初めてのトラブル①
3話目です、読みにくい文章になってしまっていたらすみません。
ーーー 表世界 ---
ここはとある国のとある平原、そこには西洋風の甲冑に着込んだ大軍隊が東西に分かれてにらみ合っていた。この場にいる誰しもが、これから始まるであろう戦いついて考えていた。
この戦いで武功をあげて出世を立てる者。
愛しの家族に会う為に必ず生きて帰ると心に誓う者。
場の雰囲気にのまれており、どうすればよいのか不安にさいなまれている者。
<西軍>
「今こそ先祖から続いた因縁に終止符を撃つ!我が同胞たちよ!今こそ我らの力を見せるときぞ!」
「うぉーーー!!」
<東軍>
「ふん、古き時代の考え方に囚われた愚か者どもめ!奴らのような者がいるからこの世界は未だに戦乱の世の中なのだ、この戦いで戦乱の世を終わらせるのだ!者ども!我に続けーーーーー!!」
「うぉーーー!!」
今、時代の運命を決める戦いの幕が切って落とされた。勝利の女神はどちらに微笑むのか…。
ーーー 裏世界 管理室 ---
「おはようございます、レイナさん」
「おはよう、千野君、今日も時間通りきっちりだね。もう少し遅れてもいいんだよ、特に何もないだろうしね」
「いやー、わかってるつもりなのですが職業病ですかね。前の設備員のサイクルが染みついてるせいか時間通り始めないと気持ち悪く感じちゃって…。」
「私としては、ありがたい限りなんだけど、無理はしないでねー」
「はい、ありがとうございます」
そういってレイナさんいつもと変わらない軽い感じで手を振りながら管理室の隣の神室に戻っていった。
「さて、モニターの様子見たら俺も巡回に行ってくるかな、今日はどこまでいけるかな」
『ル菅』をモニタリングしているモニターを眺めながら一通りの状況を確認していく、表示されているものがまだ理解できていないのだが、画面が青色以外になったら報告してねと言われていた。
ビー、ビー、ビー…。
管理室内に効果音が響き渡る。この現場に来ての初めての問題発生だ…。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせつつ、深呼吸する。以前の職場でも似たようなことはあった。
こういった場合、経験があればそれに基づいて次の行動に移るのだが、何もない場合はまず報告が必要だな。まずはクリスタルでレイナさんに報告して判断を仰ごう。
「もし…。」
「どうやら久々にトラブルが起きたようだね」
「え…」
「…あ」
クリスタルでレイナさんに報告するより先に、レイナさんが管理室の扉を開けて登場していた。お互いに視線がある。
そして、その状況をいち早く察知したのであろうレイナさんがバツの悪そうな顔になってしまった。ちょっと気まずい空気がその場を支配した…。
「す、すまない…」
「いえ、次は待って頂けると、ありがたいです…」
気を取り直して今回のトラブル対応に意識を向ける。
「この音が鳴った場合はどのようなトラブルなのでしょうか」
「うむ、この場合はそこまで緊急性が高いわけではないが、今後ひどくなる可能性がある場合になる警鐘ね。音だけで具体的なトラブル内容を把握するのは難しいわ。まあ魔水に関連したものという事には違いないけど」
ふむふむ、メモしておこう…と思ったがメモ用紙とかどうすればいいんだろうか。
「あの…メモとペンが欲しいのですが…」
「え…?なにそれ…」
「え……、どうやって勉強すれば…」
「勉強…? 聞いた内容なんて全部暗記すればいいんじゃないの?」
「え…」/「え?」
まさかこんなところで神と人のギャップを感じることになるとは…。これも今後の対応事案として覚えておこう。
「…とりあえず、続きをお願いします」
「そうね、とりあえずモニターには『caution』と表示されるから、その部分をタップすると発生した場所のマップが表示されるわ」
「なるほど」
「その後、今起きている状況と合わせて対処を判断し、行動を起こすというのが基本的な流れね。今回は勉強の意味も込めて、直接現場に向かいましょう。ちなみに場所はどこかしら」
「モニターには『A-1-05』と表示されています」
「そう、それじゃゲートルームに行きましょう」
レイナさんと俺は、管理室を出てすぐそこにあるゲートルームへと移動した。裏世界は相当広く、また張り巡らされた『ル菅』の数も膨大な為、裏世界には中央の管理室から各ポイントごとに設置されたゲートを通じて近くまで飛ぶことが出来る。
実際、調律神であればそういったゲートを使わなくても移動可能らしいのだが、今の自分にはそういった能力はない。いずれ出来るようになれるといいんだけど、できるかどうか不安だ…。
ゲートルーム内に入るとそこには、天井は高く中央にはどこからか光がさして中央に描かれた魔法陣を照らしていた。魔法陣の前には、大きな水晶が設置されている。
「ここがゲートルームだ、先ほど確認した場所の情報を入力してくれ」
「わかりました」
私が恐る恐る水晶に触れると、急に水晶が光り始める。それに伴い、私の周りにも光が詰まってくる。
「暖かい…」
「それが、魔水を基に紡がれる魔力の力、魔法さ」
「これが、魔法ですか…」
「ああ、それが感じれるという事は、問題なく君にも魔法の素質はあると見れる」
「認証完了、これよりゲート起動プロセスに移ります、移動先にポイント座標を入力してください」
「あ…、ポイント『A-1-05』です」
「座標入力確認、座標ポイント確認完了、『A-01』のゲートポイントとの接続を開始シマス」
入力が完了すると水晶から発せられる音声とともに魔法陣がさらに光り輝きだした。光がはけるとそこ大きな扉が出現していた。こういうのを見ると自分は異世界に来ているんだと改めて感じる。
「それじゃ、問題が起きている個所に行きましょう」
レイナさんに続くように、俺はゲートの中に入った。
ーーー 表世界 ---
「はぁ、はぁ、はぁ」
息も絶え絶えに、旗を掲げた一人の兵士が、作戦本部のある天幕に駆け込む。
「ご報告します! 我が軍の右翼が突如現れた敵の別動隊の攻撃により現在苦戦中!本部より援軍を回して頂けないかとの知らせが届いております」
バン!
「なんだと!? 斥候隊は何をしていた!」
報告を聞き終えると同時に豪華な鎧を身に纏った大柄の男が中央にある机を殴打した。それを見ていた隣の騎士が前に出る。
「あわてるな、まだ勝負はついたわけではない。右翼に敵の別動隊が出現したとて、それですぐ壊滅するわけではなかろう。 しかし、このままやられているわけにもいくまい、少し早いがあれを投入しろ」
「あれを出されるのですか!? 今のままではこちらにも被害が出てしまいます! もう少し戦況が動いてからの方が良いかと」
「うるさい! もう決めた事だ! こんなところで出し惜しみしてられるか!」
「陛下のおっしゃる通りでございます、このような弱腰の意見をお耳に入れる必要もございません」
「ふふふ、お前はわかるやつだな、やはり私の事を一番理解しているのはお主のようだな。それに比べて貴様という奴は…」
騎士はその言葉を黙々と聞いていた。
「けっしてそのようなことでは…」
「もうよい!貴様はこの場にふさわしくないようだ、指示があるまで自分の隊で待機しておけ!」
「…わかりました。失礼致します」
陛下と呼ばれる男は、意見具申してきた騎士を下がらせた。下がった騎士は内に黒い感情と悔しさを噛みしめながらその場を後にした。
「チッ、何もわかっていない凡人どもが…。今に見ていろ!」
ーーー 裏世界 ゲートポイントA-01 ---
ほんの数秒だろうか、扉の中に入って少ししてまた同じような場所に出た。はじめはそんなことはなかったが門から出たら少し頭がくらくらする…。
「到着だ、気分は大丈夫か?」
「…いえ、だい…じょうぶではないですね。うっぷ」
俺はとっさに口を手で押えて、胃に入れたものが逆流しないように努める。
「多分、なれない魔水に多くにあてられたせいだろう、何回か経験すれば時期に体が慣れると思う」
「レイナさんもそんな経験があるのですか?」
「私はない、管理している側の神が『魔水』にあてられてたらシャレにもならないし」
「…それもそうですね」
少し休んだことで気分も回復した。レイナさんも問題ないと判断したところでゲートルームの入口に向かう。
正直まだ何も始まってないのにこの状況、本当に俺みたいな元設備員が世界の管理の仕事ができるのか不安になるが、まだ何もできてないわけだし、どこまでやれるか頑張ってみよう。
ーーー ゲートルーム「A-01」前 ---
ゲートルームから外に出ると、そこには管理室付近よりも複雑な『ル菅』が張り巡らされており、そこからさらに先へと続いていた左右を見渡すと同じような通路が続いており、ここから先に行くのにちょっと二の足を踏んでしまう。
「安心しろ、初めから一人で行かせるようなことはしない、それに行ってもらうときには案内役をつけるからそうそう迷うことはない、それに困ったらすぐに私に連絡するといい」
「確かに…」
自分はその言葉を聞きながら胸に輝いているクリスタルを見る。動揺していたせいかレイナさんから受け取っていたクリスタルの事が頭から抜けていた。冷静でいればすぐに気づけたことを…。自分の不安を振り払うかのように首を振り前を向きなおす。
調律神であるレイナさんには、すでにトラブルが起きている場所が分かっているようで、スイスイと入り組んだ通路を進んでいく。まさか先端に行くほどこんなに複雑になっているとは思わなかった…。空間というか雰囲気は神秘的なのだが、それが永遠に続いている迷路や森のように感じてしまう。
「ここだわ」
しばらくするとレイナさんは立ち止まり上を見上げる、それにつられて自分も上を見上げる。そこには横に伸びていた『ル菅』が上に伸びているのが分かる。そしてその管の一部のエリアが、オレンジ色の光を一定の間隔で発せられ明滅していた。自分はその場所を指さしながらレイナさんに確認していく。
「あのオレンジ色に光っているのがトラブルの場所なのですか?」
「ええ、そうよ。この位置でこの発光量だとたぶん…」
そういってレイナさんが目を閉じて眉間に人差し指を当てながら思案してるポーズを始めていた。その姿を自分はかたずをのんで見守った。
「あの時と同じ感じだから、表世界で大規模な戦争でもやってる可能性が高いわね」
「せ、戦争ですか!?」
レイナさんの発言に戸惑ってしまい、すぐに聞き返してしまった…。それを聞いたレイナさんが説明してくれる。
「初めに話したこの世界の仕組みについては覚えてる?」
「えぇ、表世界・裏世界に『魔水』が『ル菅』を経由して流れている。表世界で使われた魔水が『ル菅』を通って裏世界に戻ってきてるってことですよね……は!?」
「そう、ここは表世界から使用された『魔水』が裏世界に戻ってくるポイントの一つなの、という事は…」
「今回の警鐘は『魔水』関連のモノだから戻ってくる『魔水』のトラブルってことですね!」
「その通りよ、とりあえず直し方もやりながらレクチャーするから、上に上がりましょうか」
「上に…? うわっ!?」
レイナさんの合図で立っていた床が光だし、上に上昇し始めた。なんて便利な機能だと思いながら登っていく状況を見守っているとレイナさんが続きを話してくれた。
「ちなみに、戻りの魔水のトラブルで多いのは国同士の戦争の際に『スキル』や『魔法』などを瞬間的に大量に使用されると一気に『使用済み魔水』が流れ込んで『ル菅』を圧迫、一定量を越えてくると今回みたいな警鐘がなるの。それが長く続くとその個所の『ル菅』が破損したり詰まって流れなくなる恐れがあるわね」
「は、破損しちゃったらどうなるのですか?」
「んー規模にもよるけれど『使用済み魔水』が溜まるとその周辺の生物がすめない土地になって行ったり、『使用済み魔水』で成長する凶暴な魔物とかが繁殖して生物がすみにくい土地になるかしら。そんな風になったことがないからあくまで想像の範囲を越えない感じね」
「は、はは、生物がすめない土地ですか…責任重大ですね」
「そういわれても戻ってくる『魔水』の量は表世界側の問題だからこちらでは調整できないわね、私たちができるのは一時的な対処と裏世界から表世界に警告することぐらいしかできないのが現状かしら…」
「なるほど、やれる事をやるしかないという事ですか…」
「そうゆうこと、さあ片づけましょうか」
「はい」
頑張って書いていきます。楽しんで頂けたら幸いです。