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91話 王国の盾

「にいちゃんっ!? 戻ってこれるのまだ先じゃなかったの?」

「ナツナさんからお前がこそこそしてるって聞いて、急いで用事を済ませてきたんだよ!!」

「トーヤさん……」

 突如現れた男に聖騎士達はおどおどと戸惑っている。

「何のためにお前らをつけたと思ってるんだよ、全く……」

 真っ白なローブを纏った男はクロツキの元へ移動して頭を下げた。


「ほんっとうに申し訳ない。俺は祝福の光(ライトオブブレス)のマスターをしてるトーヤだ。今回はギルドメンバーが迷惑をかけたようだし、できる限りの償いはさせてもらいたいと思っている」

 立ち振る舞いからも強者だと分かるほどにトーヤという男は存在感が強い。

「いや、こちらとしては誤解が解けたのならそれで十分です」


「いやいや、本当に申し訳ない。ただ何もしないのではこちらとしてもよろしくないし、もしも何か困りごとが有れば最優先で手伝わせてもらいたい」

「はぁ、ありがとうございます」

 そして、なかなかに熱い男だ。


「おい、お前らも頭を下げろよ!!」

 トーヤの一言で聖騎士全員が頭を下げる。

 聖騎士達はかなりの実力があった。

 そんな人たちが従っているのだから、実力もさることながらカリスマ性もあるのだろう。

 実際に少ししか話していないが引き込まれるような感覚を覚える。


 一人だけ不服そうにしているのはヒジリだった。

「でもさ、そいつは暗殺ギルドのマスターなんだよ。罪人を裁くのが私たちの仕事だって神殿長が言ってたじゃん」

 王国には六神教という国教があり、王都には大神殿が建てられている。

 そこの偉いさんから裁きを任せられているのが白の断罪者なんだろうなと推測する。


「暗殺ギルドって言っても国に認められてるから活動できてるんだろ。裏ギルドとは別物だっていったろ」

 トーヤが睨みつけて、ヒジリは少し後退りをしたが、まだ引き下がらない。

 裏ギルドは国に認められていないギルドで主に犯罪者御用達の依頼を請負ったりしている。


「でもさ、でもさ、おかしいじゃん。普通にプレイしててあんな高級地区にギルドなんて建てれるはずないじゃん。しかも、影の館(シャドーハウス)は人数も最低限なんだよ。絶対に怪しいことして稼いでるに決まってるじゃん」

「それは調査をして特に怪しい点はなかったで落ち着いた話だろ」

 どうやら俺らのギルドは祝福の光(ライトオブブレス)に調査をされていたらしい。

 気づかなかった……


「でも私たち、クロツキがPKしてるの見てるんだよ。ねぇ、みんな」

 ヒジリの声に反応して項垂れている聖騎士は小さく頷いた。


「金閣のことだろ。大体、あのギルドこそ犯罪ギリギリのグレーゾーン……というか一線を超えていたギルドだっただろ。なら別におかしくはない」

「おかしくないことないよ。裁くのは私たちなんだからさ。プレイヤーキルしていい理由にはならないよ」

「はぁ、まず俺たちはそこまで偉くない。それに裁くのは俺たちだけじゃない。国の警備隊だってそうだし、他にも治安部隊もある。それに……」

 だだをこねるようにヒジリはトーヤの言葉を遮って訴える。

「それは現地人(ローカルズ)の話でしょ!!」

「だから最後まで話を聞けって。クロツキさんもこっち側の人なんだよ」


「どういうこと?」

 もはや涙目のヒジリ。

「断罪者なんだよ」

「っ!? 嘘だ!! そんなわけないよ」

「いいや真実だよ。影の館(シャドーハウス)の設立にシュバルツ家が力を貸しているからね」

「そんな……」

「もういいだろう。お前も頭を下げろ」


 ヒジリはしょぼんとしてクロツキの前まで歩いてきて頭を下げた。

「すみませんでした」

「クロツキさん、妹には強く言い聞かせておく、申し訳ない」

 再度、トーヤが頭を深く下げる。


「もういいですから、顔をあげてください。それよりも一つ聞いてもいいですか?」

「何だろうか?」

「そっちの妹さんが白の断罪者といっていたけど、カルマ値を見る眼を持ってないのかが気になった?」

 これが1番の疑問だった。

 この眼があるからこそ、真に断罪に値するかを測ることができる。

 断罪者ならば持っていてもおかしくはないはずのスキルだ。


「あぁ、そういうことか。実はこいつは断罪者を名乗っているけど違うんだよ。本当の役職は聖女だから眼を持ってるわけじゃないんだ。持ってるのは俺のほうなんだ」

「納得しました」

 つまりトーヤこそが本物の白の断罪者ということ。



§



 金閣も倒して祝福の光(ライトオブブレス)からの誤解も解けた。

 これで安心してごぶ、トロン、ラムを見送ることができる。

 護衛には当初の予定どおりのリック、天城、セレスがつくのだが、そこにさらに祝福の光(ライトオブブレス)からも迷惑をかけたとしてヒジリとあの場にいた聖騎士五人も護衛につくことになった。


 ヒジリや聖騎士は護衛にこそ真の力を発揮できるらしく、これ以上にないほど安全な旅が保証されている。

 王国の剣が黒のシュバルツ家ならば、王国の盾は白のヴァイス家らしい。


 とにもかくにも難所は乗り切ったと安心したのも束の間で数日後に緊急通信で王宮から招集命令が出された。

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