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24~26日目

24日目

 シラユキの花がつぼみをつけていた。


 一番開花が早そう。イバラはまだまだだね。早くおーきくなーれ。


 錬金で琥珀糖を作った。ふぞろいな透明の塊がぜんぶで7個。爆発した回数6回。失敗作20個。頑張りました。

 売り物になりそうにないので口の中に放り込む。無味無臭な味わい。じわっとサニティが回復。


 全部食べても、自分が消費した精神力の半分も回復しない。コスパ悪すぎ。


 錬金の材料が尽きたので、街に買い出しに行く。


 森にいるのだし、採取できるものは自分でとればいいのだが、いかんせん普通の森とは違い、危険動物も多く茨だらけなので、命がけの採取となる。


 だから街でまとめ買いをするほうがお得だ。


 ぱんぱんになったリュックを背負い、さあ帰ろうと思っところで気づいた。この荷物を背負ってステルスは、隠れられてないんじゃないかと。そもそも重量オーバーで走れない。


 しかたなく、兄をメッセージで呼び出す。待つこと数時間。


 緊急事態に飛んできた兄は、たんに荷物運びの護衛を頼まれたと知り、激怒した。


 でも途中で放り出すことはなく、ちゃんと店まで送ってくれた。


 今度から事前に連絡しろ、と言われる。


 お礼に作った琥珀糖をおすそわけ。



□音声ログ□

「お兄ちゃん、ほんとに来てくれると思わなかったわ。ふだんどこにいるの?」

「ああ……だから迷宮の中だよ。なかにちょっとした街があって、そこにみんないる」

「へー。じゃあけっこう簡単に戻ってこれるんだね」

「んなわけないだろ。けっこう戻ってくるのハードなんだからな」




25日目

 シラユキの花が可憐な花を咲かせた。灰かぶりもイバラも順調につぼみをつけてきている。


 女王たちを起こすのも近いかもしれない。


 気をよくした私は、何気なく小屋の周囲を見て、ハッとする。


 小屋の周辺の土地には、面倒くさくて適当にまいた種が、青々と茂っているのだが、よくみたら薬草っぽい。

 ちょっと摘んでみてよくよく観察。うん、全部薬草だわ。生えっぱなしで、肥料も適当、水もめんどくさくてタライでまいてたわ。


 今更ながら、価値に気づいて戦慄する。繊細な植物じゃなくて助かった。


 そうだ。せっかくだから庭師さんに薬草湿布でも作ってあげよう。


 また腰痛になるかもしれないもんね。


 いそいそと、錬金する。爆発2回で成功。調子いいぞ、私。


 街に行って薔薇園に行くと、庭師がビシバシと新人をしごいていた。


 私に庭師さんの注意がうつると、あきらかにほっとした顔をする新人さんたち。いいでしょう、お年寄りの愚痴は私が引き受けますよ。


 最近の若い者は……から続く愚痴を「はあ」とか「へえ」とかうすい愛想笑いで付き合う。


 あと店のこととか、育ててる花のこととか、肥料の配合の仕方とか、いろいろしゃべれて満喫。


 それから薬草湿布を渡した。あやうく渡し忘れるとこだったわ。




26日目

 小屋の前に、シカの死骸が横たわっていてぎょっとした。黒焦げである。


 何が起こったのかわからなかったけど、ラムダさんが作ってくれた掃除ロボットが活躍したんだと思う。


 時間をかけてシカを解体。口のなかがすっぱくなって胃の奥からせりあがってくる何かと格闘しながら、肉と角をゲットできた。


 シカ肉のステーキだあ。朝から豪勢な食事を終えた。


 巣箱を見に行く。


 シラユキの花がすべて開花しているので、巣箱をカプセルから出した。しばらく眺めていると、ミツバチが出てきて、仕事を始めた。


 いよいよ、蜜を作ってもらえる。とても楽しみだ。


 蜂蜜づくりもはじまったし、シカ解体という乙女には高いハードルを無事にクリアしたので、自分へのご褒美を与えてもいいだろう。


 よっし、シードルに会いに行くぞ! さくっとステルスで門までダッシュだ。


 いたー!!


 今日のシードルもとてもカッコいい。


 いつものように仕事の邪魔にならないよう物陰からご尊顔を拝見してたのだが、おいオマエ、と呼ばれた。ちょこちょこといくと、邪魔にならない端っこにある粗末な椅子を顎でしゃくられた。


 逆に危険だから、ここで座ってろということらしい。


 狂喜乱舞で小躍りしたら、鼻息が荒いと額にデコピンされた。


 なにこのイチャイチャタイム? ラブコメか?


 鼻血でそう。とりあえず鼻を抑えておく。


 気をとりなおして、椅子に姿勢よく座り、シードルの仕事姿を堪能する。


 他の門番さんに、退屈じゃないの、とか声をかけられるが、幸せです、と緩み切った笑顔で答える。

 門をくぐるドリーマーたちをさばいている彼を見るのは至福な時間だった。通りがかるドリーマーにはものすごく変な目で見られたけど。


 名残惜しいが、彼を見るのはきっかり一時間だけと決めている。


 帰ります、と伝えると、そうか、と言って気をつけて帰るように言われた。


 うわあん、心配までしてもらっちゃったよお。



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