表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/117

93話 貴族騎士

「君ってシュバルツ家の断罪者だよね。よろしくね」

 3番隊隊長の女性騎士ターニャは天真爛漫な小柄な女性で自身の身長よりも長い槍を扱う。


 現在、俺は3番隊の皆さんと王都の警備に当たっている。

 厳戒態勢の敷かれている王都にわざわざ潜むなんてよっぽどの馬鹿か自信があるのか。

 だからこそ躍起になって探しているわけだが、3番隊を含めて他の部隊もこいつには随分とおちょくられているみたいだ。


 俺が選ばれたのは監獄送りにしたのが俺でかつ、相性的にもベストだから。

 重要なのは戦闘力ではなく追跡能力なのだ。

 そいつの戦闘能力は四次職にしてはかなり低く、その代わりに逃走という面が強い。


 世紀の大怪盗ルブラン、王都を中心に盗みを働き、多大な被害を多くの人間に負わせたため暗殺依頼を出されて俺に暗殺された男。

 またあいつかと拍子抜けなきもするが、騎士団の熱気はすごい。

 騎士団が被害を受けているわけではないが、誇りを重視する彼らはルブランに泥を塗られたと感じている。


「ターニャ見つけたよ」

 真昼間から堂々と人混みの中を歩いている。

 問題は周りに人が多いことだ。

 ここで攻撃を仕掛けてしまうと被害が出る可能性がある。

 基本は騎士団に任せることにしているため、まずはターニャの判断を仰ぐ。


「お前たちは周りを囲え。一般市民に被害が出ないように考慮しろよ」

 ターニャが指示を出すと速やかに騎士団の面々が散っていき、ルブランの逃げ道を塞ぐ動きをする。


 しかし、ルブランの視線がこちらに移る。

 騎士の動きがバレてしまった。

 ルブランが煙玉を地面にたたきつけると煙幕が広がる。


「きゃあああ」

「なっなんだ!?」

「火事だーーー」

 市民はパニックを起こしルブランはその場から立ち去る。


「落ち着いてください。ただの煙幕です」

 騎士団が事態の鎮静に手を尽くすがパニックは収まらない。

 ルブラン確保はまさかの大失敗に終わった。

 俺はあくまでも助っ人であり、責任をとるのは騎士団である。

 ターニャは総隊長と宰相から注意を受けたようだ。

 俺も一緒に注意してくれればいいのにと罪悪感を覚えるが、ターニャ本人はケロッとしていて気にしていない。


「ふんっ、ここぞとばかりに下衆どもが叩いてきたな。クロツキ君は気にしなくていいからね。今回は完全にウチらの手落ちだよ。少しばかり休みをもらってしまったから明日からクロツキ君は5番隊と一緒に行動しておくれ。でも、5番隊は黒い噂もあるから気をつけたほうがいいよ」

 ターニャはそんな不穏な言葉を遺して去っていった。


 翌日、5番隊と王都を巡回することになったのだが、なんとも雰囲気が好きではない。

「お前がクロツキか、せいぜい足を引っ張らないようにしてくれよ。全く、王の御命令でなければな……いくぞ、スクアロ」

「はい、ブラウィン様、あちらの店で目撃情報があったようです」

「分かった、お前達はそっちの路地を漁れ、他はついてこい、行くぞ!!」

 隊長のブラウィンはいかにも貴族な体形をしている。

 騎士らしからぬぷよぷよな下腹、手足も顔も全体的に丸々としている。

 それに比べると副隊長は筋肉隆々でガタイがいい。


 隊長と主だった隊員は貴族出身で平民のことをかなり下に見ている。

 平民出身の隊員は雑用ばかりを押し付けられていた。

 そして、貴族出身の騎士は隊長のブラウィンを筆頭に明らかに俺を敵視している。


 裏路地のような服の汚れそうな道は平民出身の隊員の担当になっている。

 そして俺もそこに同行していた。

 隊長とその周りの貴族出身は巡回と称して店巡りをしている。

 まぁ、そこに絶対にいないだろなんて言えないが、あまりにも格差がありすぎる。


「クロツキ様、申し訳ありません。隊長は悪い人ではないんですが、貴族の誇りを大事にしているお方でして……」

 貴族社会など経験したことがないがその光景は見覚えがあった。

 ブラック企業の上司と部下だ。

 上司の命令は絶対で部下なんて使い捨ての奴隷にしか見ていない。

 社員応募の広告に騙された社員は徹底的に使い潰される。

 広告には嘘しか書かれていないのだ。

 残業月10時間、土日祝休み、有給休暇も簡単に取れるアットホームな会社です。


 逆に正しい部分を見つけることの方が難しい。

 月の残業は120時間オーバー、土日祝も会社に呼び出される。

 有給休暇なんて存在しない。

 アットホーム? 笑わせてくれる。

 貴族と奴隷の関係のどこがアットホームなのか。


 社畜時代を思い返すとふつふつと怒りが湧き上がってくる。

 ここにいる平民出身の騎士たちも隊長は実はいい人なんですなんていっているが、悲しいかな俺にもそんな時期があった。

 麻痺して分からなくなってくるのだ。

 奴隷としていることが当たり前のように振る舞われているとそれが当然なんだと錯覚してしまう。


 ここはなんとしても、この悲しき子羊たちに活躍してもらってあの貴族どもを見返させしてやりたいものだ。

 俺は一層メラメラと燃えてルブランの捜索に力を入れる。


 そしてようやく見つけた。

 昨日の反省を活かして見つけたら先制攻撃を許されている。

「見つけた、気づかれる前に攻撃をします」

 隊員に報告をして、影に消えていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング



同シリーズを毎日投稿しているので、ぜひよろしくお願いします!!

もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ