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8話 情報屋

「立ち話もなんだろ、中に入んな。私が情報屋だよ、適当にセン婆とでも呼んでおくれ」

 おぉ、確かに老婆の出てきた店がマップに記された店だ。

 店の中は色々なアイテムが乱雑に置かれていた。


「でっ、なんのようだい? セバスのお使いだろ」

「お使いというか、個人的なものなんですけど。この二人組を探してるのと、ナイフを一本見繕って欲しいです」

 俺は2人の画像を見せる。


「ナイフの方はその辺から適当に持っていきな。お代もいらない。さっきのチンピラどもの件では迷惑かけたからねぇ。でも、情報の方は簡単には渡せないねぇ。あんたのことをまだ信用してないからね」

「どうすれば、いいですか?」

「そもそも、あんたがセバスの知り合いか怪しいとこさね。何か証拠がいるね。セバスのお使いならいつもは手紙が持たされてるんだけど、あんたは持ってないだろ」


 証拠っていっても俺はセバスさんから何も預かっていない。

 名前を出せばなんとかなるといってたんだけどなぁ。

「これで情報は買えないですか?」

 手持ちの金貨を見せる。


「悪いがこれは信用の問題なんだよ」

 物や金ではダメということか。

 信用の証拠ね……


「これならどうですか?」

 俺はシュバルツコインを見せる。

「……!? それはシュバルツコインじゃな。なるほどなるほど、それなら信用に十分値するよ。とっととしまいな、あまり見せびらかすもんじゃないよ」

 どうやらいけたらしい。


「では情報をお願いします」

「まずはどうして探してるのか聞いてもいいかい?」

「殺されたので仕返しするためです」

 俺は本音をぶつける。

 セン婆さんは少し、俯き何かを考えているようだ。

「殺されたので仕返しかね……あんたら来訪者(ビジター)は命の価値を軽くみすぎるとこがあるね」

 セン婆さんの言葉重みを持っている。

 プレイヤーは死んでもデスペナルティはあるものの生き返ることができる。

 それに比べて現地人(ローカルズ)は死ねばそこで終わり。


「まぁ、いい。分かったよ、あの2人は初心者狩りを控えてレストリア近郊の森、この辺でモンスター狩りをしてるはずだよ」

 セン婆さんは壁にかけられたマップを指差す。

「なぜ初心者狩りを控えてるんですか?」

「別の犯罪集団が出てきて身を潜めているといったところかね」

「なるほど、ありがとうございます。お代は……」

「それもいらん、その代わりといっちゃあなんだが、2人を殺す時、できるだけ優しく殺してやってくれるかい」

 優しく殺すってなんだろ? 殺すに優しいも優しくないもあるのだろうか?


「出来る限り甚振らずにひとおもいに殺してってことさね。あんたにとっちゃ復讐だろうがなんとか頼むよ」

 俺が不思議そうにしてるのを察してくれたようだ。

「分かりましたけど、そもそも殺してもいいんですか?」

 俺も流石に甚ぶって殺そうとは思わない。

 しかし、セン婆さんの反応だと、2人と知り合いのようだし殺してもいいものなのか。

 それに命の価値云々はいいのだろうか。


「自業自得さね。調子に乗ってたからお灸を据えようと思ってたとこだよ」

 まぁ、セン婆さんからすれば死んでも生き返る来訪者(ビジター)の2人とはいえ、お灸を据えるイコール殺すなのはいかがなものかと思うが……

 見た目の雰囲気からもやばそうな気配を漂わせてるので特に何も言わないでおく。

 

「出来るだけひとおもいに殺すことを約束しますよ。まぁ、殺せるかどうか分かんないですけどね。もしかしたら返り討ちに会うかもしれないですし」

 いくらセバスさんに鍛えられたとはいっても勝てるかどうか微妙なところだ。


「ありがとう。そういえばナイフを所望してたね」

「これでお願いします」

 俺は初心者ナイフを選択した。

 あの2人とセン婆さんが知り合いのことからも、このナイフが俺のものだった気がする。

 そもそも初心者ナイフは職業訓練所では手に入らない。

 店で買うこともできるがわざわざ初心者武器を買うプレイヤーは少ない。


「待ちな、それをお貸し。何かモンスターの素材はないのかい?」

 初心者ナイフを渡して、俺は一通りのモンスターの素材を見せる。

 一角ウサギの皮や一角ウサギの角、森蛇の尾や紫森蛇の毒牙などだ。

 角は結構な数の一角ウサギを狩っても一本しか手に入らなかったからレアな気がする。


「ゴロウ、どうだい?」

「これと……これを……使っても……いい……か?」

 俺とセン婆さんの会話の間も微動だにしなかったクマのような男がゆっくりと動き、ゆっくりと喋った。

 武器の素材にするということなんだろう。


「大丈夫ですよ」

「ちょっと……待って……な」

 選んだ素材と初心者ナイフを持って奥へ行ってしまった。


「他のアイテムはどうするんだい? あんたには世話になるし相場よりも高く買ってやろうか?」

 これらは使い道も無さそうだし、必要になれば狩ればいいだけだからな。

 高く買ってくれるなら売ってもいいな。


「お願いします」

 うむ、まぁまぁの金額だった気がするな。

 といっても数千エリルだけど。

「あんたはもう少し疑うことをしな。相場より高いっていっても相場を知ってるのかい?」

 確かに、相場を知らない。


「ハハハ、そうですね」

「優しくしとくのは今回だけだよ、全く……」

 どうやら、今回だけは相場より高く買ってくれたようだ。

 あとで確認しておこう。


 そんなやりとりをしてるとゴロウさんが奥から戻ってきた。

 手には初心者ナイフがあり、大きな手で手渡ししてくる。

 特に何も変わってないように見えるが、ゴロウさんが説明をしてくれた。


「ここぞ……というときに……使うといい」

「ありがとうございました」

「何かあればまたおいで」

 情報屋を後にした。


 さらに街で金貨を換金して10万エリル。

 これを使って今の自分が装備できる隠者系シリーズで防具を揃えた。

 これで復讐の準備は整った。

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もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
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