03 辺境の開拓地
ガタン、ゴトン、・・・・・・
整備されていない道を、1台の小型馬車と10の騎馬が進む。
馬車の中は狭く、人二人と半月分の食料で一杯になる程度だ。
しかし食料が殆ど無くなった今は、姿勢を崩して多少楽にすることが出来るようになっていた。
「・・・すまない、ミリー。あなたを巻き込むことになってしまって・・・」
「気にしないで。私は学園後もあなたと一緒に居ることが出来るようになって、むしろ嬉しいくらいよ」
「・・・本当にすまなかった。せっかく仕事先も決まり掛かって居たというのに」
「また探せば良いのよ。忘れていない?平民はね、生きるためなら何処でだって働けるのだから!」
「ミリー・・・」
辺境の開拓地まであと僅か。
ここまでハリスは落ち込み続けていた。
自分の立場を失ってしまったのは自分が悪い、しかしミリーまで巻き込んだのは・・・と。
もっと巧く立ち回っていれば、もっと冷静に周りを見ていれば、もっとしっかりとアレクサンドリアと話していれば、・・・・・・
しかし、出口に見えない迷路に陥る度にミリーはハリスを励ましていた。
ハリスが関わらなければ楽しい学園生活を送ることが出来、今頃は王都の商店で働くことが出来ていたはずなのに。
そんなミリーがハリスを励ましてくる。
辺境の開拓地まであと僅か。
ようやくハリスは前を向くことが出来た。
開拓地での生活は、少なくともハリスにとっては今までの生活とは全く違うものであった。
自分の家は自分で探し、自分のお金は自分で稼ぎ、自分の食事は自分で作る。
平民にとっては当たり前のことでも、王宮、そして主に貴族が通う学園でしか暮らしたことの無いハリスにとっては新鮮であった。
同じくらい、困惑と苦労があった。
しかしミリーは違う。
彼女は平民の生活を知っているのだ。
だからこそ、開拓地に着いた当時はミリーが主導して生活環境を整えていくことになった。
「はぁ、国民の殆どがこういう生活をしているのだな。それを頭の上だけで考えるだけで、全く理解できていなかった」
「あら、ここの開拓地は恵まれた方よ? 流石にできたての開拓地へ送られていたら、私はともかくハリスはとっくの昔に寝込んでいるわよ」
「これより酷いのか・・・、そうか・・・」
「ふふふ、私、平民で良かったわ」
「ああ、うらやましいよ・・・ははは」
時折はさむミリーとの会話は、荒れかけた私の心をいつも癒やしてくれていた。
ここに来てからは彼女に助けられてばかりだった。
せめて彼女が不自由をしない程度には稼がないと。
幸い、私は剣術をそれなりのレベルで修めている。
王宮で、学園で、対人対魔物の訓練はそれなりに行っており、自分で言うのもなんだが良い成績を修めていた。
だからこそ、この開拓地が作られた原因、ダンジョン探索を行うことを当面の目標とした。
そのことをミリーに話したら、彼女もダンジョンに付いていくと言い出して驚いた。
「危険だ、死ぬかもしれない」と説得しても、
「ハリスが守ってくれるのでしょ?なら大丈夫よ。それに私、魔法で簡単な治療なら出来るし、授業レベルだけど護身術の成績も良かったのよ?」
と笑顔で言われては拒否できなかった。
しかしダンジョンに潜るにはしっかりとした準備が必要だ。
そこで私は開拓地周辺の比較的弱い魔物を狩ることで素材と資金を調達し、ミリーは近くの街に日帰りの出稼ぎに行って情報と資金を集めることにした。
魔物と戦う度、不安が胸をよぎる。
無様を晒した私が、本当に戦えるのか、勝てるのか、と。
しかしそのたびにミリーの笑顔が浮かんできて、戦える、きっと勝てる、と励まされる気持ちが湧いてきた。
こうして開拓地に着いてから一月が経ち、ようやくダンジョンに潜る準備が整った。
お読みいただきありがとうございます。
なお、ダンジョン編はありません。
さくっと次に展開します。