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写真で奇跡を起こします!絆をつなぐフォトグラファーの異世界物語  作者: 鶴丸 左京
第一章:フォトグラファー異世界へ
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5、レイラの月光宿



クリスさんのお店を出て、アイザックさんと合流した私は、今夜の宿に向かっていた。


「それにしても、服装が違うだけで雰囲気が変わるなぁ。この街の住人に見えるぞ。」


「フフフ。アイザックさんにそう言ってもらえると、安心できます。」


10分程歩くと目的の宿、“レイラの月光亭”に到着した。扉をくぐり中に入る。入ってすぐの右側にL字型の受付カウンターがあり、左側には上の階へ続く階段がある。奥は食堂のようになっていて、テーブルと椅子が5セット程置いてある。窓からは日差しが入り、素朴で温かみを感じるお店だ。

 昼食のピークを過ぎた後だからか、店内は2組の冒険者風のお客さんが食事をしていた。奥の厨房らしき場所から、女性が顔を出す。


「いらっしゃい!あぁ、アイザックかね。少し待っておくれよ、すぐ行くからね。はいよ、今日のランチだよ。これ食べて午後からも頑張りな!」


ハキハキとアイザックさんに声をかけた後、食事を給仕して受付までやってきた。


「さっき話したリンだ。」


スタイルの良い、40代くらいの女性が近づいてくる。胸元から豊かな谷間が見える紫色のワンピースに、白いエプロンと頭には三角巾をつけて、“お姉さま”と呼んでしまいたくなるような雰囲気の持ち主だ。ブラウンの髪はコンパクトにまとめてあり、キリっとした眉と大きな目にグリーンの瞳、年上なのだろうが若々しさがある。


「そうかい、若いお嬢さんだね。ここの店主のレイラだよ。ひとまず7泊入れておいたよ。一週間で銀貨3と銅貨5枚を先払いだ。うちは素泊まりが基本だから、食事が必要な場合は、前日までに言っておくれよ。」


「リンです。わかりました、お世話になります。」


「リン。荷物おいてきたら、ここで昼食をもらおう。」


 1泊銅貨5枚ということね。代金を支払い、階段をレイラさんと二人で上がる。


「さあ、この部屋だ。ドアについた、この鳥のマークが目印だからね。ほら、これが鍵だ。部屋の掃除や洗濯は別料金だからね、自分でできるんなら、風呂の水道を使いな。わからない事があったら、また聞いておくれ。それじゃ、あたしは戻るよ。」


「はい、ありがとうございます。」


改めて、部屋を見回す。正面には窓があり部屋は明るい。室内はワンルームの8畳くらいだろうか、木製のベッドが壁側にあり、窓の下には小振りな机と椅子が置かれている。ベッドの向かい側にはクローゼットタンスがあり、服が掛けられるようになっている。


 荷物を机の横に降ろして、先程購入した洋服を、クローゼットに掛ける。一応、キレイにしておきたいよね。


「クリーン」


小さく唱えて魔法を発動する。部屋全体に薄い膜のような光が広がる。そしてキラキラと光の粒子に包まれた。うん、イメージ通り魔法が使えたな。

自分の魔法に満足しながらカメラバッグを背負い、待っているアイザックさんの元に戻るのだった。




 階下に降りると、奥のテーブルにアイザックさんが待っていた。私に気づいたアイザックさんが軽く手を挙げ、合図する。


「リン。ここだ。」


「お待たせしました。」


向かいの席に腰を下ろす。


「ランチを注文しておいた。だがな、味は期待するなよ。レイラの料理は、何というか…個性的なんだ。安くても量はあるから、腹は膨れるんだが……。当たりはずれがあるんだよ。まあ、駆け出しの冒険者たちには打って付けなんだ。」


そう言って、いたずらっ子のようにアイザックさんは笑う。


「そうなんですね…。でも、どんな食事か楽しみです。」


「食事を済ませたら、少し早いが、今日はゆっくり休むといい。昨日から大変だっただろう?明日、また様子を見に来るからな。明日は市場を案内しよう。」


「ありがとうございます。でも、働くところも探したいです。今の所持金では心許なくて…。それに住むところも探したいです…。」


「それもそうか。どんな仕事が希望なんだ?得意なことはあったりするのか?」


「う~ん、得意なことで言えば、写真ですけど、まだ検証が済んでない状態なので、仕事としてはまだ難しいです。家事などは一通りできるので、力仕事以外ならできそうです。」


 学生の頃はアルバイトで色々な職種を経験したし、ある程度なら何とかなりそうな気がする。そんな話をしているとレイラさんがランチを持ってテーブルに置いてくれる。


「はいよ、ランチ2つね!」


 大きいステーキにパンが木製の皿に大盛りに、スープは同じく木製の丼のような器になみなみと注がれている。確かにすごい量…。ステーキは、豚肉のような色ね。どんな味なんだろ?パンはメロンパンくらいの大きさが3つ。こんなに食べられるかな。いや、昨日からまともな食事をしていないから、今日は食べられる気がする…!


「おう。リン、いただくとしよう。」


「はい、いただきます。」


手を合わせて、いただきます。と挨拶する。


「それはリンの国の作法か?」


「はい、食事の前の挨拶です。料理をつくってくれた人、食材を作ってくれた人、食材の命をいただくこと、それらに対しての感謝の意味を込めて“いただきます”と、食べ終わったあとは“ごちそうさまでした”と挨拶します。」


「なるほど…。考えてみたら確かにそうだな。素晴らしい考え方の作法だな。俺も使わせてもらおう。」


 アイザックさんも、いただきます。と挨拶をしてステーキから食べ始めた。

私はまず、スープをいただく。ごくっ、う~ん。不味くはないけど塩味だけだから、少し物足りなく感じてしまうな。出汁とかないのかな…。次はステーキをナイフで切る。なかなか切れない!ぱくっ、か、硬い…。中々嚙み切れずに苦戦する。ステーキは豚肉に似ていて美味しいけど、塩味だけのようだ。パンも食べてみよう。ぱくっ、これも硬いな~。乾燥したフランスパンに近いかな?まあ、良く噛めば食べられるし味はいいけど、食べづらさはあるから、スープに浸して柔らかくして食べよう。


「仕事の話に戻るが、すぐに見つかりそうなのは、掃除婦や給仕あたりになるかもな。他は、冒険者ギルドや商業ギルドの職員補助は人で不足と聞いているから、働けるかもしれんな。」


「なるほど…。」


 仕事探しの話をしながら食事をしていると、会話が聞こえていたのか水差しを持ったレイラさんが、テーブルまでやってきた。


「アンタ、仕事を探しているのかい?」


「はい。所持金が心もとなくなってきまして…。住居を借りるための資金も貯めたいと思ってまして…。」


「それなら、この宿はどうだい?実は昨日、給仕係の子が足のケガをしちまってね、代理を探そうと思ってたところだったのさ。」


「それはいい案だ、レイラなら安心してリンを預けられる。顔も広いし、変なちょっかいをかける奴は居ないだろう。」


「ありがとうございます!お役に立てるように頑張ります。」


「こっちこそ、探す手間が省けて助かったよ!食事が済んだら、仕事の説明をしようかね?」


「よろしくお願いします。」


「すぐに見つかって良かったな。さ、残りも食べてしまおう。ちょくちょく様子を見にくるから、何か困ったことがあったら言えよ?」


「はい、ありがとうございます。」


仕事が見つかった安堵もあり、自然と笑顔になる。そんな私をアイザックさんは優しい笑顔で励ましてくれながら、私たちはランチの続きを食べ進めるのだった。


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