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89話 戦場に現れる死の運び手

 勝敗はリックに傾いたようで、シャビは膝をついた。

 剣聖の必殺コンボである超高速移動、縮地からの居合・一閃を見事に打ち返したリックの技巧も相当なものだった。


 リックの職業である雷公剣士(らいこうけんし)は戦士職でありながら雷魔法を使いこなす。

 雷を身に纏っての超高速移動の迅雷、雷を剣に付与しての一撃である雷鳴剣。

 雷魔法の特徴である麻痺によってシャビは体が痺れて未だに立てないままであった。


 雷公剣士は幅広い状況に対応できる。

 近接戦は雷を付与しての戦闘が強力だし、雷魔法を放つことで遠距離戦にも対応ができる。

 ただし、弱点もあってそれは魔法発動にMPを使用してしまう点で、どうしてもステータスが中途半端になりがちになる。

 INTに振ればSTRもVITも低くなり、戦士として弱すぎる。

 かといってINTに振らなければせっかくの魔法を使える戦士という職業がほとんど魔法が使えなくなってしまって本末転倒だ。


 そのせいもあって魔法戦士はあまり選択されない職業なのだが、リックは絶妙なバランスで成立させていた。

 激しい戦闘でMPは尽きかけているが、目の前の膝をついているシャビなら倒せる。

 とどめを刺すために近づこうとしたとき、視界の端に魔法使いの影を見る。

 即座に迅雷を発動させて降り注ぐ岩の雨を避ける。


 魔法使いはさらに魔法を唱えて3メートルを超える巨大なゴーレムを召喚する。

 ゴーレムの体の素材は岩でできている。

 土を操ることに長けた魔法使いなのだろうと判断して、リックは顔を歪める。


 岩のゴーレムは雷の効きがイマイチなのだ。

 余力があれば破壊はできるが、その余力が今はない。

 リックの心を無視するようにゴーレムが襲いかかってくる。

 魔法使いを倒せば召喚されたゴーレムは消えるが魔法使いの横に地味に盾役が一人ついていた。


 最悪のタイミングでの金閣の援軍である。

 話し合って一パーティ同士での戦闘と決めたことが簡単に破られた。

 しかし、そんなことを言ってもシャビはどこ吹く風だろうことが分かる。


 急がなければシャビの麻痺も溶けてしまい、一気に形成が悪くなる。

 セレスと天城も互角の勝負を繰り広げていて、こちらが崩れれば向こうも終わり。

 絶体絶命に近いと苦笑いを溢すしかないリックはせめて、金閣の戦力を削っておこうと持てる魔力を振り絞ろうとする。

 魔力を雷に変換する。

 大気を電気が走る。

 やるぞと心の中で決めた瞬間だった。


 ゴーレムが動きを止めて砂へと変わって崩れていく。

 見ると魔法使いと盾役の男は首が落とされ、斬り刻まれていく。

 後には光の粒子と黒い残像だけが残っていた。


「居合・乱れ桜」

 しまったと振り返った時には遅い。

 麻痺から解けたシャビが腰に刺した刀に手をかけ居合の構えに入っていた。


 しかし、スキルが発動することはない。

 柄を握っていたはずの腕が斬られて、刀は鞘から抜かれていない。


 全身黒の服に身を包み、漆黒のマントをなびかせる男がいつの間にか立っていた。

 骸骨の仮面は獲物を見定め死を運ぶ。

 恐らくスキルが発動したのだろう。

 速すぎていくつの斬撃が放たれたか見えなかったが、シャビは死んだことだけはすぐに分かった。


 シャビに一瞥することもなく次の獲物へと死を運びにいく。

 その姿には味方だとしても恐怖を覚えざるを得なかった。



§



 氷と炎がぶつかり合って水蒸気が辺りを包む。

 その中で大型のモンスターと人の身にしては体躯のいい戦士たちが激しくぶつかり合う。

 2人プラス三体と金閣の7人が互いに連携をとりながら互角の勝負を繰り広げている。

 いや、援軍が到着してからは金閣が有利だろう。


 真っ先に異変に気づいたのは金閣の隠者職の女だった。

 気配察知に長けた職業だからこそ気づけたのだが、高速で移動しているその影を視界に捉えた時には自らの体を逆さに見ていた。

 視界の最後は自らの首から上がない体だった。


 魔法使いの二人は交互に穴ができないように魔法を放っていたが、その影を見て同時に詠唱を始める。

 なぜわざわざ詠唱を唱えたのだろうか、無詠唱ならば威力は落ちるが防御魔法を発動させることはできたのに。

 死ぬ瞬間になってから冷静な判断ができるようになった。

 二人は互いに同じことを考えながら光の粒子へと変わる。

 死の恐怖は冷静な判断力を削ぎ落とす。


 金閣で初めてその影を正確に攻撃したのは槍使いの男。

 自身の持つ最も自信のあるスキルを発動させる。

 無明三連突きのほぼ同時3連発動。

 つまり9つの鋭い突きが影を襲う。


 ……壁?


 九つの突きの前に突如として現れて、あまりにも多すぎるその刺突の数に壁と見間違えた。

 9連突きの10倍以上の突きが放たれていたのだ。

 気づいた時には自分の体は穴だらけになっている。


 残るは前衛で三体のモンスターと戦闘をしていた3人だった。

 大剣を握る戦士。

 大楯を担ぐ戦士。

 その両方を操る戦士。

 満身創痍の3人の前に現れた骸骨の仮面。

 何が起きているかよくは分かっていないが、他の仲間が全員殺されたのだけは分かる。

 そして、目の前の存在がヤバすぎるのも直感で感じていた。


 その高速の動きから隠者系統で相当AGIに振っているとあたりをつける。

 大剣の男は玉砕覚悟で突進する。

 玉砕といってもやられる気など毛頭ない。

 AGIに振っている隠者職の攻撃などでHPが削りきられるわけがない。

 大剣はブラフでタックルをしてとにかく動きを止めることに集中する。

 掴みさえできればと勝機を見出しての行動。

 それが功を奏したのか見事にタックルは決まり、骸骨の仮面の男を両の手でしっかりと掴んだ。

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