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お気に入り小説1

男爵令嬢だって皇太子殿下と結婚したくはない。

作者: ユミヨシ

メリーナ・アレクトス男爵令嬢は、ご機嫌だった。

今日は王立学園の卒業式、やっとこの地獄の学園から卒業できるのだ。


「長かったわ…」


高位貴族が多いこの学園で、男爵令嬢であるメリーナは虐めの対象だった。

特に、公爵令嬢シェリーヌ・レストリッチは、他の令嬢達と共に下位貴族の令嬢達を虐めまくったのである。


卒業式が終わり、その後の卒業パーティで友の男爵令嬢達と共に、卒業を祝う。

皆、涙して。


「辛い学園生活だったわね。」

「本当に、私達、良く耐えたわ。」

「ちょっと気に入らない事があれば、シェリーヌ様から扇が投げつけられたり、

罵声を浴びせられたり。」

「うんうん。でも、もう私達、自由なのね。」


メリーナが男爵令嬢達と涙を流しながら、卒業を祝っている時、

事件は起こった。


「私、リューク皇太子は、シェリーヌ・レストリッチ公爵令嬢と婚約破棄をし、

メリーナ・アレクトス男爵令嬢と婚約を改めて結ぶこととする。」


「?????????」


メリーナは自分の名前がとんでもない方の口から出たので、持っていたジュースのグラスを落としそうになった。


どうしてこうなった???


シェリーヌが口を歪めて、メリーナを凄い目つきで睨みつける。


リューク皇太子はメリーナに手を差し出して、


「これは命令である。勿論、受けてくれるのだろうな。」


「いえっ…その…皇太子殿下。まずは皇帝陛下は、そしてうちの両親は知っているのですか?」


「知らぬな。これから報告をする。」


「それって非常にまずいのでは?私、皇太子殿下と一度もお話をした事がないです。

今、初めて会話をしました。」


「それが何か問題でも?」


うわっ…凄いマズイ事になった。

周りの卒業生達も驚きの表情で見ているんですけど。


シェリーヌが怒りまくって、


「リューク様。我が公爵家から皇帝陛下に苦情を入れさせて頂きますわ。

わたくしこそ、未来の皇妃にふさわしいはずです。この婚約破棄認めませんから。」


メリーナは泣きたくなった。


友である男爵令嬢達に縋りついて、涙を流す。


「どうしてこうなったのかしら。私っ…私っ。」


皆、口々に慰めてくれた。


「何かの間違いだと思うわ。」

「そうよ、メリーナ。誤解は解けるはずだから。」

「頑張って生きるのよ。」


誤解でも六回でも何でも解けて欲しい。

リューク皇太子殿下をチラリと見れば、ニンマリ笑っている。

あああああ…私はどうなってしまうのかしら…




屋敷に帰って両親に報告すれば、両親揃って、驚いて。


父であるアレクトス男爵は青くなり、


「何もやらかした覚えはないぞっ。」


母であるアレクトス男爵夫人も慌てたように、


「わたくしもですわ。それはもう社交界ではおとなしくおとなしく。

皇帝陛下とも皇妃様ともお話すらしたことはないのに。」


二人ともオロオロしている。


すると、リンゴーンとベルが鳴って、召使いが知らせて来た。


「リューク皇太子殿下がお見えです。」


「「「えええええええええええっーーーー???」」」


皇太子殿下が直々に???


3人が迎え入れてみれば、リューク皇太子殿下が、護衛の騎士2人と共に、部屋に入って来て、開口一番に、


「先程は申し訳なかった。さぞ驚いたであろう。」


メリーナはやっとの思いで、


「それはもう驚きました。間違いですよね?私、皇妃などなれませんっ。」


アレクトス男爵も真っ青な顔をして、


「そうです。うちは弱小貴族です。レストリッチ公爵家に睨まれてしまったら、潰れてしまいます。」



リューク皇太子はメリーナの手を取り、


「私は君こそ未来の皇妃にふさわしいと思っている。」


「何故っ???私、それ程、勉学も出来ませんよ。」


「それでもだ。私はレストリッチ公爵家を始め、現公爵家が権力を振るい、思うがままにしている事が許せないのだ。だから、私の代になったら、家柄ではなく、新興貴族から人材を重用しようと思っていてね。」


「って、それなら私でなくても良かったのでは?」


「誰にしようかな…って指でなぞっていたら、君の名で指がとまったのだ。」


「はい?とんだ迷惑っ。いえ、何でもありません。」


「どうか、私と結婚をし、皇妃になって欲しい。」


「お断りします。」


「皇太子命令だぞ。」


アレクトス男爵も必死に、


「我が男爵家を潰さないで下さいっ。高位貴族に睨まれたら潰れてしまいます。」


アレクトス男爵夫人も、


「貴方様は気まぐれかもしれませんが、うちの娘は、皇妃になれる器ではございません。

ですから、どうか勘弁して下さいませんか。」


メリーナはリューク皇太子の背を押して、


「ともかくお帰りを。」


と、強引に部屋の外へ押し出した。


リューク皇太子が出て行った後、3人はこれからどうしたらよいか相談したのだ。


男爵家全体に協力を仰ぎ、男爵家から皇妃を望まないように、皇帝陛下に直訴しよう。


そうすれば、リューク皇太子の気まぐれの被害者は出なくてすむのだ。


そうと決まったら、と…両親はさっそく男爵家を回ると言い出した。

勿論、メリーナも友達のいる男爵家を回る事にした。


そして、男爵家20家を苦労して集めて、直々に皇帝陛下に直訴したのである。


「私達の娘から、皇太子殿下の妃を選ばないで下さい。」

「公爵家から睨まれたら潰れてしまいます。」

「だいたい、皇妃教育を公爵令嬢はやられているのでしょう?我が娘達が今からやっても遅いのでは?」

「外国から馬鹿にされます。馬鹿な皇妃だと。ですから、どうか…」


皇帝陛下は男爵達の直訴に眉を寄せて、


「我が息子が馬鹿な事をした。解った。男爵家から皇太子の妃を選ぶ事はない。安心してくれ。」


「有難うございますっ。」

「助かりますっ。」


皆、口々に礼を言う。


こうして、今回の騒動、男爵令嬢が卒業パーティで、いきなり皇太子殿下の婚約者指名される事件は終わったはずであったが…まさかまだ波乱があるとはメリーナは思いもしなかった。





学園を卒業すれば、社交界デビューである。

メリーナは学園で友であった他の男爵令嬢達と共に、美しいドレスに身を包み、

王宮の夜会で社交界デビューをした。


まだ婚約者のいないメリーナは、胸を高鳴らせながら、


ここで、素敵な方と出会って、結婚するのだわ。なんてロマンティック。


と思っていたのだが、


そこへ、シェリーヌ・レストリッチ公爵令嬢が他の公爵令嬢達と豪華なドレス姿で現れて、


「あら、臭いと思ったら、どこぞの泥棒猫じゃないの。嫌ねぇ。」


と思いっきり嫌味を言う。


他の公爵令嬢達も、


「本当に、男爵家の泥棒猫とその仲間達は本当にみすぼらしい事。」

「本当に…安い生地の、それドレスって言えるのかしら。」

「あら、ドレスじゃないわ。それはぼろ布よ。オホホホホ。」


メリーナを始め、男爵令嬢達は真っ青になる。


なんて社交界って怖い所だ。

学園と同じではないか?高位貴族の令嬢達が威張り散らして、自分たちは小さくなっていなくてはならない。


そこへ、リューク皇太子がさっそうと現れて、


「これは、メリーナ・アレクトス男爵令嬢。一曲如何かな。」


とメリーナに向かって手を差し伸べて来た。


凄い目でシェリーヌが、メリーナを睨みつける。


マズイ…これはもう、マズイ。

ここでさらにシェリーヌを怒らせたら…

そもそも、皇帝陛下は納得してくれたはずだ。男爵家から皇太子殿下の妃は取らないと。

どうして、自分に執着する?このリューク皇太子。


メリーナはリューク皇太子を見上げて、


「お断りします。皇帝陛下も約束して下さいました。男爵家から皇太子殿下の妃は取らないと。ですから、私は貴方様とダンスを踊る事は金輪際、ございません。

皇太子殿下のお相手はシェリーヌ様でしょう?二度と、私に、いえ、男爵令嬢達に構わないで下さいませ。どうかお願いです。」


リューク皇太子は、メリーナに向かって、


「私は高位貴族の令嬢は、威張っていて大嫌いなんだ。」


そして、冷めた目でシェリーヌを見て、


「特にシェリーヌ。君は下位貴族の令嬢達を虐めまくっていたな。そこの取り巻き達と。

私は間違っても君をこの帝国の皇妃にしたいと思わない。だってそうだろう?

人を思いやる気持ち、それは上に立つ者にとって大事な事だ。それを君やその取り巻き達は

ないがしろにした。許さない。皇太子リュークの名において。

シェリーヌ・レストリッチ。お前と婚約破棄をする。」


シェリーヌは悔し気に顔を歪めた。


そして、リューク皇太子はメリーナに改めて向かって謝る。


「迷惑をかけてすまなかった。君なら、人を思いやる優しい皇妃になると思っていたのだ。だが、君を妃に望むのは、君や君の家に迷惑をかける行為だったね。本当に申し訳なかった。」


「解って下さればよいのです。こちらこそ、不敬な事を言って申し訳ございませんでした。」



何故だろう。何だか胸がドキッとした。

リューク皇太子となんて結婚したくはないのに。

その気持ちに変わりはないのに…


何故、胸がドキっとしたのだろう。


首を振ってメリーナはその気持ちを忘れる事にした。


リューク皇太子はメリーナに手を差し伸べる。


「せめて一曲、ダンスを踊ってくれないか?」


「ええ…喜んで。」






何とも複雑な二人の想いを乗せて…


二人は王宮の中央でダンスを踊る。


さまざまな障害の中、この恋は花開くのか??


二人は結ばれる事はあるのか?






それは、神のみぞ知る…




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