表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/35

66~68日目

66日目

 団長さんからの依頼品をもって門へ行くと、シードルが顔に青あざを作っていた。


 何か言う前に、腕をつかまれてどこかへ連れていかれそうになる。


 なんだなんだ。


 腕越しに感じるシードルの温度や触感が有頂天に嬉しくて鼻息が荒くなりそうだけど、ひとまず落ち着いてほしい。いきなりどしたのだろう。


 門から遠ざかっていきそうだったので、早口で届け物のことを伝える。シードルは適当に同僚を捕まえて依頼品を押しつけてしまった。


 いいのかなあ。


 拘束されたまま街へ到着した。


 とうとつに、買い物すると言い出した。ようやく腕を離される。つかまれた腕はうっすらあざになっている。シードルもそれに気づく。耳を伏せてすまん、と謝られた。ぐうかわ。可愛すぎて目が開けてられなくなるわ。


 仕事はいいのかと確認すると休みになったらしい。嘘ですよね、思いっきり鎧姿じゃないですか。


 買い出ししたばかりだからそんな困ってないんだけど、至高の存在である推しからのお誘い。貧民の私ごときが断ることなどできるわけがない。


 でも何買おう。


 シードルの好きな店とかわかんないなあ。きょろきょろしてたら、舌打ちして、「俺じゃあ不満かよ」と機嫌が悪くなりだす。


 焦る私。


 この前ザカルドさんに連れていった店に行こうとしたら、なぜか機嫌が悪化した。


 なぜなの。もうわけがわからない。


 不機嫌な顔ももちろんカッコいいんだけど、機嫌はなおしてくれるとうれしい。


 しかたなく適当に、いつも覗いてる店をまわることにした。


 油とか料理にも使えるしあっても困らない。


 びくびくとシードルの顔色をうかがいながら商品を選んでたんだけど、途中から買い出しに夢中になっていく。またたくさん買ってしまった。


 シードルの機嫌もいつのまにか平素になっていた。店まで送り届けてくれて、今度は買い出しの時は俺を呼べと言って去っていった。

 


□音声ログ□

「ほしいもんは全部買えたか?」

「うん。ありがとうございます」

「困ってんなら、次から俺頼れ」

「いや。そんな。恐れ多いです」

「ああ? つべこべ言わずに次買い出しの時は言えっ。言いな」

「ひいっ。はい、喜んで!!」




67日目

 ザカルドさんがお店に来た。


 目に青あざを作っててぎょっとしてしまった。ちょうど昨夜のシードルと反対側の目だ。


 どうもこの青あざができた原因は、私に関係ある話らしい。


 事情説明を受けた。


 数日前、私とザカルドさんが街で買い物をしているところを、ザカルドさんに恋慕していた令嬢が目撃した。親し気な様子に激怒した令嬢は、ごろつきを雇って私を排除しようとした。


 この前店に来てくれたお客さんも、その令嬢のところの使用人たちだったようだ。人がいなければ、店に難癖つけて立ち退きみたいなこともするつもりだったらしい。


 ごろつきたちは、ずっと私がひとりになる瞬間を狙っていたようだが、尾行に気づいた団長さんが、捕まえて尋問した。


 ごろつきからザカルドさんを慕う令嬢の名前がでてきて、その令嬢を事情聴取。どうも令嬢はごろつきに、私を半殺しにしてもいいと命じていたようだ。


 事情を知ったシードルが激怒してチンピラを殴り殺そうとしたので、それをザカルドさんがとめて、殴り殴られたと。


 最後は二人とも団長さんに投げ飛ばされたらしい。


 強いな団長さん。


 でもそれで合点がいった。


 そっかあ、昨日シードルが買い物付き合ってくれたのは、私のことを心配してくれたんだなあ。


 ザカルドさんにも迷惑をかけたと謝罪すると、「兄弟げんかできてたのしかったよ」と笑ってた。


 ふぁ? 兄弟げんか?



□音声ログ□

「お兄さま?」

「悪い気はしないけど、僕のことはふつうに今まで通りに呼んでほしいな」

「おにいさま……しーどるの、おにいさま……」

「おーい。リナリィ? 聞いてるかい?」

「ああ。シードルのお兄さまだ……!」

「あー……はは、拝むのやめて。ね? 膝つかなくていいから。はい、落ち着いて? 深呼吸しようか?」




68日目

 ザカルドさんはシードルのお兄さんだったらしい。


 いわれてみれば鼻筋が似ているようにみえてきた。


 シードルのこと、これからもよろしくと言われた。家族公認で崇拝することをお許しいただけた。はい、全力で今後も愛でていきますので。


 あらたな気持ちで朝のルーティンをこなす。


 今日こそは新しい錬金アイテムを合成してみせる。いろいろあって、集中力がとぎてまくり、失敗作ばかりたまっていっている。ざっと壺3つ分。


 挑戦するレシピの名は<ふわふわパン>。これはなんと蜂蜜を材料にするのだ。


 ほかは、パンの材料まったく入ってないんだけど、はたしてそれはパンなんか。そのことが気になって失敗を繰り返してきた。


 今日こそは成功させるぞ。


 頑張ること数時間。


 完成。


 真っ黒だけど、触るとふわふわだ。


 試食したら、香ばしい小麦の味がした。でも蜂蜜の味はなし。不思議。噛みしめて飲み込む瞬間、材料に使った白雪の花の香りが、ほんのりと鼻腔を抜けてく気がした。


 時間がたってもおなか痛くならないし、これは成功といっていいのでは?


 時間差でバトステつくかもしれないから、しばらく食べ続けて様子見しよう。


 よし、店出し保留!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ