すだれうごかし。
「秋だな。やっとまともな奴がきた。」
俺は思わず、四季で唯一嫌悪感を抱かない時期の来訪への歓喜を、素直に口にした。
春も夏も冬もふざけた奴らばかりだ。春は馬鹿みたいに陽気で、夏は狂ったように熱意があって、冬は言うまでもなく暗さと冷たさで満ちている。
しかしなぜ秋だけ素直に喜べるのだろうか。
恐らくそれは、部屋に散乱してるあいつとのスーブニールが唯一秋だけ何もないからだろう。
そもそも彼女の人間性自体、秋とは真逆だったなと今更ながら思う。
落ち着きがなくて、一緒にいると息が詰まる、そんな人間だ。他の四季共だって彼女との同列を厭うだろう。
経験者の俺が言うのだから間違いない。彼女への理解が進めば進むほど、指数関数的に彼女に対する嫌悪も増していくほどには終わっている奴だった。
事務所の錆びついた窓を開け、秋と、かすかに冬の予感を抱いた風を受けても彼女に対する憎悪は増す一方だった。
何より、人間性が腐敗しているくせして、それを取り繕う技術も拙いところが気に食わなかった。
苦虫を噛み潰したような作り笑顔を周りに振り撒いたと思えば、後々、振り向いた人の愚痴や単純な誹謗を、満面な笑みを浮かべながら俺にいっていた。
そんなやつを。俺は。