21~23日目
21日目
店の裏側に、小さな花園を作った。害獣除けに柵で囲ってある。距離をある程度開けて、等間隔に巣箱を設置し、それを囲むように花の種を植える。
巣箱はそれぞれ冬眠カプセルに包まれていて、その中で蜜蜂の女王が卵を抱えて眠っている。
花が咲かないと女王とその子供たちは餓死するので、まだしばらく眠ってもらうことになるだろう。
愛着を持って育てた方が美しく育つという話を思い出したので、女王にそれぞれ名前をつけることにした。
白い花に囲まれた巣箱の女王はしらゆき姫。
薄い紫色の花に囲まれた巣箱の女王は灰かぶり姫。
赤みがかった桃色の花に囲まれた巣箱の女王はいばら姫。
有名な三大プリンセスから拝借した。女王だけど姫である。
一仕事終えると、達成感で充たされた。
そこで兄の仲間たちからもらった種のことを思い出した。よくわからないので、そこらへんの土を耕して撒いておく。
22日目
茨を刈って、花に水やりをする。茨は数日前に刈ったばかりだけれど、成長が早いようですぐに小屋を飲み込もうとしてくる。
井戸があるおかげで水が手に入りやすいので助かった。朝に大がめいっぱいに汲んでおけば、こまめに使えて便利だ。そんかわり結構な重労働でもある。
疲れをいやすために、ステルスで門に出向く。
シードルがいた。
しかも私にむけて手をふってくれている。
歓喜のあまり、ダッシュしてしまった私は、すぐ近くに化け物が迫ってきたことに気づけず、彼に思い切り突き飛ばされた。
かぎづめが脇腹をかすって、一瞬で星殻の装甲がはがれ、ライフを半分もってかれた。
血だるまで地面を転がってぽかんとする私の前で、シードルを含む門番たちと化け物の戦闘がはじまる。
戦闘後、私は詰め所で傷の手当てを受けていた。
シードル直々に薬をぬって包帯を巻かれるなんてなんて僥倖。
嬉しくてにやけてたら、きつめに包帯をしめられた。
ひどい。でも嬉しい。
手当の後、今度から気をつけるようにと厳重注意を受けた。
門の中には危険な化け物がいて、たまに門の外に出てきてしまうことがあるらしい。街にまで被害が及ばないように門があり、門番たちがいるのだそうだ。
そこへザカルドさんが来て、私の包帯姿を見てぎょっとしている。ドリーマーが持ってる薬があればすぐに治るだろうと指摘され、危うく舌打ちがでそうになった。
ちっ。知られてたか。
そう、ドリーマーは専用の薬ボトルがあり、飲むか傷口にかけると、ライフが回復してついでに傷もきれいにふさがる。
あっ、シードルのこめかに血管が浮き上がってる。激怒されるかなあ、とちょっとわくわくしてしまったら、顔にでちゃったみたい。
しこたま叱られた。
それでも顔から出る喜びは隠せず、最後は門へ近寄るの禁止令を言い渡され、めちゃくちゃ謝りました。ひーん。
23日目
そろそろ錬金スキルをあげるべきかな。
兄に錬金釜とセットで買わされた入門書をとりだす。
兄がいうには、スキルの熟練度をあげるにはきちんと専門書を読んだり、師に従事して知識を得ないと、うまく上がらないらしい。
初心者向けの本なので、1時間ほどで読み終えた。
さて、錬金窯を初めて使用する。
まず精神集中しながら、ライフを消費して窯を起動させる。起動すると、側面に刻まれた溝のような文様が光が流れる。途中で流し方が悪かったり、精神集中が途切れるとやり直し。
窯内の回路にライフが流し終えたら、材料を入れる。
ライフを流し込みながら、窯の中身を棒で混ぜる。
ここがものすごく集中力がいる。物質の形を溶解させ、新たな物質を生み出す途中の作業となるらしく、ライフの流し込み量が多すぎたら爆発する。少なすぎても変な物質になって失敗。
以上。これが非常に繊細な作業で、そしてとても疲れる。
はっきり言って店で出来合いの商品を買う方がコスパがいいとさえいえる。
けれど、蜂蜜製品を生み出すためには、錬金スキルもあげないといけない。
コツコツ頑張ろう。