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77話 ギルド特権

 監獄システムは悪さをすれば、はいダメですとはならない。

 重要なのは国がそのプレイヤーの罪を認識するかどうかで、バレなければ犯罪を起こそうとも監獄送りにはならない。


 そして国はプレイヤー同士のいざこざには極力介入しないようにしている。

 前のルブランのようにプレイヤーも現地人(ローカルズ)も見境なく盗みを働いていると監獄送りになってしまう訳だ。

 普通は依頼をされても国が監獄送りにすると決定しなければ監獄送りにはできない。

 そういった点を考えると『影の館(シャドーハウス)』は他とは一線を画すギルドであるといえた。


 女性は暗殺したい理由を俯きながら話し始めた。

 元々はこの女性を含めた5人パーティだった。

 女性もパーティを信頼して全員の共有資産として素材やお金をリーダーである男性に預けていたのだが、足手纏いだからとパーティを抜けるように遠回しに伝えられて、そこから言い争いが増えるようになりパーティの雰囲気が悪い中、決定的な事件が起こった。

 ダンジョンに入っていた際、彼女はモンスターの群の中で置き去りにされデスペナルティを受けることになる。

 そしてデスペナ明けにパーティで借りていたホームで目を覚ますとそこには何もなく預けていたお金や素材も全て奪い取られたという形だ。


 その後も話をしにいったがもはや相手にもしてくれず、ストーカーだとありもしない噂を流布され、街で歩くだけで通りゆく人に変な目で見られてメンタルはぼろぼろ。

 

 洪水のように溢れでる涙とパーティへの不満。

 暗殺依頼を出そうと決めたのは4人が2組のカップルになって自分が邪魔だから追い出そうとしたと知ったから。

 そういう男女関係のもつれは少なくないが、わざわざゲーム内でまで持ち込まなくてもいいんではないかと思うんだが、楽しみ方は人それぞれか……


「この4人の暗殺をお願いします」

「本当にいいんですか?」

 こんな仕事をしておいてなんだが、暗殺が最善でいいこととは思っていない。

 話し合いで解決できるならばそうするべきで、暗殺をしてしまうとその後の関係の修復はほぼ不可能になる。

 ジャンヌからの願いでなければ暗殺ギルドなんて創設はしていない。


「はい!!」

 女性の決意は固かった。

 しかし、まだ受けるとは言わない。

 ここから依頼料や注意事項など話さなければいけないことがいくつかある。


「分かりました。決意は固いようですね。まず、今回の暗殺が成功したとしてもお聞きしている限りでは監獄送りにはできないと思います」

「やはりそうですか……」


 ギルドには功績に応じた特権が与えられる。

 このギルドの場合は依頼を受理して暗殺すれば国の判断に関係なく監獄送りにできる。

 しかし、それは好き勝手に誰でも監獄に送れるわけではない。

 一定以上の悪性が溜まっていないとダメなのだ。

 さらに国が出す監獄送りよりも刑が軽くなる傾向がある。

 まぁ、これに関しては国が動くくらいだと、よっぽどのことをしでかしているようなプレイヤーなので、それらと比べられると俺の監獄送りにしたプレイヤーの刑期は短く見えるだろう。当然と言えば当然の結果ともいえる。


 ちなみに国が監獄送りにした中で現在の最長は恐らくイヴィルターズリーダー、イーブルの1年だろう。

 イヴィルターズは再びあの村を襲おうとしていたようだが、ストルフとサンドラによって壊滅させられて監獄行きになっている。

 俺が監獄送りにしたルブランは1ヶ月もすれば出てくるはずだ。


「それに奪われた素材やお金は戻っては来ないと思っていてください」

 少しの間を置いて、彼女は力強く肯いて答える。

「それでも……それでもお願いします。自分の中でけじめをつけて整理がしたいんです」

「依頼料はおおよそこれだけ必要になります」

 机に総額いくらかかるかの明細を渡す。

「こんなに……ですか……」

「申し訳ないですけど、これよりは下げれないですよ」

 暗殺対象のレベルや実力で依頼料は上下するが、今彼女に見せたのは話を聞いた限りでの最高額。

 依頼料についてはジャンヌからも釘を刺されていて安請け合いをしてはいけない。

 そんなことをすると簡単に暗殺という手段を取る人が増えることになってしまう。


「なんとか、手持ちのアイテムと装備を売って……それから……」

 どんなに不憫な話であってもこれまで依頼料を下げたことはない。


「リーダーの男一人だけの暗殺でも大丈夫ですか?」

「それはもちろん大丈夫ですよ」

「ではお願いします」

 話もまとまりかけたところで静かに話を聞いていたルティが口を開いた。

「クロツキさん、体で払ってもらってはどうですか?」

「えっ!?」

 俺と女性はルティから出た怪しいワードに驚く。

 いかつい男がそれをいうなら暗殺ギルドらしいような気もするが、ルティの口からそんな言葉が出たことで驚きは倍増される。


「あっ……勘違いしないでくださいね。体で払ってもらうっていってもギルドの仕事を手伝ってもらえないかと思っただけで……」

 ルティは顔を真っ赤にして弁明している。

 しかし、この案は割といいのかもしれない、丁度事務的な仕事をしてくれる人を探していたし、俺の心情としても彼女の話を聞いていて暗殺はしてあげたいなと思ってしまった。


「たしかにアリかもしれないな」

「待ってください。私は戦闘職ではないですし、暗殺のお手伝いなんてできないですよ」

 女性の職業は鍛治師、たしかに戦闘には向いていないだろう。

 特に暗殺なんてもってのほかだと思う。

 しかし、求めているのは戦闘のできる人材ではない。

「大丈夫ですよ、資料の整理をして欲しいだけなので」


 こうして女性の処遇はルティに一任することにした。

 女性同士で話がしやすいはずだし、ルティがこのギルドで一番事務的な仕事には詳しい。

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