33~35日目
33日目
店に客が来た。強盗かとびっくりしたけど、むこうも人がいると思わなかったので驚いていた。
店だと知るとさらに驚かれた。わかる、私もここが店だと思わないもん。
店内の商品を見てもらったけど、薬草ジェルや琥珀糖はいらないみたい。ちょっと残念。
エーテル薬は作れるかと聞かれた。ああ、エーテル薬かあ。
私の今の熟練度でギリってところかなあ。
今、薬ボトルが空で、品質が悪くてもいいからすぐに欲しいみたい。
ちょっと待ってもらって、作ってみることにした。
お茶菓子がないから、井戸水と、ステーキ肉を出しておいた。
数時間後。
完成したエーテル薬を渡す。品質3だけど。
お客さんに代金はいくらだと聞かれた。びっくりである。わかんないと正直にいうと、正規の値段を教えてもらい、本当にお金を支払ってくれた。
お礼を言って去っていった。
初めてのお客さん。すごくドキドキした。ちゃんと薬が効果を発揮してくれることを祈るばかりだ。
34日目
店内を入念に掃除した。
外見は廃屋だけど、せめて小ぎれいにしておきたい。
なし崩しでオープンすることになっちゃったけど、うまくやってけるといいな。
時間がかかったけど、イバラからも蜂蜜をとれた。
ほんのちょっぴりなので、シラユキと灰かぶりもそれぞれ瓶につめて、シードルのところへ持っていく。
ステルスのおかげでオオカミから隠れながらすいすいと進める。あ、見たことない花を発見。あ、あそこの草もなんか、素材になりそう。
調子に乗って摘んでたら、ステルスが切れていることに気づかず、オオカミに追いかけられた。
門が近かったので逃げ込む。
シードルが倒してくれたけど、めちゃくちゃ叱られた。
ごめんなさい。
今日の門番はシードルとザカルドの二人。ちょうど休憩に入るそうなので、お茶に誘ってもらえた。
舞い上がる気持ちで詰め所の奥へ。
紅茶に蜂蜜を垂らして試飲する。
私はどれも甘いなあ、と感じるだけだけど、シードル曰く、三種類それぞれ味や風味が違う見たい。
花が違うからとれる蜜が違うのかな。
混ぜてしまわなくて良かった。
35日目
街で錬金の素材を探すけれど、どれもいいのがない。
クレイドルに入って、取れそうなスキルはないか眺めていると、兄がやってきた。チャンネル登録して通行許可を出してあると、クレイドルの島同士に橋がかかって行き来が可能なのだ。
クレイドル内で兄に会うのは初めてだ。新鮮な感じがする。
錬金の素材について相談したところ、別の場所での採取を提案された。
荒渦王国から北東に進んだ先にある岩窟都市にある迷宮で、素材が手に入るらしい。ついでに鍛えてこいと言われた。
護衛をお願いしたが、すげなく拒否られた。
かわいい妹のお願いを断るとはつれない兄だ。
新しいスフィアはくれたけど、有り金半分もってかれたし、飴と鞭を使い分けられてる感じがするなあ。
さーて、どうしよう。シードルに会えなくなるのは嫌だけど悩みどころだなあ。
□音声ログ□
「街での品ぞろえにも限度があるんだろ。そろそろ本格的に迷宮に潜ることを考えてみるんだな」
「んー、でもそうするとシードルにしばらく会えなくなるし」
「急がば回れ、っていうだろうが。このままじゃいつまでたっても、店も繁盛しないし、ちゃんと体鍛えて、売れるもん増やしたほうが、喜んでもらえんじぇねえの?」
「うううううっ」
「悩むことかよ。そうだな、お前のレベルだと、岩窟都市の坑道迷宮ならいけるだろ。2階層までなら動物も弱いから」
「んーーーーーお兄ちゃん護衛してくれんの?」
「バカたれ。甘えんな。ちょっと、ステータス見せてみろ」
「はい」
「げっ。ぜんぜん成長してねーじゃねえか」
「いてっ。暴力反対」
「うるせえ。愛のデコピンだ。お前、今いくらシードもってる?」
「え、こんくらい」
「半分寄越せ」
「……」
「ほら、このスフィアつけとけ。多少硬くなるし、弓も強くなるだろ。じゃあもう行くわ」
「えっ、もう行くの?」
「俺は忙しいんだよ」
「お兄ちゃん!」
「んだよ?」
「ありがと」
「へっ。弓の練習、さぼらずに続けとけよ」




