27~29日目
27日目
雑草もとい薬草に水やりをする。
適当に、失敗作を使って錬金でつくった肥料も与えてみる。
元気に育っておくれよ。
薄紫の花もすべて開花したので、灰かぶりを起こした。これで起動している巣箱は二つ。イバラの花もいよいよつぼみがほころびそうだし、早く三大女王がお目見えしてほしいものだ。
街まででかけて薔薇園に顔を出そう。定期的に顔を出せって言われてるからね。
その前に門によってシードルの顔を見て行こうとしたらいない。ザカルドさんが休みだから街にでかけたよ、と教えてくれた。ちぇ、会えなかったか。いや、街につけばワンチャンあるか。
わずかな希望は残したまま、まずは薔薇園に足を向ける。いつもお前は突然来るな、と庭師さんにあきれ顔をされた。
ついでだから手伝えと、薔薇の手入れをやらされた。
帰り際、花の着き方が悪いから、と薔薇を一輪くれた。
たしかにちょっとしおれてる。でも十分きれいだ。
たぶん、庭師さんてツンデレなんだろうなって思う。本人に行ったら激怒されそうだけど。
街をぶらぶらする。前はこの辺でシードルを見かけたなあ、という道を歩いてみたりした。
すると、建物から出てきたシードルを見つけた。
ほんとに会えたー!!!
距離があり、完全に背を向けてるからこちらには気づいていない。建物から出てきたシードルは、妙になまめかしい同族の女性の腰を抱いていた。
どうみても母や妹という感じではない。
ということは恋人か!?
その事実に興奮して鼻息が荒くなる。
けっこう距離があったのだが、テレパシーでもつうじたか、シードルが振り返った。
ばっちりと目が合った。
どかっ。
その瞬間、大柄な通行人にぶつかる。
完全によそ見していたので周りがよく見てなかった。どうもすみません、とへこへこして謝ってやりすごす。
もう一度、視線をシードルの方に戻した。彼は女性の肩を抱いて路地に消えていくところだった。
28日目
イバラもすべて花を咲かせた。
これで三大女王が全員お目覚めだ。
雑草畑もとい薬草畑もぐんぐん伸びていて、ジャングル化している。錬金やりたい放題だ。
上機嫌で出かける支度をすますと、手製の薬草ジェルを持参して、門に向かう。
今日は仕事の日だもんね。ザカルドさんに教えてもらって知ってるんだ、むっふっふ。
連日でシードルを見るなんて、贅沢すぎるぞ、私。
今日も、グレイがかった黒いタテガミがセクシーだ。
シードルは私を見ると微妙そうな顔をした。
あれ、いつもあきれた顔をするか睨まれるのに、なんだろうか。お腹すいてるのかな。蜂蜜はもう少し待ってください。そういう気持ちをこめてウィンクをかえしたら、目をすがめられて、もう二度とこちらを向いてもらえなかった。
安定の塩対応である。でもしあわせ。
いつも通り一時間だけ彼を眺めて、薬草ジェルだけ受け取ってもらって帰った。
29日目
店は森の中にあり、原生生物がそこらを闊歩している。小屋に近づいてきたシカやオオカミは掃除ロボットに倒されるせいで、毎日のように死骸がとれる。
死骸は使い道がないので、食べているが連日ステーキは飽きた。完全に死体だから、昇華※してスターシードにもできない。
狩猟スキルか料理スキルがあれば、サニティ減少なしで上手に解体もできるんだけどねえ。
そうだ、これをシードルへの手土産にしよう。
げっへっへ、シードルの顔を見れる口実ゲットだぜぇ。
ルンルン気分で、ステーキを包んでステルスで門へ向かうが、なぜかオオカミの群れに襲われた。ステルスしてるのに、まっすぐ私に向かって走ってくる。
護身用に弓はもってるけど、立ち止まって弓をひいてる余裕がない。
ステーキ肉を投げつけると、そっちのほうへ気がちったようでそのすきに小屋まで逃げ帰った。
掃除ロボットに縋りついて、気持ちが落ち着くのを待つ。
めちゃくちゃ怖かったあ。
兄にメッセージで、愚痴を言ったら、少しくらい弓の練習をしろと叱られた。
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※昇華。生物を狩る際、ぎりぎりまで弱らせてから星印(ドリーマーの左手に刻まれている)をかざすと、その生物は光の粒子となってスターシードへと変換できる。ライフ0になるまで攻撃すると、死骸が残り、毛皮や肉といった素材がとれる。
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