0~2日目
0日目
目をあけると、礼拝堂のような建物内にいた。
おそるおそる外に出てみる。無数の星空のなかに浮かぶ孤島だった。
孤島をうろうろ彷徨った後、天球戯のようなオブジェが光っていたので触れてみた。
光に包まれた後、今度はカプセルの中にいた。中の液体が抜けていき、上蓋が開く。
まわりには同じような形のカプセルがある。
きょろきょろしていると、好青年ふうの男が駆け寄ってくる。
兄のハッカクだ。筋骨隆々で中肉中背。同じ若葉色の髪に、頬にそばかす。そんな兄はドーベルマンのような犬を二匹ひきつれていた。
私が目覚めるのを待って迎えにきてくれたらしい。
ここがムーンベースと呼ばれる月にある機械人間の基地で、はじめてこの≪星の海≫を訪れるドリーマーが訪れる場所だと説明してくれた。
それよりも、すぐさまアッシュのそっくりさんに会いたい!
言い募る私は兄になだめられて、まずここでチュートリアルを受けることになった。
わざわざ兄がここに来たのも、私が暴走してチュートリアルをおろそかにしないように監督するためのようだ。
まさにその通りだったので、ぐうの音も出ない。
その後は兄の後について、武器をもらったり、装備をもらったりしてムーンベース内をまわっていく。
私は、射手座なので≪サジタリウス≫の星霊を受け取った。戦闘時には、星殻に変身して戦うらしい。魔法少女みたいでちょっとわくわくする。
□音声ログ□
「お前が会いたがってるリヤン族だが、木星の<螺鈿庭園>って迷宮の門番をしてんだよ」
「木星? 木星だね、ラジャ!」
「いや、待てって。お前、よわよわだから。光10しかねえじゃん。<螺鈿庭園>は駅からけっこう離れてんだよ。行きつく前に死ぬぞ」
「ええー、そこはほらあ。お兄ちゃんが守ってくれんでしょ?」
「あほっ。お前、守られっぱなしなんて生ぬるいこと言ってんじゃねえよ。道中でしっかりしごくからな」
「ひーん」
リナリィ
星霊:射手座
武器:弓
光:16
ステータス:[筋力 F][持久力 F][技量 E][敏捷性 E][精神力 E]
スキル:[動功 0%][弓 0%]
1日目
銀河列車は、木星にある<荒渦王国>へと到着した。
ここはリヤン族が治める<赤の領地>と呼ばれる土地の中心部だという。海に面するように広がった国で、深い群青色の海のほうから、潮を含んだ風が吹いている。
レンガ造りの建物が並んだ通りを、大勢のリヤン族がにぎやかに行きかっている。
音と臭いと人の熱気に圧倒され、思わず兄の袖をつかんでしまった。
迷子になるなよ、と兄は早足で歩きだす。
人込みに紛れてすぐ見えなくなるので、急ぎ足で追いかけないといけなかった。何度かぶつかり相手に嫌そうな顔をされる。
いくつかの店で、兄に言われるがまま食料や旅の備品を購入する。
それから船に乗った。まずは航路で、憧れの君がいる<螺鈿庭園>に近い港町を目指すそうだ。
いよいよ憧れの君に会えるという興奮は、盛大な船酔いで早くもしぼみかけている。
3回吐いた後、大部屋の船室で横になりぐったりする。
元気に犬たちの面倒を見ている兄がうらめしい。
現実世界では、犬アレルギーのせいで、飼いたくても飼えなくて、いつもペットショップを遠巻きにみながら、くしゃみと鼻水で顔をくちゃくちゃにしてたなあ、とぼんやり思い出す。
うれしげにブラッシングしているのを横になったまま眺める。
その時、船体が激しく揺れた。扉の外が騒がしくなった。
巨大タコに襲われたらしい。すぐさま兄も応戦に向かう。
タコのせいで、うるさいし、船は激しくゆれるしで、全然休めなかった。
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※木星の原住民。ネコ科の獣人。リヤン族の領土は、赤・緑・青の3つからなり、赤の領土のリヤン族はヒョウ顔。
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2日目
一晩海を乗り越えて、港に到着。ここでも観光することなく素通りみたい。
宿屋に泊まってゆっくりしたかった。でも我慢だ。この世界に来たのはすべては憧れの君様に会うため。観光なんていつでもできる。
動物屋で、ドードーを借りた。これで<螺鈿庭園>を目指すらしい。
ドードー鳥に乗るのは難しく、二度ほど落とされた。
完全に舐められてますね、と動物屋も苦笑している。5度落下したところで、脚は遅めだけれど気性の大人しい子を連れてきてくれた。今残っている子がこの子くらいらしい。
振り落とされることはなかったけど、のんびりした気性みたいで少し進んだら休憩しようとする。
そのたびに、兄の犬たちに吠えられて、走り出すということを繰り返した。
□音声ログ□
「ワンちゃん達はどうするの?」
「こいつらは大丈夫だ。ちゃんと後をついてこれる。さっ、無駄口叩いてないで出発するぞ」
「はーい」