと唐揚げの在庫、もう少ない。」


「ポテトフライは、縦に半分に切った後くし切りにして、水にさらして置いておいて。その後、ロークバードの肉を一口大に切ってもらえるかな。木製ボウルに切った肉に塩をスプーン5杯と、お酒をスプーン2杯を入れて、よく混ぜ合わせた後15分くらい漬け込んでおかないといけないのよ。マヨネーズは私が作るね。」


 ジェラルドに指示を出しながら、野菜炒めを仕上げる。お願いします、とカウンターに出した後、マヨネーズ作りに取りかかる。

 卵にクリーン(除菌強め)をかけてから、卵黄と卵白に分ける。小さめの木製ボウルに卵黄を入れて、塩少々と果汁を加えて、フォークでよく混ぜる。その中に油を数滴ずつ加えて、少量ずつ混ぜ続ける。


 ジェラルドは自分の作業が終わると、私の手元を覗き込んできた。


「このマヨネーズ…めちゃ美味かった…。」


 ジェラルドは19歳の冒険者だ。実家は食堂をしているらしく、調理はお手のものだ。お客で来てくれたのにも関わらず、忙しくしている私たちを見兼ねて、手伝いを申し出てくれた。ただ、ジェラルドは寡黙でクールな青年の為、黙々と作業している。


 紺色の短髪にターバンを巻いて、いわゆる細マッチョ的な体格をしている。ラフなチュニックに黒のパンツ、身長は175cmくらい。顔はやはり堀が深めで、上がり眉にブルーの瞳は一重のアーモンド型。一見怖そうに見えるジェラルドは、基本クールなので最低限の会話と頷く、というコミュニケーションを取っている状態だ。表情もあまり出さないので、観察していないと分かりにくいタイプの子なのだ。


 私の調理を手伝いながらも、興味津々な瞳で手元を見つめられる。


「ジェラルドは料理上手なのに、どうして冒険者やってるの?」


「俺の実家、食堂は兄貴が継ぐから、自立するために冒険者になった…。ただ、美味いもの好きだし、野営の時、なるべく自分で作ったり、料理は子供の頃からやってたから、染み付いてる感じ…。」


「なるほどねぇ。でも、こうやって興味持ったり、自分から進んで料理してくれるなら、”好き”ってことだと思うな。楽しそうなのが、表情から伝わってくるよ。」


 そうなのだ。ジェラルドはクールで感情を表情に出さないけど、瞳の奥には感情が見えるのだ。


「新しい料理、知りたい…。リンの料理、見てるの楽しい。パスタも揚げる料理も、初めて見た。」


「そっか。今はゆっくり教えられないけど、次回レイラさんに助っ人頼まれたら一緒に仕込みやろうか?その時は手伝ってくれるかな?」


 コクリとジェラルドが頷く。


「もう1時間くらい経つかな…。落ち着いてきたから、テーブルに戻って食事していきなよ。手伝ってくれてありがとう、ジェラルド。何を食べたい?今作っちゃうね。」


「野菜炒めと唐揚げ、マヨネーズ多めがいい…。」


「フフフッ、了解。少し待ってね。」


 唐揚げを揚げている間に野菜炒めを作る。そうして揚げたての唐揚げも器に盛り、マヨネーズをたっぷり添えた。


「はい、お待たせしました。唐揚げには付け合わせの果物を絞りかけると、味わいが変わるから、3倍楽しめるよ。」


「わかった。…ありがとう。リン、明日、市場案内する。朝、迎えにくる」


 お皿を受け取り、ジェラルドはテーブルに戻って行った。厨房の入り口から覗くと、そこには一緒に来ていただろう、仲間たちがお酒を飲みながら談笑していた。無邪気に背中をバシバシ叩いて、労っているようだった。ジェラルド愛されてるね…。

 明日の朝市場も案内してくれるし、良い子だな~。だから友達にも好かれてるんだね。


 クールだけど、ぶつかったりしないように配慮した動きに感心したな。私は料理人じゃないから厨房仕事は専門じゃない、でも動きやすかったことは確かだった。やっぱりご実家での経験から、自然に体が動くんだろうな。料理への意欲もあるし、もったいないと感じてしまう。でも本人の意思が一番大事だから、外野がうるさくしてもね…。

 今後また手伝ってもらうことがあったら、何を教えようか思案しながら、レイラさんと自分の賄いを作り始めるのだった。


 ホールでは、レイラさんの写真板が注目を集めていた。やはりこの世界には、写真はないからか、驚く人が大半で皆さん写真板を見ながら、“板に絵を描いたにしてはリアル過ぎる” “実物より3割増しに見える” など言いたい放題で、レイラさんをいじったりしながら、楽しんでくれているようだった。

 写真板をどうやって手に入れたのか説明はしたらしいが、お酒が入っていることもあってみんな冗談を言いながら、話が盛りに盛られたようだった。

 結局、“レイラさんと結婚を考えていた魔法師がプレゼントしたものだが、肝心の魔法師は未だに迎えに来ない” という何故か悲恋のストーリーが付け加えられていた。


「レイラさんも呆れながら笑っていたし、面白ければ何でも良いんだね。アハハ…。」


 コミュニケーションのきっかけになったり、人に喜んでもらえるのは、素直に嬉しいよね。こんな風にこちらの世界の人たちにも写真の良さを知って、大切にしてもらえるようにしたいな…。


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