いい匂いすぎる部屋
「あのさ……お邪魔して、良いの?星河さんの自宅に……」
「……えっ?あぁ、うん。気変わりしたの?」
星河さんが遅れた驚きの声をあげ、普段の声音にすぐ戻っていた。
「快く承諾してくれたから……あの娘とのこと。お邪魔するだけ、ならって……」
「そういうことかぁ……じゃっ行こっか、私ん家!襲わないから、それだけは誓うよ!」
恋人繋ぎをしていた手に少し強く力を入れた彼女が駆け出した。
彼女に俺の手汗で不快にしていないだろうかと、不安は払拭されないままで、恋人繋ぎをしながら駆ける俺ら。
ある一軒家の前で彼女が足を止め、俺に視線を向けて柔らかい声音で一言発する。
「緊張しなくても良いよ、巳波くん」
「……あっうん」
俺は彼女に手を引かれたまま、星河家の敷居を跨いだ。
靴を脱ぎ、用意されたスリッパを履くと、見つめている彼女と視線が合い思わず視線を逸らした俺だった。
「ごめん。えっと、私の部屋に案内するね」
「うん……お願いします……」
階段を上がっていく彼女の背後に着いていく。
部屋に着いたようで扉の前で足を止め、扉を開いて招く彼女。
「お邪魔しまぁーすぅ……」
「声、ちっちゃいって。ぷふっ」
「だって……」
「そうだったね。好きなところに座ってて、飲み物持ってくるから。何が飲みたい、巳波くん?」
「うん……えっと、炭酸飲料やコーヒーじゃなければなんでも飲めます」
「分かったよ」
彼女が部屋を出ていく。
フローリングに敷かれたラグにちょこんと正座して、彼女を待つ俺。
彼女の匂いが充満しており、昇天しそうなくらいいい匂いでどうにかなりそうだった。
告白された日に手が触れたときは緊張していたのに、男子を自分の部屋に招くことには緊張してないようだった。




