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54~56日目

54日目

 夜中。もうそろそろ寝ようと横になってしばらくしたころ、部屋の中で物音した。


 強盗かと冷や汗かきながらそっと布をめくって階下をのぞいたら、兄だった。


 ブちぎれそう。


 よくわかんないけど、いますぐにエーテル薬がいるみたい。


 それなら少しずつ作りだめしといた品質4~5のやつがある。階段を降りて出してあげようとしたら、勝手に在庫あさって全部持ってかれた。


 去り際、作れるだけ作っとけ、って捨て台詞みたいに命じていった。


 なんだ、あいつは。


 眠いので無視して寝ようとしたら、なんか森中から獣の声とかざわつく音がして、怖すぎて寝れない。


 あと、作業ロボットもすごく稼働してビームはなってる音がしている。ぜったい外は見ないぞ!


 変に目が覚めてしまいしぶしぶ錬金してたら、兄からメッセージが飛んできた。


 薬できたら門へ届けにこいだって。


 いや、無理だろ。殺す気かよ。


 でも待って。門に来いってどういうことだろ? シードルや門番さんたち大丈夫かな?


 心配で質問したのに、それっきり返信がこない。


 なんなんだもう!


 むしゃくしゃしたのでたくさん錬金した。




55日目

 明け方近くに、ラムダさんが迎えに来てくれた。


 あくびを連発しながら、夜通し作ったエーテル薬をリュックにつめて門へ連れてってもらう。


 門へつくと、煌々と焚かれたかがり火で照らし出されていた。


 奇妙な化け物の死骸が散乱してて、負傷した門番さんたちがあちこちで休憩してる。


 いつもは閉じている門が半壊して扉が開いていた。


 慄きながら、兄の姿を探すと、シードルが険しい表情で近づいてきた。今日はすぐに帰れと追い払らわれそうになる。


 ラムダさんが間に入ってくれてとりなしてくれた。兄は門のなかで、作業中らしい。


 門の中か。どうなってんだろ。この中。ここも迷宮なんだよね。


 邪魔にならないように詰所のなかで待つことになった。あわただしそうに門番さんたちが行き来している。


 しばらくして兄がきたようだ。話し声が迫っている。呼んどいて待たせすぎた、このやろ。


 文句を言ってやろうと思っていたが、傷だらけの兄の姿に不満は吹き飛んだ。仲間の皆さんも同様。何があったのよ。


 兄はやれやれと言って、詰所のテーブルにどかっと座る。団長さんも一緒だった。


 もう帰っていいぞ、と言われる。はあ?


 呼んどいてそれかよ、ぶっ飛ばすぞクソ兄貴。


 ささっと、ラムダさんが寄ってきて私は送ってもらうことになった。


 詰所を出るとラムダさんが、今から大切な話があるから、席を外してほしかったんだよ、と補足してくれた。


 兄は私が大事だから関わらせたくないらしい。門へ呼んだのは、一人でおいておくより、安全だと判断したからだそうだ。一番の危機は去ったから、店に戻っても大丈夫と判断したらしい。それならちゃんと説明してほしい。まだよく何が起こったのかわからないってのに。全部落ち着いたら締め上げなきゃね。


 お店についたが、小屋と畑が、かぎづめみたいな跡で荒されている。ひいい。私のお店が!!


 ラムダさんは、私をかばうようにして、店の中へとひとりで入る。しばらくして出てきて、周辺も確認して私のところに戻ってきた。


 一応安全だけれど、おそらく門の中の化け物が外まで徘徊しているだろうと怖いことを言い出す。


 しばらく街にいたほうがいいと提案された。


 でもなあ。女王たちや畑もあるからここにいたい。


 危ないなら穴でも掘ってくらしますと答えるが、しぶい顔をされた。


 頼むから今日は街の宿に泊まってくれと説得され、街まで強制的に送られてしまった。



□音声ログ□

「妹ちゃんに何かあったらハッカクが面倒くさいことになるのでお願いだから街にいてほしい」

「でも。女王たちが……」

「いちおう、ロボたちもここに残していくし、どのみち死んだらここまで一人では戻ってこれないだろう? それなら先に避難しておいたほうがいいと思うんだ」

「ううう……」

「たのむよ。店は壊れてもまた直せるけど、妹ちゃんが死ぬたびに心を痛めるやつがいるんだよ? 俺もこんな危険なとこに妹ちゃん一人残すのは不安だ」

「……わかりました」

「うん。いい子だね。じゃあ早く行こう」




56日目

 門が壊れた影響で、街も騒がしい。門から森へ化け物が出たせいで、それから逃れるために、オオカミなどの動物が街まで逃げてくるそうだ。それを退治したり、門の修復の素材採取に駆り出されたりと、冒険酒場のほうもバタバタしていた。


 庭師さんに会いにいったら、とろくさいんだからしばらく街でいるよう言われた。そうしたいんだけどね、ミツバチたちが心配なんです。


 昼過ぎにラムダさんとツィーさんが宿まで様子を身に来てくれた。ちゃんとおとなしくしているか確認しにきたようだ。


 まだ店には戻っちゃだめみたい。


 私は二人に事情説明を求めた。我慢しておとなしくしてるんだからせめて何が起こってるか知りたい。


 門の中にはお城があるらしい。そこに至る道には薔薇の庭園が続いていて、とあるチームが薔薇を傷つけてしまったらしい。


 なんでも人の血が好きな吸血薔薇なんだそうだ。城主が大切にしている薔薇なので、傷つけたらダメなんだけど、血を吸われたことに怒ったドリーマーのチームが薔薇を攻撃。


 たまたま城主がそれを見ていたらしくて、激怒して門まで追いかけたらしい。


 そのチームはロストしたようだけど、城主の攻撃で門が破壊されたみたい。


 兄たちは城主の怒りを少しでもおさめるために、庭園の手入れに駆り出されてたらしい。


 茨で血を吸いながら、壊れた庭園をなおしをさせられてたから傷だらけだったようだ。


 薔薇の手入れなら、<栽培>を持ってる私を使ってくれてよかったのに。


 不満をこぼすと、ふたりになだめられた。



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