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8 鑑定も習うよ


あっさりと転移魔法ができてしまったので、ロイから便利魔法の定番、鑑定を教えてもらえることになった。

さすが魔法部隊副隊長!頼りになる!


「鑑定と魔法陣魔法は属性のない魔法だと言われているよ」

「無属性なの?」

「正確には『どの属性でもいい』魔法だね」

ふーん。魔力があればいいってことか。


「召喚は魔法陣を使うからそっちが媒体になる。ま、これは詳しくは後でね。鑑定はどの属性でもいいので2つの属性を使う。魔法使い(ソルティースト)なら大抵使えるかな。ニコも使えてたよ」

「へー」

確かに使えてはいたんだけど、どうやって使ってたのか全く記憶にないな。魔法の使い方に関してはニコの記憶は無に等しい。何故だ。異世界補正か。


「鑑定は、大きく分けて対象物の状態を見る、記録したデータを照合する、の2つ」

ふむふむ。

「まずは魔力の色を見れるようにしよう」

なるほど。属性には色があるからな。ロイの体をじーっと見るが、全く分からなかった。


「属性を知ることは一番基本的で有効な手段なんだ。どんな攻撃をしてくるか対策が立てられるからね」

確かにそうだな。

「魔力の器は心臓の近くにあることが多いよ。ちなみにニコの魔力は体からはみ出てるね~」

「は、はみ出てる?」

「魔力が服着て歩いてる感じ」

それってどんな感じ?人なの?

もともとのニコの魔力と、今のオレの魔力は天と地ほどの違いがあるそうだ。ロイはオレを鑑定して違和感を持ったみたいだしね。


「じゃ、魔力を使ってみるから意識して色を見てね…そよ風(ブリーゾ)

ロイが簡単な魔法を使ってくれる。魔力の器があるという心臓の辺りに注目すると、なんとなく靄?のようなものがロイの胸元から手に出ている気がする。でも色はよく分からない。


「んー、魔力の色…」

魔力、というものに馴染みがないオレは感覚でそれを掴むのがなかなか難しい。

この世界には魔素という魔力の素となる物質が大気中に溢れているらしい。見えないけど。それを吸収して魔力に変換して使う。特にこれは意識して行う訳ではなく、魔力の器の自動制御だ。魔力の器の中で属性を作ってる感じかな?


「それから持ってるものも見れる。金属が特に見やすいかな。武器を仕込んでる場合は戦闘員だろうから、分かっていれば対策が取れるね」

なるほど。それも役に立ちそうだな。


よし、集中。

眼を閉じた。

イメージするのはサーモグラフィーや、レントゲンだ。内部を見る感じでイメージする。


鑑定(ターキソ)

効果を上げるために言葉に乗せる。

眼を開いてロイを見た。上半身を覆う魔力が見える。赤、青、緑、茶、黒、紫の6色の魔力。ロイは火、水、風、土、闇、時の加護持ち。なるほど、魔石の属性色と一緒で分かりやすい属性の色だ。

「何が見えた?」

左右のズボンのポケットに短剣が入っているのが見える。ウエストポーチの中は…なんか混沌としてるな。いろんな色の…多分魔石と、硬貨が入った財布、栄養剤みたいな瓶に入った何かもあるな。


「両ポケットに短剣、と…ウエストポーチの中にいろんな色が見える。魔石?」

「正解。短剣の魔石の予備」

ロイが短剣と、ウエストポーチから魔石を出す。短剣は魔道具で、魔石は柄の部分にはめて使うらしい。2本あるのは、魔法を使う時の媒体用と、普通に短剣として使う用。どっちも魔道具らしい。

「慣れると毒とか麻痺とかも鑑定できるよ。実際にかかってる人がいたら鑑定してみて」

そんな機会あるのか謎だが。…まぁいいや。



「もう一つの、記録したデータを照合する方だけど、基本的に人や魔物、植物や食べ物…何でも鑑定の対象になるね。例えば一度戦った魔獣とか、あと本で知識が頭に入ってたりすると、姿を捉えた時に攻撃方法や弱点なんかがわかるようになるよ。別の所に記憶しておいて、特徴で照合する感じかな」

最初UNKNOWN(アンノウン)の敵の名前やステータスが、一回戦うと表示されるみたいな感じか。

便利そうだけど、初見では分からないということだな。まぁ、初めて会った人の名前や正体が表示されるとか意味が分からないからいいんだけど。


「これ、何だと思う?」

小さな瓶に入った液体が2本。違うものだろう。薬屋で売っている薬には、それぞれ決められた目印があるため、見れば分かる。

「こっちが傷薬で、こっちが毒消し」

葉っぱのマークが傷薬。

毒マークに上から×が毒消し。

ランクは星マークの数で表示される。傷薬が星2つの中級、毒消しは星3つの上級だ。

「そうそう。それを鑑定でパッと分かるようにする。作られた材料で判定する感じだね」

知識があれば色々鑑定できるのか。便利だな。食事に何の毒が仕込まれてるとかも鑑定すれば一目瞭然だ。


「例えばこの中級傷薬の材料は、十薬草、癒草、月光花、あと魔力水」

「詳しいね」

薬師(アポテキースト)の資格も持ってるからね」

「へえ。すごいな」

さすが魔法部隊副隊長。多才だ。

「魔法学校の卒業生で水属性があればだいたい持ってるよ」

薬師(アポテキースト)とは、薬草等を組み合わせ、薬を作る職業だ。

魔法学校または騎士学校の薬師講座で習うか、師匠について1年ほど勉強し、国家資格を取ると薬師(アポテキースト)を名乗れる。薬を調合する時に魔力の水を使うため、水属性が必須の職業だ。


「材料は、図鑑で見てもいいんだけど…やっぱり実物を確認した方がいいかな」

確かに実物の方が鑑定もしやすいかもしれない。

薬草ってどこに生えてるんだろう。今から取りに行くのか?


「よし、薬草屋に行ってみよう」

あ、店でした。薬草採取とか冒険者の初級任務…ロイが行くわけないか。



ロイに連れられて薬草屋に行くことになった。

薬草屋とは、薬師(アポテキースト)向けの薬の材料を売るところだ。もちろんグレンツにも店がある。


「いらっしゃいませぇ~。あら、ロイ様じゃないですかぁ。お久しぶりですねぇ」

店主は若い女性で、ロイの知り合いらしい。

「やぁルイザ、久しぶり。今日は甥のニコに、薬草を見せてやりたいんだけどいいかな?鑑定で使うんだ」

「もちろん構いませんよぉ。ニコ様、ご病気だとお伺いしてましたけど、快復されたんですねぇ。よかったですぅ」

「ありがとう。元気だよ」


ルイザという店主は、ロイの幼年学校の同級生で、薬師(アポテキースト)でもあるらしい。薬草の他にも、自作の薬や生活用品などを売っていて、冒険者や近所の人が訪れているようだ。

「自由にご覧になってくださいねぇ」


まず、中級傷薬の材料を出してもらい、確認していく。

傷薬とは、怪我をした時に患部にかけて使う薬だ。痛み止め、止血、殺菌、治りを早くする効果等がある。上級になると治りも早いが高級な薬草を使うためお値段もいい。


「これが十薬草。色んな効果がある薬草の基本だね。そのまま傷口に擦るだけでも多少の痛み止め効果があるよ。毒消しにも使う」

これは見た目完全にドクダミだな。匂いも強くて効きそうだ。


「これが癒草。魔素が濃い場所に育つ。修復する力が強いよ」

癒草はヨモギのような形だな。


「月光花は、夜に白い小さな花が咲く。花が咲いているものしか効果がないんだ。月の浄化の力を取り込んでいると言われているよ」

月光花は、棘のないサボテンのような多肉植物だ。確かに小さな花が咲いている。


「ニコ様、ちょうど中級の傷薬を作るところだったので、ご覧になりますかぁ?」

「いいの?ありがとう。お願いするよ」

ルイザの申し出をありがたく受け取る。確認のために出した薬草をそのまま使うようだ。


「まず、魔力水を入れますぅ。で、刻んだ十薬草を入れて、温度を上げて抽出しますぅ。調合器は魔道具なので、火魔法は使わずに温度調整ができますよぉ」

へえ、魔道具なのか。火にかけたりはしないんだな。


「癒草も同じようにやりますぅ。温度が違うので別の調合器ですぅ」

ルイザが手早く薬草を刻み、別の調合器に入れていく。


「月光花は花ごとすりつぶして魔力水を入れてぇ、低温で抽出しますぅ」

この抽出器はすり鉢になっているらしく、ごりごりとすりつぶした後に魔力水を入れてかき混ぜる。それぞれ抽出するために時間を置くようだ。


「全部混ぜて濾しますぅ…瓶に詰めて、はい、できあがりですぅ」

「簡単そうにやってるけど、けっこう難しいからな」

ロイができあがった傷薬を受け取りながら言う。

ま、そうだろう。温度調整とかもあるだろうしな。オレも水属性あるし、できないこともないんだろうけど、細かい調整とかオレはあまり得意な方ではない。うん。得意な人にやってもらおう。


ルイザに他の薬草も見せてもらい、いくつかの調薬の組合せを覚える。特に十薬草は色んな薬に使われる薬草のようで、出番が多かった。ドクダミって有能なんだな。


置かれた中級傷薬を眺める。

中級傷薬の材料は、十薬草、癒草、月光花、魔力水。この瓶の中に入っているのはその抽出液だ。


鑑定(ターキソ)

中身をイメージしながら瓶を見ると、中級傷薬とポップで表示された。その下に材料が、十薬草、癒草、月光花と表示されている。きちんと鑑定できたようだ。

表示が単色でいまいちなので、ゲーム画面をイメージする。名称は大きく、未知のものはUNKNOWN(アンノウン)と表示したい。で、その下に薬草なら効能や使い道、魔物なら属性や弱点。人なら役職、関係、性格や注意点などかな。とりあえず色々表示されるように。カラーにしてイメージを固めていく。


試しに目の前にあった十薬草を鑑定してみる。


『十薬草』

色々な薬に使う万能薬草。ドクダミに似ている。


…完全にオレの主観だな。ドクダミって、この世界じゃ言わないでしょ。もう少しマシな鑑定結果にするために後で図鑑読んでおこう。


人も鑑定してみようかな。目の前にいるロイをじっと眺めた。属性の色は見えている。

後は…オレの記憶とロイの顔を接続する。よし。


鑑定(ターキソ)


氏名 ロイ・フォルトナー

種族 人間

性別 男

年齢 28

職業 魔法使い

肩書 騎士団魔法部隊副隊長

出身地 グレンツ(フォルトナー領)

父 ラルフ・フォルトナー

母 レノア・フォルトナー(故人)

ニコの叔父

フォルトナー辺境伯の弟

…………


「あ、見えた。色んな記憶が結び付く感じ」


「鑑定は言葉に乗せない方がいいね。基本こっそり見るものだから」

「なるほど確かに」

バレないようにやった方がいいな。


オレの鑑定のイメージ的には、


ロイ・フォルトナー

魔法使い

レベル58

HP 300/300

MP 350/500

物理攻撃力 50

魔法攻撃力 180

防御力 80

運 50

↑こういう感じを期待してたんだが、ゲームの世界じゃないし、レベルとかステータスとかそんなものないか。

自分の魔力量とかも分からないし、どれだけ使えばなくなるかも把握してないしな。使えるだけ使ってみて、使えなくなったらそこが限界ということで、実践していくしかないだろう。


「鑑定も大丈夫そうだね」

今日一日で転移と鑑定が使えるようになるなんて嬉しい誤算だ。

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