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3~5日目

3日目

 兄はスパルタだ。


 ドードーに乗っての移動中、休憩は2度ほど。30分くらい。


 途中、集落っぽいものを見つけたけれどスルー。


 夜になっても同じペースで、ひたすら砂と岩だけの味気ない景色を進んでいく。


 寝ないとしんどいし、デスペナがつくんだけど、スタミナドリンクで無理やり回復してひたすら走り続けている。


 兄はこれでも遅いくらいだと言ってのける。私を乗せているドードーの足が遅いせいですね、わかりますよ。


 途中、原生生物に襲われたけど、兄は華麗に避けて、進路を変えようともしない。問題は私だ。


 迫ってくる原住生物に、私のパニックが伝わったのか、臆病な気性ゆえか、ドードーは羽根をバタバタして無駄に蛇行するもんだから振り落とされないようにするので必死だ。


 犬たちが原住生物を威嚇したり、囮になってくれている隙に兄を追いかける。ありがとう、犬たち。


 お礼になでてあげたら手を噛まれた。げせん。

 

□音声ログ□

「今んとこ、これで半分か。ちっ、やっぱ思ったほど進めてねえな」

「お兄ちゃん……」

「おお、どーした」

「私、休憩したいんだけど!」

「してるだろーが。今」

「短すぎだよ! ご飯食べて、ぼーっとしてたらすぐ終わっちゃうじゃん!」

「あのなあ……」

「ゆっくりしたいよ! お尻痛い! 疲れた!」

「よし、わかった。時間があると人間無駄なことを考えるよな。いくぞ」

「へ? え? お兄ちゃん? お兄ちゃん!? やだ、おいてかないでええ」




4日目

 兄が鬼畜すぎる。


 昨日、あまりのハイペースな移動に抗議をしたら、休憩時間を15分に減らされた。


 そして本日はいつも以上の災難続きであった。


 原生生物の群れに襲われるのである。ひっきりなしに。景色に緑がちらほら見えだして、牧歌的な雰囲気なのだけれど、ゆっくり楽しむこともできない。


 苦も無く回避している兄が憎らしい。


 苦情をいうと、犬たちがちゃんと守ってくれているだろうと言われる。


 その通りだ。ぐうの音もでない。むしろ、ちゃんと犬に礼をいえ、と犬たちの前に正座させられた。


 犬たちに頭をさげると、つんとマズルをそっぽむけてすましている。感謝はしている。でも可愛げがない。この犬たちは兄には非常に従順なのだけれど、私が気安く近づこうものなら唸るのである。兄いわく、そこが可愛いらしい。気品があるとかないとか。




5日目

 <螺鈿庭園>に到着したのは、真夜中だった。


 宿屋で熟睡していたら、兄の犬たちによって毛布をはがされ、寝床から床に引きずり落された。


 吼えてせかしてくる。犬たちの監視のもと、急いで身支度を整えて、階下に降りると、兄は知らない人たちとテーブルを囲んで談笑していた。


 私を見て一言「おそい」。もう昼の時間のようだ。


 一緒にいる人たちは兄のチームメンバーらしい。


 全員男だ。むさくるしいチームだこと。


 兄に妹だと紹介されると、オーバーなほど、「こんなかわいい妹がいたのか」と驚かれている。ちょっといい気分。


 兄は私より犬たちのほうがかわいいと抜かしている。


 仲間の前じゃなかったら、ぶん殴ってたわ。


 ともかく今は朝食だ。もそもそと食事を終えたら、出発するぞと全員が立ち上がる。


 なんだろ、とぼさっとしてたら、憧れの君に会うんだろ、とあきれられた。


 この街から半日歩いた森の中にある迷宮を封じる門。


 そこに憧れの君がいるのか。


 皆ついてきてくれるらしい。というか私の光では森を通ると即死らしい。


 どこかふわふわした気持ちで門があるという森の中へ。


 茨だらけで樹木が密集しているせいで、夜でも薄暗い。


 おばけでそう。オオカミがでた。悲鳴をあげる私のまえで、連係プレイであっというまに兄たちがオオカミを倒してくれた。ありがとうございます。


 門は突然見えてきた。


 両側に2人、リヤン族が立っている。黒い鬣のほうに目が釘づけになる。


 どぐん、と心臓が跳ねた。


 気づいたら、自然に走り出しており、彼の前にたつと、「生きててくれてありがとうございます」と大号泣していた。




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