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73話 鎧炎巨人

 オークジェネラルのガハルは部下の報告で自分たちの縄張りに侵入者が入ったことを聞いた。

 聞くまでもなく侵入者の存在は知っていたがその詳細は分からなかったのでありがたい。

 ありがたいが、そのために複数の部下の犠牲があった。


 群れの長として時には非常な決断をしなければいけないこともある。

 しかし、今はまずかった。

 たった2匹の雌に使っていいリソースではない。


 ガハルに部下への思いやりなどなく、利己的な性枚で群れの長にのし上がり、さらに上の存在を目指し群れを巨大にすることに注力していた。

 100匹を超える数の暴力で豊かな山を奪い取ったのはいいが、今は50匹にも満たない。


「ご苦労だった」

 敵戦力を知るために部下を犠牲にした将官オークにねぎらいの言葉をかける。

 その眼に一切の情けはなかった。

 将官オークの足元から巨大な木の根が足に絡みつき全身を覆う。

 干からびたミイラのようになった将官オークを別のオークに処分させる。

 群れの数を減らした最も大きな理由はこれだった。

 少しでもオークジェネラルの気に障れば処分される。


「ふうむ、これと進入してきた雌2匹で当分は大丈夫か。では私自ら手を下すとしよう」

「はっ!! 御心のままに」

 誰もオークジェネラルの決定には否を出せない。

 明日は我が身なのだ。


 今のオークジェネラルが群れの最大の癌だと分かっていてもどうすることもできない。

 ただただその命令に従い、多くの侵入者が来ることを祈るばかりである。



§



 不気味なほどに濃い緑。

 自然は偉大なものでその力強さに比べれば人などちっぽけな存在にすら感じる。

 日の光は微かにしか差し込まず、 蠢く無数の命が陰に潜む。


 ほとんどは無害な昆虫や小動物、中には毒をもつものもいるがそれは自衛のためであることが多い。

 森は多くの生命の宿となっている。

 少し前までは正しい食物連鎖の流れがあった。

 今はそれが崩れている状態で管理人のいない宿はさびれていくのみ。

 いたとしても今の管理人では役不足なのだ。


 オウカとルティは森々とした中の一筋のけもの道を進む。

 開けた場所に出ると、前方から堂々とした風格のオークが他のオークを引き従えて悠然と歩いてくる。

 他のオークよりも一回り大きく身体に樹を巻き付けている。

 明らかに知能が低いようには思えない。

「私はオークジェネラル、 ガハル!! 貴様らが侵入者か、愚かにも同胞に手をかけた罪は重い。森の糧になってもらおう」

 ガハルが前に出て他のオークは後ろに下がる。


鎧炎巨人(フレギカント)オウカ、だ!!」

 ガハルの名乗りにオウカが答え、 炎巨人の腕で殴りかかる。

 四次職に上がり炎巨人の腕には炎の跡が大きく刻まれ、 纏う熱量も格段に上がっている。

 オークたちは恐れを覚えるがガハルだけは強く睨みつけ右腕を振ると地面から大樹が生えてきて腕のような形をとった。

 腕と腕がぶつかり合って高熱が周囲に広がる。


 炎の腕と樹の腕では樹の腕が燃えそうなものだが、大量の水分が含まれた高密度の腕は燃えることはなかった。


 ルティはなぜこんなことになったのかと思いながら、1対1の状況になった戦闘を静観している。

 周りのオークも静かに戦闘を終わるのを待っている。


 オウカがもう一本の巨大な腕を出すとガハルも対応するように大樹で腕を作る。

 巨大な腕は組み合って力比べを始めた。


 森の一部から小さな命たちは逃げる。

 戦闘の余波で樹は薙ぎ倒されて燃える。

 そこだけ太陽の光が大きく差し込んでいた。


「ウォォォォォォォォ」

 ガハルは雄叫びを上げて力を振り絞る。

 組み合っている二本の樹の腕以外にも複数の大樹が地面から生えて、先を鋭く尖らせてオウカを襲う。


 オウカを包むように半透明の鎧の胴体が現れ、大樹を弾く。

 胴体の次に足、兜と顕現して巨人は立ち上がる。

 組み合っていた腕を戻すと完全な鎧炎巨人が完成する。


 炎の巨人(ロギサス)と呼ばれるモンスターを倒して手に入れたフルアーマーがそのまま職業になったオウカ。

 完全顕現した鎧の中身を強化するように餓者髑髏の骨がフィットする。

 目が赤く光り、さらに全身に炎が回る。

 背中に後光を表すような燃える輪が現れた。


 これまでとの大きな違いはオウカ自身が鎧の中にいること。

 どうしてもその場から動けないデメリットは大きく、上に行くほどに弱点として露わになっていたがそれが解消された。


 そこからは一方的な展開となった。

 ガハルはひたすらに守ることしかできず、防戦一方。

「クッ、こんなところで終わってたまるか。力を……私に力をっ!!」

 その声を聞いた仲間のはずのオークたちはその場から逃げる。


 逃げるオークの足に木の根が絡まると命を吸われるように干からびていく。

 50匹はいたオークの群れはガハルのみとなり、ガハルの体から途方もない魔力が溢れ出す。

 その目はうつろになり正気を保っていない。


 ルティは準備を始めた。

 他の仲間の力を奪い取るなど1対1ではないだろうし、なによりも加勢しなければオウカがやられる可能性が出てきている。

 戦闘の邪魔をするとオウカに後で小言を言われるだろうが、依頼を失敗するわけにはいかない。

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同シリーズを毎日投稿しているので、ぜひよろしくお願いします!!

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