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写真で奇跡を起こします!絆をつなぐフォトグラファーの異世界物語  作者: 鶴丸 左京
第一章:フォトグラファー異世界へ
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2、遭遇



 スマホの地図を見ながら、ひたすら歩く。この森はルボワ森林というらしい。まずは一番近い街 “ヘルゲート”を目指す。


「しかしこの地図、かなりざっくりした簡易的な地図だし、日本ではないよね…」


 地図を見て日本ではないことを確信した。知らない地名だし、今までの地図と違う。日本の地図は、細かい道路の表示もあり精密だったけれど、絵本のような簡易的な絵と、街の特徴を描いたらしき絵、ちなみにヘルゲートは噴水がある街のようで、噴水の絵の上に街名が書いてある。街へ続く街道のような道は、薄く細い線で描かれている。ちなみに私の位置は、赤い▲マークで表示されている。

 なぜ地図アプリが使えるのかを考えるのは、ひとまずやめておこう。


「使える時点でチートだよね…。他のアプリも時間がある時に、検証してみないとね。便利機能とか魔法的な現象とかあるのかな…」


 ん?魔法…?


「そうだよ!魔法!魔法とか存在する世界だったりして~?魔王とか魔獣とか世界を救うクエストとかあるのかな~?」


 ステータスオープンとか言えば、出てくるかな。


「ステータスオープン!」

「………」


 何も出ない。そんな都合よく、いかないよね…。よし!深く考えず今の現実に目を向けよう。そう前向きに考え一時間程歩いた頃、息が上がり汗も噴出していたこともあり、休憩をとることにした。


 大きな木を見つけ、荷物を降ろす。はぁ~!と息をついて、木の窪みに座りこむ。思っていた以上に、疲れていたようで、ダルさが体を襲う。カメラバッグに入っていた、ペットボトルの麦茶をゴクゴクと流し込む。飲み物持ち歩いていて良かった~!としみじみする。


 一息つけたことで、呼吸も落ち着いてきた。目を閉じて深呼吸を数回行う。そしてそのまま眠ってしまった。



 鼻をくすぐる自然の香りを感じて目を開けると、なぜか森の中だった。


「あれ、私何していたんだっけ…?」


 驚いて周囲を見回す。そこで自分の状態に思い至る。


「そうだ…森の中を歩き続けて疲れたから、休憩したんだった。」


「ふー、暗くなる前に一晩過ごせそうな場所を探さないとね。よっこいしょ。」


 ため息を吐いた後、立ち上がる。すぐそばにある自分の荷物を見る。


「これを担ぎながらの移動って疲れるんだよね…。重くても今の私の全財産だからなぁ。一緒に行こうね。」


 そう呟きながら、カメラバックを背負い、ボストンバッグは肩に斜めにかける。背中と肩に、ズシリと重みを感じながら、歩き出した。


 さらに一時間ほど移動し、街道を目指して歩いていると高い木に囲まれているが、少し開けた場所にでた。

 広さは20畳ほどだろうか、人工的に造った休憩場所にも感じる。よく見ると焚火をした形跡もある。微かに水音も聞こえてきた。


「この場所、良いかも!水音も聞こえるし、近くに川があるのかもしれない。」


 荷物を置いて、腕を伸ばしたり肩を回してストレッチする。


「はぁ~!疲れた~!」


 重い荷物から解放されて気を抜いていたその時、ザッザッザッガサガサと、草や木の葉が擦れるような音が聞こえてきた。


 なにかいる?どうしよう、武器とか何も持ってないけど、熊みたいな肉食動物とか出てきたら逃げられる自信がない…。一気に血の気が引いていく。


 だんだん近づいてくる音に、恐怖がせりあがってくる。カメラバッグを引き寄せ、クリップオンのストロボを取り出す。電源を入れてチャージを始める。


「目の前に来たら、フル発光してやる…!」


 光で目つぶしをしたら、その隙に逃げられるかもしれない。


 息を殺して音に耳を澄ます。やっぱり近づいてきてる…!狼や熊が現れるのを覚悟しながら、手に力を入れる。そして姿を現したのは、男性だった。


「お?先客か?珍しいな。ここで自分以外の人間に会ったことなかったけど」


 そう言いながら男性は、自身の荷物を降ろした。


 思わず男性を観察してしまう。身長は185cmくらいだろうか背が高い。髪は赤く癖毛なのか少しウェーブのかかった長髪を一つに結んである。襟付きの生成りのシャツに皮のような素材のベストを着ている。体にフィットしたカーキ色のズボン。腰に帯剣をしており、他にも様々な装備がついているようだ。手には指先のないグローブを付けている。ひざ下までのブーツを履いて、いかにも冒険者といった風貌だ。

 顔は小さく太めの眉と切れ長のブラウンの瞳が印象的で、ワイルドな美形だ。


「…?」


 言葉もなく私が凝視していたからか、男性も不思議そうに、私を見つめてきた。


 胸まである黒髪を緩いおさげに結んだ私は、オーバーサイズの白いシャツワンピースにデニム、日焼け防止の黒のチューリップハットにスニーカーと、手にはクリップオンストロボを握っている。


 シンプルだがいかにも異国風に見えるような服装と、日本人でも割とハッキリした顔立ちの私を観察した後、こちらに近づいてくる。


「あんた、冒険者じゃないよな?こんな場所に一人か?それに女だよな。見たところ武器も持ってなさそうだし、どうやってここまで来たんだ?」


 怪しい者を見る警戒した目で、男性は私に話しかけてきた。言葉は分かるみたいだ、良かった…。そのことに安堵しながらも、質問されたことに何と答えたら良いのか考えあぐねていると


「どうした?異国人か?言葉が通じないのか…?」


 男性は呟くように言った。私は小さく首を横に振り、


「言葉はわかります。だけど…どうやって来たんだって聞かれても、私にもわからないです。いつの間にかこの森にいたので…」


「そうか…、何か事情がありそうだな。俺はアイザック、見ての通り冒険者だ。あんたの名前は?」


 名乗ろうとして、思いとどまる。こういう場合、本当の名前を教えない方が良いよね。


「私は、リンです。」


 友人から呼ばれる名前で答える。


「リンか。あんたが良ければ話も聞けるが、まずは休憩させてくれるとありがたい。」


「それは構いません。私も、休憩しようと来たばかりだったので。」


 そうか、と言うとアイザックさんは自分の荷物の方へ戻っていった。

 立ったままだったことを思い出して、その場にしゃがみ込む。思わず、はぁ~!と息を吐きだした。握っていたストロボをカメラバックにしまい、ペットボトルの麦茶を取り出した。


「あれ?半分まで飲んだはずなのに、満タンになってる…」


 チート凄すぎる~!麦茶をいつでも飲めるのはありがたい。スマホにしても麦茶にしても、現実世界から持ってきたものは、チートグッズなのかな。もしかして、カメラもそうなのかな。チートじゃなかったとしても、ここでもカメラ使って働けないかな。麦茶を飲みながら、アレコレ考えていると、アイザックさんが近づいてきた。


「すまないが飲み物を少しわけてくれないか?飲み干したことを忘れてたんだ。」


「いいですよ。どうぞ。」


 蓋の開いたままのペットボトルを手渡す。受取ったアイザックさんは容器を不思議そうに見た後、ゴクゴクと飲んだ。


「うまいな!香ばしいのにすっきりとした味だな。」


「ふふふ。お好きなだけ飲んでくださって大丈夫ですよ。」


「そうか?それならもう少しいただくとしよう。」


 そうして半分以上を飲んだあと、麦茶を受け取った。


「ありがとう。ここから二時間ほど歩くけば、森を抜けられるが歩く体力は残っているか?」


 二時間か……。正直なところ自信はないけど、森の中で夜を過ごすのは避けたい。頑張って歩いてみようか。


「はい、森を抜けることを優先したいです。」


「そうか。歩きながら、リンの話を聞いても構わないか?」


「もちろんです。」


 では出発するか。と言い、お互いに荷物を持つ。


「リンの荷物は随分と重そうだな。大丈夫か?一つ貸してみろ、持ってやるよ。」


 アイザックさんはそう言って、私のボストンバッグをヒョイと持ち上げる。気さくに話してくれるアイザックさんに、今日起きた出来事を話しながら、私たちは街道に向けて歩き出すのだった。


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