82話 モンスターを選択したプレイヤー
さぁさぁ、今回から新章突入です。
この章でやっとモンスター側のプレイヤーが登場します。
さらに広がるルキファナス・オンラインの世界をよろしくお願いします。
王国よりも遥か遠くに魔族領は存在している。
人種の国々と同じように魔王をトップに立てた統治国家になるのだが、違うのは全員がモンスターもしくは魔族。
プレイヤーもいればそうでない存在もいる。
人種では来訪者と現地人と分けられていたが魔族領ではそういう概念が薄い。
魔族領を選択するプレイヤーは割と数が多い。
最初のうちは人種と同じように遊べていいのだが、ほとんどのプレイヤーが当たる壁がある。
それが行動範囲の狭さ。
魔族領は広大だが都市や街となると人種側と比べて圧倒的に数が少ない。
そもそもがいくつもの国がある人種側と一つの国としてある魔族領を比べることすらおこがましくなる規模の違い。
魔族領から出てはいけないという決まりはないし、出ようと思えばいくらでも出れる。
ただし、狩られる可能性が格段に上がってしまう。
どこまで行ってもモンスターや魔族は人種の敵と認識する者が多い。
テイマーなどの職業があるのだから仲良くできることなどわかりきっているのに、それでも忌避感の方が勝るらしい。
魔族領にモンスターを選択した少年少女のプレイヤーたちがいた。
彼らは今から魔族領を抜けて人種の領土に足を踏み入れようとしている。
「よーし、目指すは帝国だな」
ゴブリンが高々と手を上げる。
「準備も万端だよ」
「本当にいいの?」
「大丈夫だって、これだってあるしなんとかなるさ」
ゴブリンは緑色の肌をしていて150センチほどの小柄なモンスター。
知能は低いとされていて、プレイヤーが選択した場合は種族特性でINTが上がりづらい。
その代わりに他のステータスは上がりやすい。
そこらへんにポップするゴブリンは目つきからして邪悪そうな目をしているがこのゴブリンの目はそこまで邪悪ではない。
キャラクタークリエイトでそう作ってある。
スケルトンは骨が本体のモンスター。
それぞれの部位のパーツは魔力で繋がっていて動いている。
ステータスは全体的にバランスがいいが、若干VITが低いくらいだ。
スライムはジェル状のモンスターで核を中心にジェルが集まっていて、核さえ無事なら体への攻撃はほとんど効かない。
顔がなく五感を全て魔力感知で補っている。
おおよそ人間の感覚とは大きく異なるので操作が難しい。
「敵が来たみたい」
魔力感知で敵の反応があることを2人に告げる。
スライムを選択した少女の名前はラム。
今回の旅の目的を作った張本人である。
魔族領でもモンスターが敵として出てくる。
これらは知能のない野生のモンスターと言われ特に倒しても問題がない。
「よーし、さっさと片付けようぜ」
ゴブリンを選択した少年はごぶ。
ラムがぽろっと漏らした言葉を聞き逃さず、今回の旅をすることを即決したリーダー的な存在。
「では先制攻撃行きます」
スケルトンを選択したトロンはごぶがとにかくラムの願いを聞き入れるとなんの計画もなしに意気込んでいたので旅の計画を立てた。
森からものすごいスピードでやってきたのは数種類の虫型モンスター。
百足に蛾にカマキリの3匹だが、その大きさは2メートル近くあって、あまりにも気持ち悪い。
トロンは詠唱を始める。
魔導師のローブに魔導師の杖を身につけている。
モンスターには職業はないがその代わりに進化ができる。
職業でいうと三次職魔法使い系統になるトロンの種族名は『死骨の魔術師』、闇魔法を使う魔術師で三段階目の進化だ。
「深き闇より穿て『深淵槍』」
闇槍よりも上位の闇の槍が空を飛ぶ蛾の羽を貫いた。
しかし、ふらふらとはしながらも空を飛んでいる蛾は羽を羽ばたかせて風の刃を撃って反撃に出る。
「任せて!!」
トロンの前にラムが体を出して風の刃を飲み込んだ。
ラムは触手を伸ばして蛾に触れると蛾が溶けていく。
三段階目の進化『アシッドスライム』は強力な酸を操ることができる。
一方でカマキリは大きく羽を広げ鎌を上げてごぶを威嚇する。
しかし、その程度では怯むことはなく巨大な鎌を素手で掴んでへし折り、カマキリの顔面を蹴りつける。
三段階目の進化『ゴブリンバーサーク』は狂戦士と同じで狂乱状態に入ることでステータスを上げるのだが、ごぶは素の力でカマキリを圧倒していた。
もう片方の鎌も引きちぎり、カマキリの頭部をかかと落としで潰す。
「下からくる」
いつの間にか消えていた百足の居場所をラムが感知する。
百足が地面を掘って下から出てきた。
ラムのお陰で百足の不意打ちは不意打ちではなくなり格好の的となる。
「深淵槍」
「アシッドテンタクル」
「適当に石を拾って投げる」
トロンとラムが攻撃している横でごぶはそこらに落ちていた手頃な石を拾って百足に向かって投げた。
決してふざけているわけではない。
ごぶは近距離の攻撃手段しかなく、2人が攻撃しているのに自分が近づいては危ないと考えて、石を拾って投げた。
しかし、その威力はふざけていて、硬いはずの百足の体を石が突き破った。
2人も慣れているので気にしないことにしている。
「よし、では出発しよー!!」
「ごぶ、そっちは反対方向だよ。こっちだ」
「あははは」
こうして3匹のモンスターの旅は始まった。




