01 婚約破棄と追放
婚約破棄&追放で始めて、道中シリアス多め&ざまぁ展開なしでハッピーエンドや大団円は迎えられるのだろうか? という思いから書いていた作品です。その結果こんな出だしにもかかわらず、こんなタイトルになった上『悪役令嬢』タグを躊躇い付けておりません。
ご都合主義が多々出てくることはご了承ください。
各話基本的には短いです。
第1話は胸糞表現が多少ありますのでご注意ください。
第2話以降は極力無いようにしております。残酷な表現が出る場面も極力短くなっております。
本日は2話投稿です。
ガシャン!
「きゃぁっ!」
「あら、ごめんあそばせ。つい手元が狂ってしまったの」
それは学園に通う生徒達の卒業パーティーでの出来事だった。
赤髪の少女が持っていたワインが、茶髪の少女のドレスに掛かったのである。
「まぁ、そんな格好ではこれから始まるダンスには参加出来ませんわね。残念ですわ、あなたが誰と踊るのか楽しみにしておりましたのに」
口元を扇で隠しながら、しかしその表情は雄弁に語っている。
「ここはお前の居る場所では無い」と。
ワインをかけられた少女はしかし、顔を青ざめながら固まっており、
「あ・・・、え、うぅ、あぁぁ・・・」
声にならない声を上げるだけであった。
その様を見て満足したのか、赤髪の少女が付き添いの侍女を引き連れてその場を立ち去ろうとしたその時、
「ミリー!!!」
銀の髪を持つ少年が、青ざめる少女へと駆け寄った。
「アレクサンドリア!何度ミリーへの嫌がらせを行えば気が済むのだ!しかも、この卒業パーティーでまで!!!」
「ハリス殿下、嫌がらせだなんて誤解ですわ。ただ手が滑ってしまっただけですの。そうですわよね、ミリーさん?」
アレクサンドリアと呼ばれた赤髪の少女は、ハリスと呼ばれた少年の言葉をかわしてミリーと呼ばれた茶髪の少女へと視線を向ける。
視線を向けられたミリーは、しかし満足な返事を行うことは出来ずに
「あ、えっと、その・・・」
怯えた姿勢をみせるだけであった。
話にならない、そんな態度を雄弁に見せたアレクサンドリアは、ミリーどころかハリスさえ無視して立ち去ろうとした。
その様子を見たハリスは益々怒りを募らせ、
「アレクサンドリア!例えドロア公爵家の令嬢といえどもこれ以上は看過出来ない!君との婚約は破棄させてもらう!」
「まぁまぁ、ハリス殿下。おっしゃる意味がよく分かりませんわ。そもそも、この程度のことで婚約破棄など出来るとお思いで?」
「出来る、やってみせる!今から父上に掛け合ってこよう!」
煽るアレクサンドリアに怒るハリス。そしてハリスが会場を立ち去ろうとしたまさにその時、
「その必要は無い」
会場奥から、国王陛下の声が聞こえた。
会場中が静まる中、いち早く我に返ったハリスは、
「父上! アレクサンドリアの非道は目に余ります! 是非、婚約の解消を!」
声を荒げて国王に訴えるが、しかし国王は冷静な声で、
「ふむ、コレはこう申しておるが、アレクサンドリア嬢は何か言うことがあるか?」
アレクサンドリアに問いかけた。
それに対してアレクサンドリアは、
「私はドロア公爵家令嬢です。此度の婚約も王家主導でございます。故にただ、陛下の決定に従うのみです」
優雅にカーテシーを行いながら、しっかりした声で答えた。
その返事に対して国王は大きく頷きながら、
「なるほどな。ではこの場にて沙汰を言い渡す」
そして会場を見渡し、少しの間を置いてから発言を続けた。
おそらくはこの場に居た者達が想像した内容と、半分予想通りで半分予想外な内容で。
「第一王子ハリスとドロア公爵家令嬢アレクサンドリアの婚約はこの場で破棄とする。加えてハリスは王籍から除き、辺境の開拓地へ追放とする!」
「なっ!?」
ざわざわざわ・・・
会場中でどよめきが起こる。
婚約破棄はあり得るかもしれない、しかしまさか王籍から除外の上で辺境送りとは・・・
誰もが今聞いた内容を、耳では聞いたけれども頭の理解が追いついていなかった。
「な、何故ですか、父上! 何故私が追放されなければ!」
「当然であろう?」
驚きを隠すこと無く問いただそうとするハリスに対し、王は「そんなことも分からないのか?」という顔を向けた。
その顔を見たハリスは、一瞬だが怯んでしまった。
「分からないのでしたら私が教えて差し上げましょうか?ハリス様」
ハリスが声のした方に振り向くと、そこにはいつも通りの微笑を浮かべたアレクサンドリアが佇んでいた。
彼女は優雅な動きで左手を自分の胸に当て、
「私は史上稀に見るほど強力な聖女の加護を持つ公爵令嬢、あなたは何の加護も実績も持たない王子、どちらが選ばれるかなんて当然の結論ですわ」
加護を持たない、その言葉を聞いたハリスは露骨に顔をゆがませる。
その変化を見たアレクサンドリアは両手を広げ、
「加えて、その程度のことも指摘されなければ理解出来ないような愚か者など、王家にいては余計な禍をもたらすだけです。なれば籍を抜いての追放も、やむなしかと」
見下すような目つきで言い放った。
この態度には流石のハリスも怒りを抑えきることが出来ず、力強く握った拳の震えを止めることは出来なかった。
しかしそんなハリスなど見えないかのように、国王が続いた。
「まぁ、アレクサンドリア嬢の言うとおりだ。と言うかそこまで言われると俺の言う分が残らないのだが?」
「そうお思いでしたら、わざわざ溜めずにさっさとおっしゃるべきでしたわね」
そんな軽口をたたき合う国王と公爵令嬢、それに取り残される王子。
内容だけで無く見た目でも、王子の追放が実感できる場面であった。
事ここに至り、会場中の人々はようやく理解が追いついた。
いや、理解を拒否していた理性を、実感という名の感情が押しつぶしたと言うべきか。
ハリス王子とアレクサンドリア嬢、どちらが国王から重要視されているのか、と言うことが。
「なぜ、何故です、父上!」
「はぁ、未だ理解出来ぬのか。衛兵!ここに居る平民二人を牢へ入れろ!」
「「はっ!」」
そうして会場を警備していた衛兵は、ハリスとミリーを拘束した。
「きゃああぁぁあああ!!!」
「ミリー!? なぜ、ミリーまで!」
「なに、一人で辺境はさみしかろう?」
「だからといって!」
「気にするな。たかが平民二人が辺境に行った所で、この国は何も変わらん」
「・・・! 父上ぇぇええ!!!」
「さっさと連行しろ。他の者の迷惑だ」
「父上えええぇぇぇ・・・」
そうしてハリスとミリーは地下牢へと連行され、
「皆の者、場をわきまえない愚か者のせいで騒がせてしまったな。特別な酒を新たに用意しよう。今宵は目出度い日、皆存分に楽しむが良い」
王の発言により騒ぎは徐々に落ち着いていき、特別な酒が提供され始めてからはその美味しさから会場は最高の盛り上がりとなった。
だからこそ、二人が連行されていった方向をアレクサンドリアがいつまでも気にかけていたことに、誰も気づくことは無かった。
お読みいただきありがとうございます。