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60~62日目

60日目

 夕方。ひさびさにお客さんが来た。


 まだ店を経営してることに対して驚いている。逃げなくて大丈夫かと心配された。


 ちょっと疲れた顔をしているので、紅茶を出してあげた。ちゃんと人をもてなしてる感が、なんかうれしい。


 蜂蜜をたらして出すと、なんかとろっとした紅茶だなと感想をいただいた。蜂蜜入りだと教える。


 お客さんは味音痴だそうで、違いとかわからないそうだ。


 香りもいいし、甘くておいしいですよ、というと買ってくれた。三種類全部。


 ほんといいお客さんだ。


 しばらくお客さんはまったりしながら、私が巣箱を手入れするのを眺めて帰っていった。


 強いんだろうけど、夜に出歩くって大丈夫なのかな。怪物でるってのに。



□音声ログ□

「まさかと思ってきてみたが、まだ店を開いていたとはな。事情があるようだが、さすがに危険だろう」

「そうなんですけどね。でも巣箱や畑もあるから放っとくわけにもいかなくて」

「気持ちがわかるがなあ」

「お客さんこそ、ソロでここらをうろつくの危険じゃないですか。怪物もでるらしいですよ?」

「むう。私は大丈夫だ」

「私も大丈夫です」

「ふう……あまり無理はしないようにな。また来る」

「はい。まいどどうもー」




61日目

 朝早くに、職人のおじさんと弟子さんがザカルドさんに連れられて、お礼を言いに来た。


 門が完成したみたい。


 あの後、城主様がわざわざ来てくれて、かわりに呪文を唱えてくれたらしい。


 あんまり怒ってなかったみたいで、迷宮にも問題なく入って大丈夫みたい。ヒステリックな人らしく、助かったと二人は安堵顔だ。ザカルドさんもニコニコしている。


 これからまた登山を再会させるらしい。あわただしい人たちだ。


 ザカルドさんに、ふたりを街に送り届けるついでにこれから買い物に行かないかと誘われた。


 前に付き合うといって保留になってた話を覚えていてくれたようだ。


 すっかり忘れてたわ。


 街に到着して職人さんたちを見送った後、買い出しをした。


 ザカルドさんは街を歩いてるだけで、種族とわずに女性に声をかけられる。とてももてるというのがよくわかった。


 前回私に惚れてるのかとうぬぼれたのが恥ずかしい。


 ザカルドさんがよく買う店で、シードルの好みの茶葉を教えてもらった。それから、食材も。缶詰で十分だけど、ちゃんと食べたほうがいいと食料品店を数件連れ歩かれた。


 たくさん買い物できて幸せだ。ちょっと買いすぎたかな。荷車でも借りようとしたが、ザカルドさんが半分持ってくれた。


 休憩しようとカフェでお茶をする。


 シードルのどこが好きなの、って聞かれた。


 しょっちゅう語ってる気もするが、シードルのことを語れるのは幸せだ。ついつい饒舌になってしまう。

 ほんの少ししか語れてないところで、もういいよ、とザカルドさんが両手をあげる。


 シードルは君を恋愛対象として見れないのにいいの、と確認されたけど、私の愛は男女の色恋という狭い範囲ではない。海。そう母なる大河な気持ちでシードルを尊んでいるんだ。


 ザカルドさん、苦笑いしてたけどちゃんとわかってくれたかなあ。



□音声ログ□

「ザカルドさんってシードルと仲良しですよね」

「仲良しにみえる?」

「? ええ、そう思いますけど……」

「そう。ありがと。話すようになったのはここ最近なんだ」

「へえ。お互いを知りつくした感がありますよ。なんか長年の連れ、みたいな」

「ははっ。まあ、小さい頃から知ってはいるからねえ」

「シードルの小さい頃!!」

「ん? 聞きたい?」

「ぜひ!!」

「んー、どーしよっかなあ」

「教えてください、お願いしますっ!(ゴンッ)」

「また今度お茶してくれた時にね」




62日目

 門へ行く。前より新しくなった門はいつも通りに機能していた。顔見知りになった門番さんたちも元気に働いしてる。よかったよかった。


 シードルは詰所の奥で休憩中だよ、と頼んでもないのに通してくれる。


 せっかくそう言ってくれるんだから、顔は見ないとね。


 詰所に入ると、私は久しぶりに喉の奥から奇声をあげて、涙で目の前が見えなくなった。


 シードルがシャツ姿だった。鎧の点検中だったらしい。


 かっこいい。


 シードルのシャツ姿。ケモラーのつもりないけど、カッコよすぎるよ。


 シードルは呆然としてたけど、お前のそれ久しぶりに見たわ、と笑ってくれた。その少年のような笑い声も素敵だ。襟をたててるけど、それもワイルド。てか筋肉すごいですね。シャツだと胸筋や二の腕の形がよくわかる。鼻血でそう。おねがい萌えごろさないで。


 でもよかった。この前なんか喧嘩別れみたいな感じになっちゃってたから。機嫌直してくれたみたいだ。


 ちょうどそこに、ザカルドさんがあくびをしながら奥の部屋から出てきた。仮眠してたみたい。荷物持ちをしてもらったお礼に、無香料、無臭の石鹸をプレゼントした。


 シャツ姿のシードルを見るのに忙しいので、適当な渡し方になっちゃってすみません。


 こんな素朴なプレゼントはじめてもらったとすごいビックリされた。そりゃあおきれいな女子たちから、可愛らしいものたくさん貢がれてるだろうからね。


 無臭の石鹸だと説明したら、とても重宝がられ、他の門番さんたちも欲しいと言い出した。


 シードルも欲しいかな、とちらっとうかがう。


 興味なさそうにつーんとしてるけど、ザカルドさんがきっと受け取ってくれるよ、と言ってくれたので、あげたら受け取ってくれた。


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