39~41日目
ターシャの名前をタチバナに変更しました。
39日目
岩窟都市へ辻馬車で移動している。この馬車はドリーマーが護衛してくれるから、安全らしい。乗客は4人。商人さんらしきおじさんと、カップルらしき二人ずれ。で、ドリーマーは私だけだ。
ずっと座りっぱなしだったので、お尻が痛くなってきた。
時々小休止で泊まって、馬車をひくボノボ※に水を飲ませたりしている。お花摘みをした隙に薬草湿布をお尻に貼っておいた。スースーする。
途中、野盗に襲われることなく進むことができた。
夜になり、野宿することになった。護衛さんは外にテントを張り、乗客はこの中で毛布にくるまって寝るみたい。
御者さんや護衛のドリーマーたちが焚火をして、スープを配ってくれた。豆と干し肉のスープだ。体が温まる。
護衛のドリーマーの人は親切でいろいろ教えてくれた。迷宮に入るならランタンやつるはしを購入したほうがよく、高くてもちゃんとした店で買うことを勧めてくれた。安い店は安いなりの理由があるらしい。
肝に銘じておこう。
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※ボノボ。四つ足のバッファローっぽい牛のような家畜。角が生えている。環境に適応して毛が生え変わる。ミルクを入手したり、毛は素材として重宝される。
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40日目
夕方に<岩窟都市>に到着した。<岩窟都市>は地下に巨大な鉱石を生み出す<坑道迷宮>があり、それで栄えているようだ。
鉄を焼くにおいや煙で少しけむたい。
雲行きも怪しくなってきたので、まず適当に安宿を探すことにした。
連泊すると安くなるらしいのでとりあえず5泊で支払っておいた。
今日はもう迷宮に潜るのはやめたほうがいいだろう。街の観光しよう。
あれこれと見てまわる。
ドリーマーが経営している露店もあって、安く薬瓶なども購入できた。これに蜂蜜とか入れて売ったら可愛いぞ。
朝に兄に送ったメッセに返信が来ており、弓矢も新調しておけとあったので、武器も見にいく。
日がくれるにしたがって、街のあちこちで灯がともり、にぎやかになっていく。酔っぱらいの姿もちらほら現れだした。
宿屋のおばちゃんが教えてくれた食堂をのぞいたけれど、夜は酒場になるみたいだ。酔っぱらいの下品な笑い声を耳にして、秒で店の扉から手を離した。飲み屋は苦手だ。
適当に屋台で食べ物を買う。
もう雨がじゃあじゃあ降っている。そうそうに宿に引き返して、明日の準備をすることにした。
41日目
露店で買ったつるはしとカンテラ、オイルを持ち、はじめて<坑道迷宮>に潜る。
ドキドキ。
入り口から入ってくすぐは、ほかのドリーマーたちやリヤン族の工夫たちの姿も多い。
どこをどう掘ればいいのかわからない。適当でいいのか。
しばらくほかの人の動きを盗み見して、それから人気が少なそうな場所に移動。つるはしを振るってみた。
掘っていると、いきなりダンゴムシに体当たりされた。衝撃で吹っ飛ばされる。
痛い。
暗いうえに、ツルハシを振る音で接近に気づけなかった。
くそおっ。ダンゴムシめぇ。
弓矢を構えてがむしゃらに矢を打つ。
どうにか倒せた。
採掘に戻る。今度は蝙蝠がまとわりついてきて、邪魔してきた。
うきいいいいい。
そんな感じで採掘中、つねに動物に邪魔されながらも採掘に集中していると、鐘の音が響いた。
周囲を見渡すと、数人がぞろぞろと帰っていくのが見える。
ぽかんとしていると、親切な工夫さんが、今の音は、日暮れを知らせる鐘の音で、新米は帰ったほうがいいぞと教えてくれた。
そっか。じゃあ帰るか。
成果は、クズ石が少し採れただけだった。
しんどかったわりにしょっぱい。
麻袋に詰めて持って帰る。
宿屋に戻るとおばちゃんが声をかけてくれた。私の様子から成果が芳しくないと悟ってくれたようだ。
ちょうど宿屋に私と同じようなルーキーが泊ってるから、一緒に潜ってみてはどうかと提案される。
もうすぐ帰ってくるから待っといてみな、と言われて、待つこと小一時間。
煤で全身が薄汚れた汚れた、ひどい状態の女性ドリーマーが入ってきた。青色のボブに、左目は眼帯をしている。
おばちゃんが女性に声をかけて数回やりとりすると、こちらを見た。
思わず背筋を伸ばす。
緊張するっ。
たどたどしい自己紹介を終え、私たちははじめてチームを組むことになった。
□音声ログ□
「あの、宿屋の女将さんから紹介されて……」
「あ、どうも。リナリィです。はじめまして」
「タチバナです。はじめまして」
「なんか、ボロボロですね」
「ああ、自作の爆弾の爆発に巻き込まれたんです」
「爆弾作ってるんですか。あ、これ。私が作ったエーテル薬です。飲んでください」
「え、でも……」
「いや、痛々しいので。遠慮しないで飲んでくれると助かります」
「すみません、ありがとうございます」
「……」
「……」




