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45~47日目

45日目

 ≪螺鈿庭園≫に戻ってきた。


 事前に時間指定して兄に迎えを頼んであるので、その前に薔薇園の庭師さんに挨拶しにいく。


 3人いた新人さんが1人いなくなっていた。庭師さん、厳しいからなあ。


 愚痴みたいなのを小一時間ほど聞いてあげて、お土産渡した。笑顔もありがとうもないけど、受け取ってくれてるから喜んでもらったって思っていいよね? いいでしょう、そういうことにしときます。


 兄との待ち合わせ場所に向かう。


 お土産に犬の形の人形焼き上げたら渋い顔された。


 何その反応。チェリー味嫌いだったっけ?


 しばしの沈黙の後、残酷だとか何とか言いながらもお土産はちゃんと受け取ってくれた。


 犬たちも兄を慰めるように悲し気に鳴いている。え、なんか罪悪感。


 店に戻る前に、門にしっかり寄り道させてもらう。


 今日は門番の日かなあ、とドキドキしながら、門が見えてくる。


 黒いたてがみと鋭い眼光が見えたとたん、ドクンとひときわ強く鼓動がはねた。


 あ、やばっ。


 久しぶりだとあたらめてかっこいいって思った。


 目が合うと、指でクイクイとされた。


 近づいていいらしい。ほいほい目の前まで行く。


 そして、聞かれてもないのに、会えなかった理由と会えない時間がどれほど辛く苦しく、そして今こうしてまた顔が見れて、自分がシードルに会えて感動しているのかを息継ぎせずに伝えて窒息しかけた。


 ぜえぜえいいながら酸素を体にとりいれていると、「相変わらずだなあ、お前は」とため息をつかれ、手で追い払らわれた。


 さっさと行けということらしい。


 ああ、この塩対応、久しぶり。


 ぽわわん。


 幸せな気持ちで兄の元に戻り、店まで送ってもらった。途中、動物たちがこちらをねめつけていたが、軽く兄の犬たちが威嚇して追っ払ってしまう。ちょっと強くなった気がするから、オオカミに挑戦したいと伝えると、まだやめとけと止められた。なぜだ。


 店に戻ると、いったん素材を作業部屋に放り込んで、巣箱と畑の様子を見に行く。


 シラユキ達の花がちょっとしおれてた。雨が降ったおかげでちょっと持ちこたえれたかな。


 肥料と水をたっぷりあげたら回復。うんうん、女王たちも子どもたちもみんな元気だね。


 すでに帰ったと思ってた兄は、薬草畑をうろうろしている。


 何してんだ、あの人。



□音声ログ□

「はい、お土産」

「お前こんなの買ったのかよ」

「いいじゃん、おいしいかもしれないでしょ」

「……」

「え、何。チェリー味嫌いだった?」

「……お前、よくこんな残酷なもの俺にくれようとしたよな」

「え? え?」

「はあ。ありがとな」

「う、うん……」

「くぅーん」「くぅーん」

「ああ、ふたりとも。ありがとう。俺は大丈夫だよ」

「……」




46日目

 久しぶりに錬金をする。


 錬金釜に力をそそぐ感覚も久しぶりだ。そして力をこめすぎて爆発する。うん、これも久しぶり。


 作り慣れた琥珀糖を合成してみる。するといきなり品質3ができた。


 おお、すごいぞ。ひさびさなのに調子いいわ。


 一時間ほど、品質1~3の琥珀糖を量産して満足する。


 気をよくした私は、オオカミどもへのリベンジを決意する。


 ふふふふふ、待ってなさいよ。ちょっとは強くなってんだからね。兄には止められたけど、私だってやれるんだから。


 弓を手に、森を徘徊してオオカミを探す。


 見つけた。


 放った矢が胴体をかすった。すぐさま敵対関係になる。


 だが私は甘かった。やつらは群れで行動するのだ。


 連係プレイにやられて、寄ってたかって、噛みつかれふるぼっこにされてロストした。




47日目

 死に戻って店に戻ってきた。私は誓おう。


 もう二度とオオカミとは絡まない。絶対にだ!


 気分を切りかえて、畑の手入れをしていると、シードルとザカルドさんが店に来てくれた。


 店の外観にふたりは驚き、中に入ってさらに驚いている。


 だが私はそれどころではない。慌てながら歓迎の準備にとりかかる。


 お茶っぱも茶器も何もない。なんで用意してなかったのよ、私!!


 しかたなしに、適当な茶碗にそそいだ井戸水を出す。椅子はないので立ち飲み。しくしく。


 気にしなくていいよと笑顔を見せてくれていた二人だったが、私の主食が缶詰で、井戸の水で身体を拭き、屋根裏で寝袋をしいて寝ていると話していると、どんどん言葉をなくしていった。さすがに、あれ? ひかれてない? と最後のほうで気づく。


 いや、確かに普通の女の子の私生活よりサバイバルな要素強いけど、生活できれば問題ないよね。


 去り際、すごくかわいそうなものを見る目で見られた気がするけど、気のせいだよね。


 それより、せっかく来てくれたのに、ふたりをちゃんと歓迎できたかそちらのほうが心配だ。井戸水より白湯のほうがよかったか?


 椅子やテーブルもなかったけど、ビュッフェスタイルだと思えば素敵だよ、とシードルがフォローしてくれてたから問題なかったよね?


 女王たちの花畑と薬草畑は、すごいって褒めてくれたもん。


 大丈夫だよね?


 ……。


 だよね?



□音声ログ□

「お前って苦労してたんだな」

「女の子の住む場所にしては、ねえ」

「え? なにがですか? あ、井戸水しかないんですがいいですか? 白湯のほうが?」

「いいよ。井戸水で」

「気ーつかうな。俺たちゃ、客じゃねえんだ」



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