96~98日目
96日目
目が覚めたらシードルに膝枕されていた。
これからは星殻に変身してから外に出るようにと叱られました。
気をつけます。
おとなしく部屋の掃除をして過ごした。
兄が外の店から巣箱や錬金釜などを運んできてくれた。
さらに新しい花の種をくれた。
いばらの娘がいたので、その子のために新しい巣箱を用意して花を植えた。
灰かぶりの事は悲しいけれど、こうして新しい家族が増えるのは喜ばしいことだ。
帰ってきたシードルにおかえりなさい、ただいまのやりとり。
普通に受け答えしてから、ふとよく考えてみた。
なんだろうねえ、この絵にかいた桃色空間は。
シードルからびんびん感じる私への好意。軟禁もされてるわけでなく、私たちはみんなに祝福されて一緒に暮らしている。
シードルのなかで私の立ち位置が妹なのか、母なのか、なんなのかはもうどうでもいいや。
とにかく私はサイコーに幸せだ!!
浮かれていたら夕飯の後にシードルから爆弾を落とされた。
□音声ログ□
「ほんと大げさな奴だなあ。お前は」
「だっでぇ。うれじぃんですもんんん」
「さて。だいぶ落ち着いてきたし、ひとつはっきりしておきたいことがあるんだよ。まあ、座れ」
「??」
「なあ、アッシュってやつのこと話せよ」
97日目
アッシュの話をしろ、といったシードルはそれはそれは素敵な笑顔をしていた。
そういえば、アッシュのことはちゃんと話したことはなかったかと思い、その笑顔に騙されて、推しだったライオンのことをべらべら語った。
どれだけそのライオンを愛しているか情熱的に語ったら、静かに殺気を放たれていることに、間抜けな私はようやく気づいて、冷や汗だらだらかくはめになった。
思い出しただけで背筋に寒気が走る。
うん、ちびりかけたよ。
洗いざらい全部、アッシュとの出会いから別れまでを事細かに語りつくされました。
私はアッシュの転生説をおしたいけれど、シードルからすれば、知らない他人だもんね。人じゃないけど。
そして問い詰められました。俺とアッシュどっちが好きなのかって。
デリケートな質問だから、うやむやにしてほしいなあ、とそれとなく口にしてみたけど、冷ややかな怒りを放つシードルの眼光に口を閉ざす。
……まあ、ね。
アッシュは私のすべてだったけど、亡くなっちゃったもん。
今、私の頭を100%占めてるのはシードルですよ。これは嘘じゃない。
この3か月間、シードルと知り合って、いろんな顔を見せてもらって、どっちが好きって聞かれたら、そりゃシードル一択だ。
それはきっぱりはっきりと言い切った。
シードルは満足そうに頷いてくれた。これで話しは終わったとほっとした私は大馬鹿野郎だった。
シードルに、推しグッズの処分を言い渡された。
愛が試されている!!
□音声ログ□
「できるよな? 俺は心が狭いんだ。そんな死んじまった獣のグッズをいつまでも持ってるなんて許せるわけねえだろ?」
「えっとぉ……」
「返事は当然YESだよな?」
98日目
レインさんと常連さんが連れだって来店してくれた。
ふわふわパンにフルーツと生クリームをそえたプレートを出すと、目をキラキラさせてて可愛かった。それを見つめる常連さんの顔もやにさがってたので、これから看板商品になりそうだ。
午後になると、今度はザカルドさんが来てくれた。
どうだい新生活は、と聞かれたので近況を話した。
朝起きてから寝るまで、シードルに報告して、帰ったら、なにしてたか報告して、外出はシードルと一緒のときだけ。
束縛激しすぎだな、と苦笑いのザカルドさん。
いや、ほんとこんなに執着されるなんて私も思わなかったです。
にやける私を見て、幸せそうで安心した、と苦笑いされる。
その後急に真顔になって、弟が嫌になったらいってくれ、全力で止めるから、と言われて、良いお兄さんだなあと思ったのでした。




