緊張を打ち消さんとする通話と柔和な笑顔
俺は恋人の部屋でそわそわと落ち着きなく、視線を彷徨わせる。
目のやり場に困り果て、太ももに置いた手元に視線が落ちて呼吸が乱れる。
星河さんが戻るのを待つことすら、息苦しさが襲う。
現状に苦しんでいるところに、スマホが着信を告げた。
三ノ宮からだと告げる着信音に設定している曲が星河さんの部屋に響いて、慌ててズボンのポケットからスマホを取り出して通話に出た俺だった。
『もしもし〜さなっちって今どこ?教室に行ったけど居ないじゃん、クラスメイトに聞いたけど知らないって言われてさー……』
「恋人の自宅、だよ……」
『へー、恋人の自宅ねぇそれは……ってぇ、恋人のっっ!?それって星河さんのってことぉぅ?ヤんの?星河さんとヤるって流れで掛けたってことか俺?』
「ヤんないよ、三ノ宮ァ!ヤるわけねぇだろ、オマエじゃあるまいしっ!俺がそんなの無理だって知ってるだろ、オマエっっ!」
『ヤっちゃえよ、さなっち〜!この機会に卒業しちゃえよ〜ぅ、童貞をよ〜ぉ!』
「そんなこと、軽々しく言うなってオマエ!オマエみたいに精神できてねぇんだよ、俺ぇ!」
『それもそうだ。さなっちは豆腐なみの精神だよな、悪かった。それはそれとして……あの娘、さなっちに抱かれること悪くは思ってないよ』
「自覚してる、脆いことくらい。まあ……俺も感じてる、星河さんに接してて……ね」
『ふーん、じゃ星河さんと存分に楽しめー。また、明日なーぁ!』
「おいっ、三ノみ——」
ブツッ、プープーと、俺が返す前に通話を切られた。
んだよ、アイツ……
星河さんの部屋の扉が、通話が切れたタイミングで開き、トレーを持った星河さんが謝りながら入ってきた。
「お待たせー、巳波くん。遅くなってごめんー」
「……うん」
「三ノ宮さんが相手だと、あんなに楽しげに声を荒げるんだね。巳波くんって」
「あっ、ごめん、うるさくして……」
「ううん、そうじゃなくて。私にも……三ノ宮さんのように、接してほしいなって。素の巳波くんを見せてほしいの」
「三ノ宮のように……素の俺……」
彼女が発した言葉を、理解するように、脳に馴染ませるように、呟いた俺だった。
「ささっ、デートだよ。デート、楽しもっ!ねっ?」
若干の沈んだ空気を打ち消すような明るい声で盛り上げようとする星河さん。
「そうだね……」
テーブルを挟んで脚を崩して座る彼女の柔和な笑みを、瞳で捉えながらぎこちない笑みを浮かべて、返答した俺だった。




