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57~59日目

57日目

 ラムダさんが迎えに来てくれた。ようやく店に戻っていいようだ。そのかわり、店から外に出ることは禁止された。


 森はところどころ、鋭い刃物のような傷で荒されていた。


 小屋の周辺の瑕がすごい増えていた。ここで戦闘があったらしい。


 礼を言って、何もないので蜂蜜をもらってもらう。在庫処分ではない。決して。


 あと、夜はかならず明かりをつけているように言われた。


 火を絶やしたらいけないらしい。門が壊れた弊害で、闇にまぎれて怪物が徘徊して人を襲うんだそうだ。


 店の修繕をしていると、昼過ぎにザカルドさんが店に来てくれた。私の顔を見ると、やっぱりいた、と苦笑された。


 心配で来てくれたらしい。シードルも来たがってたんだけど、僕がからかってたせいですねてこなかったんだ、ごめんねと謝られた。


 シードルが私のいないところで私のことを話題にしてくれているという情報だけで舞い上がって天井に頭打ちそうです。ありがとうございます。


 来てもらったので、さっそく蜂蜜入りの紅茶を出して歓待する。


 門が破壊されたので、奥から化け物がでてこないよう門番さんたちは24時間厳戒態勢らしい。


 私も少しでも役に立ちたいと申し出たところ、団長さんから正式に、薬草ジェル制作の依頼を受けてきてくれたらしい。門へ来る口実にもなるだろ、とウィンク。


 ザカルドさんってほんと男前だ。




58日目

 階下で物音がした。まさか化け物か、と身をすくめる。


 そっと息をころしながら間仕切りの布をめくると、一階で兄が勝手にあれこれやっている。このやろ。2回目だぞ!!


 目を凝らすと、知らないリヤン族のおじさんと若者がいる。門をなおす職人さんを連れてきたらしい。あちこち放浪するのが趣味らしく、さがすのに苦労したそうだ。


 門を作り直す前にお腹がすいたというのでここに連れてきたらしい。兄は我が物顔で、厨房で料理を作り始めた。

 空腹だいう職人さんたちに、お茶をだす。


 しかし、臭いなこの人たち。なんでも雪山登山中だったらしく、数日間風呂に入ってないらしい。


 ぎゃああ。臭いますか、ってばりばり毛をかくのやめてええ。フケが、フケがああ。


 井戸のところに連れていき、強制的に体を洗ってもらう。石鹸あってよかったわ。


 雪山にいたくせに、水は冷たいのでちょっと、みたいな我儘をいうので、焚火をその場で起こして沸かしてあげた。その間、蜂の巣箱にちょっかいかけて、女王の部下たちを怒らしている。おとなしくしててください。


 お湯が沸いて、身ぎれいにしてもらう。私も手伝う。石鹸で毛を洗うが、泡がまったくたたなくて焦った。石鹸3つ目でようやく泡モコにできた。おそるべし、不衛生。


 焚火で毛を乾かしてもらって、ブラッシングしたら、ふさふさになった。こうしてみると、なかなか男前な職人さんたちである。


 ふう、いい汗かいたわ。


 すでに料理ができたらしく、テーブルはないので、それぞれ好きな場所で食べる。


 オオカミ肉の蜂蜜てりやきと、豆ぐだくさんスープ。リス肉のソーセージ。


 兄の手料理、おいしいけどさ、私の店なんだけどね。借金してる手前文句は言えないけどさ。


 そんなもろもろの不満も、蜂蜜てりやきを食べたら、吹き飛んだ。


 くっそお。料理うまいんだよなあ。


 お腹いっぱいになったら、職人さんたち昼寝を始めた。自由な人たち。


 私も少し寝る。気づいたら、職人さんと兄はいなくなってた。メッセージが残ってて、門へ向かったようだ。


 大量の後片付けは、ぜんぶ私の仕事となりました。ぐぬう。




59日目

 少し遅くなったが、ザカルドさんに頼まれていた薬草ジェルを納品に行く。


 門番さんたちに見守られながら、職人さんたちが元気に門の修繕をしていた。


 シードルの側にいく。さっさと帰れてきなことをいわれる前にザカルドさんの居場所をきく。ものすごく不機嫌オーラだされた。おおっ、怖い。依頼品をかわりに、預かってもらうと、あまり門に近づくな、とすごまれた。


 たしかに門の雰囲気はピりついてるから、帰ろうとしたら、職人の弟子さんに声をかけられた。この人、ちょっとのんびりした雰囲気だわ。お茶しませんかって、誘われた。うん、空気読んでよ。帰れって言われてんだよ私は。隣でイライラオーラだしているシードルが見えてないの?ねえ。


 弟子さんのほうは、まだ出番じゃないらしく、暇だからとせがまれて詰所のなかでお茶をすることになった。


 職人のおじさんが建設を、弟子さんは魔導士で、最後の仕上げで、門に術をかけるのが仕事らしい。3日間かけて集中しないといけないから、疲れるんですよねえ、と愚痴りながら勝手にテーブルの上のお菓子をぼりぼり食べている。


 なんか可愛そうなので、琥珀糖をあげたら喜んでくれた。


 そろそろ帰れオーラが強くなったシードルが怖いので、帰ることにした。


 でも、最後に空気読めない弟子さんが余計なこと言うから、シードルの機嫌がすごく悪くなっちゃった。なんか破廉恥女みたいな感じに思われて弁明するけど、何言っても泥沼。


 最後は団長さんが間に入ってくれて何とかなったけど、できれば、次会う時は機嫌直しててほしいなあ。



□音声ログ□

「おい、用がすんだんならさっさと帰れよ」

「はーい。お邪魔しました。シードルも無理しないでくださいね」

「はあ。お前、誰にでも愛想いいよな」

「ええ。とても親切な方ですよね。体も洗ってくれて。僕びっくりしましたよ、ほんと」

「はあ? おまっ、何してんだ!」

「ええっ。いや、だってすごい汚かったし」

「あんな大胆に触られて、ひさびさにドキドキしちゃいましたよぉ。あはは~」

「!!!」

「え、いや。あれは……」

「おまっ。やっぱり、リヤン族ならだれでもいいのかあ?」

「えっ。そんなっ。私はシードル一筋ですううっ」



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