30~32日目
30日目
蜂蜜がとれた!
ちょっとだけどシラユキの巣箱から蜂蜜が!
嬉しすぎて、私はすぐさま門へとステルスダッシュした。
門にはザカルドさんがいて、ちょうどシードルは休憩中らしい。わざわざ奥へと呼びに行ってくれた。
私はふんふんと鼻息を荒げながら、とれたての蜂蜜を彼に献上する。
最初のワンスプーンはぜひシードルに食べてほしかった。
彼は戸惑いながらも、その場で蜂蜜を指にすくい舐めてくれた。
最後にぺろりと指についた分をなめる。
はぁ。
色っぽすぎてめまいがしそうだ。
うまいよ、と彼はいって、あろうことか私の頭をポンポンしてくれた。
号泣したのはいうまでもない。
シードルは「本当に俺が好きなんだな」と意外そうにつぶやいた。
好きですよ? ラブですよ?
当り前じゃないですか。
シードルが生きててくれるおかげで、毎日が楽しいんです。ほんとうに、感謝しかありません。生まれてきてくれてありがとうございました。
懸命に想いを口にしたけれど、どうやら鼻水と涙が邪魔して彼にうまく伝われなかったようだ。
シードルは顔を苦々し気にゆがめて、「俺もお前のこと嫌いじゃないぜ」と返してきた。
金づちで頭蓋骨を直接殴打されたように、脳髄がしびれた。
俺もお前のこと嫌いじゃないぜ。
その台詞がずっと頭のなかで反響している。
その後、何か言って、仕事に戻ると言って私の前から去っていった。
つかの間、その場で放心していたけれど、気づいたらちゃんと小屋に帰ってた。
□音声ログ□
「お前すぐ泣くよなあ」
「だっで、う゛れぢぃんですもんんん」
「……お前、ほんとに俺が好きなんだな」
「%○*!♭☆$&※■ !! $▲☆×%*○■!」
「ハハっ、何言ってるかわかんねえよ」
「ずびぃ。わ゛、だじ、は゛ぁあ」
「なあ。俺のこと好いてくれるのはありがたいんだがな」
「んびぃ」
「俺もお前のこと、変なやつだけと、嫌いじゃねえんだぜ」
「!!!!」
「でもな。種族が違うだろ? すまねえが、俺はお前を女としてみてやることはできねえ」
31日目
灰かぶりから蜂蜜がとれた。
二日続けて蜂蜜を献上するのはいかがなものか、と思ったが、やっぱり一口目はシードルに食べてもらいたい。
そんなわけで、やることとっととやって門へ。
ルンルン気分だ。だって私、嫌われてないんだもん。正直、何度も目の前で号泣して好きだと告白を繰りかえす狂人として気味悪がられてたらどうしよう、と1ミクロンだけ心配だったのだ。それが杞憂とわかっただけで身も心も羽根のように軽い。
私の顔を見ると、驚かれた。もうここには来ないと思ってたらしい。
え? 来ますけど?
嫌になるって、何で嫌になるんだろ?
すると、私のことを女として見れない。いくら好きでいてくれても、恋人にすることはないと言われた。そーいえば、昨日もそんなこと言われた気もする。些末すぎて馬耳東風だったわ。
シードルに恋人がいても子供がいても、それごと愛するんですけど?
何か安っぽいものに思われちゃ心外だわ、私のシードル愛を舐めんな。
32日目
蜂蜜で何か作りたいが、今のレベルで蜂蜜を使えるレシピがない。
やはり料理スキルのほうを習得すべきだったか?
私が錬金で作れるのは、薬草ジェルと琥珀糖、あとは肥料くらいだ。
うっすい錬金入門書を取り出して読み返してみる。熟練度があがれば一般的なレシピにアレンジをできるようになるらしい。
とりあえずもったいないけど、今は肥料の材料に使った。
時間ができたので、兄に言われていた弓の練習をしてみることにする。
適当な樹に丸い印をつけて、ひたすら射る練習。
うむ、まず樹に全然当たんないわ。
矢はある程度射ったら、自己回収して再利用。もったいないからね。
10回やって一本、樹に当たる感じ。印にはかする気配もない。
意地になって夢中になってたら、視界をリスがよぎった。
やばい、このままじゃドロップキックをくらう。その瞬間、微動だにしなかった掃除ロボットからビームが放たれリスを直撃した。
リスの焼死体が出来上がる。
うわあ。掃除ロボットの的中率すごすぎる。