15 王都へ到着
「おぉ!ここが王都!」
3日半の旅を終えて、 無事に王都に到着した。
「正確には王都の城下町だがな」
リストが言う。
正確に言うと王都の城下町カストーアに入ったところだ。城下町カストーアを含む王都はアステーラで最も大きな都市だ。
カストーアに入る門は均等に8箇所ある。フォルトナー領から近いのは東門だ。門は二重になっていて、ここで王都に入るための審査がされる。審査は一般用と貴族・要人用に分かれているので、貴族のオレ達はさらっと審査されただけだ。うーん、格差社会。
王都は明確に2つに分かれている。王都マリクレイと、城下町カストーアだ。
王都はドーナツ状に2層構造になっており、内側は城をぐるりと囲むようにある王都マリクレイだ。建国当時に作られた街らしい。
王城の周りには騎士団の本部の塔と、貴族の屋敷などがあり、通称で貴族街と呼ばれる。住む人が限定された場所だ。フォルトナー家のタウンハウスもそこにある。
その外側にある城下町カストーアは後から出来たもので、王都マリクレイが高台に作られているので明確に分かれている。王都はどこからでも王城と、騎士団の塔が見える都市だ。
王都は中世ヨーロッパのような街並みだ。石畳で整備された道の脇には様々な店が並び、遠くに城も見える。街には活気があり、多くの人で賑わっている。
ニコは初めてではないが、オレは初めてなのでちょっとワクワクする。
「あっ、ニコ~!」
声が掛けられる。門を出てすぐの広場でロイが待っていた。
「リスト、護衛ありがとうね」
「ああ…色々と凄いものを見たぜ」
リストが遠い目をしているが気にしたら負けだ。
「じゃあ俺は冒険者ギルドへ行ってくる。夜、フォルトナー家に行くから」
「あ、お願いしちゃってすみません。よろしくお願いします」
「夕飯、リストの分も用意してもらっておくよ」
ロイがそう言うとリストは手を上げてその場から消えた。
冒険者ギルドへは転移で向かったようだ。
「ニコ、お昼は食べた?」
「まだだよ」
「じゃあ、道沿いにお薦めの店があるからそこに行こう。馬車も置けるし従者用の食事も用意してくれるからセリロもそこで食べるといいよ」
「ありがとうございます」
再び馬車に乗り、ロイお薦めのレストランに到着した。馬車を停めるスペースがあるあたり、貴族が来ることも想定したレストランだ。
ロイは常連らしく、丁寧な挨拶の後に個室に通される。さすが貴族。いやオレも一応貴族なんだけどね!
「お薦めはミンチ肉の煮込みかな」
ロイのお薦めを頼んでもらい、待つこと10分。美味しそうな匂いと共に食事が運ばれてくる。
「美味しそう」
煮込みハンバーグだ。ハンバーグあるんだね。
ロールパンにコーンスープとサラダもついている。
「王との謁見だけど、明日の16時に決まったから。騎士団の馬車が迎えに来るからね。自分で行かないように」
「うん、分かった」
王とは2度しか対面したことはない。
幼年学校を卒業した年のデビュタントで父と挨拶したのと、魔法使いの資格を取った際に授与式で魔法使いの証明である表彰盾を受け取った2回だ。オレは三男だし、向こうも絶対に覚えてないだろう。
「それから錬金術師のゴードンには、明日の朝一で行くって伝えてあるからね。朝食をとったらすぐ出発するよ」
「分かった。ありがとうロイ兄さん」
明日は忙しくなりそうだ。
食事が終わり、再び馬車に乗ってマリクレイに入るための門を目指す。
カストーアの外側の門から中央部へは放射線状に8本の道が通っていて、その道を境に南、東、西、北と地区が4つに分かれている。今通っているのは東地区だ。マリクレイへ入るための門がある中央部には騎士団の基地や詰所、図書館、学校など国営の施設が並んでいる。魔法学校も南火門のすぐ隣にある。
王都マリクレイに入る門は東西南北に4ヶ所で、南が火、北が水、東が風、西が雷とされる。門の色も属性の色で塗られていて夜は完全に閉ざされる。
東風門に到着する。門の色は緑だ。ここでも審査は一般用と貴族・要人用に分かれているので、馬車に乗ったまま簡単に通れた。マリクレイは高台のため馬車で坂道を登るとカストーアが見下ろせる。遠かった王城が近くに見えた。ここまで来ればもうすぐタウンハウスに到着だ。
王都マリクレイにあるフォルトナー家の別邸であるタウンハウスは、王都に召集された際の滞在先になる。
使用人の家族が暮らしていて、いつも綺麗に保っていてくれるので、突然行ってもすぐに滞在可能だ。
グレンツにあるフォルトナーの本邸よりは手狭だが、手狭と言っても何部屋もあるし、王都の中心部ながら馬が入れる庭もある。つくづくニコは桁の違うお坊ちゃんだなと思うわけだ。
「まぁまぁニコ坊っちゃま!よくご無事で!あらロイ坊っちゃまも!」
「マリサ、リカルド、久しぶり。心配かけたね」
「元気なお顔を見れて、マリサは嬉しいですよ」
馬車を降りると駆け寄って来たのは使用人のマリサ。マリサは少しふくよかな女性だ。背も低めでコロコロしてる感じ。
夫のリカルドと2人で別邸を管理してもらっている。娘は既に嫁ぎ、息子も騎士団に入っていて妻子持ちだ。
王都マリクレイにあるタウンハウスは、親族は許可があれば自由に滞在することができるので、ロイもかつてのニコも魔法学校へ通っていた時にはここに住んでいた。マリサ達には3年間お世話になっていて、優しく頼れる皆のお母さんだ。
「2人とも変わりはない?」
「ええ、ええ。ニコ坊っちゃまのお顔を見たら更に元気になりましたよ!」
マリサの言葉にリカルドも頷いている。
リカルドは執事で、屋敷の管理、フォルトナー辺境伯への取り次ぎや、王都の貴族への対応などを請け負ってくれている。
「ニコ様、リアム様から言付けをいただいておりますよ。明日、お会いしたいということです」
リアムか。情報が伝わるのが早いな。
リアムは母方の従兄弟であり、魔法学校の同級生でニコの友人でもある。リアムも立場が特殊な人なので行く場所を選ばなくてはならないが…。
「時間と場所の指定は?」
「明日は休暇なのでニコ様に合わせるそうです」
「んー、明日は午前中と夕方は予約があるんだ。昼食の準備をお願いできるかな?」
「畏まりました。昼食にリアム様を招待いたします」
「あらまあ!じゃあ食事はマリサが用意しますからね!何か食べたいものがあったら仰ってくださいな!」
「そうだね。リアムが好きな家庭料理がいいな」
リアムはマリサの作る家庭料理が好きだ。
ニコがここに住んでいた時にはリアムもよく来ていたので、リカルド達の対応も手慣れたものだ。
明日の予定が決まった。
朝一で錬金術師のゴードンのところへ行く。お昼をリアムと食べる。16時から王と謁見。わぁ。盛り沢山。しかも最後が濃い。
夕食にはリストも合流することになった。
ロイが魔法学校に行っている間はリストもよく遊びに来ていたようで、マリサやリカルドとも顔見知りのようだ。お土産に黒魔牛の肉を渡して喜ばれていた。
「ニコは冒険者登録してなかったから、俺の手柄になっちまって悪かったな」
冒険者ギルドに行ってくれたリストが、ロイにも道中の盗賊の件を報告する。例の証言を元に盗賊のアジトも騎士団が捜索して、ボスも纏めて捕まったらしい。
「え?こんなに?」
「悪質な盗賊だったらしくてな。最近被害が大きくて助かったって言われたぞ」
渡されたのは大金貨が2枚。日本円だと30万くらいだ。
「半分はリストさんが貰ってください」
「何言ってんだ?ニコが一人で倒したんだろう?俺は何もしてないぞ」
「ニコ、貰っておきなよ。明日ゴードンの所へ行くんだし、資金は多い方がいいでしょ?」
「んー、そっか。ありがとうリストさん」
確かに錬金術師に依頼するなら資金は多い方がいいだろう。黒魔牛の金もあるから結構な金額の金が手元にある。
「じゃあ、乾杯しよう」
「無事王都へたどり着いたことに乾杯」
「乾杯」
リストがオレが飲めると言ったので、ロイが麦酒を買ってきた。この世界の麦酒は樽で売られている。樽で熟成するので日持ちのする飲み物だ。
ジョッキではなくグラスに注がれた麦酒は、日本で父が飲んでいたものより色が濃いように感じた。味は飲んだことがないので比べようがないが。
「どう?麦酒の味は?」
「苦い、けど嫌いじゃない」
「そうそう。それが癖になるんだよな」
リストがゴクゴクとグラスを空けていく。リストは酒に強く、また好きらしい。騎士団には酒好きが結構いるようで、魔法部隊でも定期的に飲み会が開催されているらしい。
料理はいつものビュッフェ形式で、メイドがいないので自分で好きなだけ取る。飲むのでつまみ的なものが多い。
リストが差し入れた黒魔牛のステーキも出てきた。美味しくいただいた。
楽しく食べて飲んで、リストは危なげない足取りで転移で寮に帰っていった。人のことは言えないがザルだ。
ロイは酔っ払ってしまったので、ここに泊まるようだ。明日も早いしね。
オレ?やっぱりシラフだったよ。




