67話 ギルドメンバー顔合わせ
サンドラとの訓練が始まってから1週間が経過しようとしていた。
いったい何度殺されたのだろうか。
しかし確実に成長は感じられている。
別にレベルが上がったとか、新しいスキルを覚えたとかではない。
それでも目の前の光景が成長を物語っている。
サンドラは1週間前と変わらずに俺を殺そうと迫ってくるが、その手には二本の槍が握られている。
そして二本ともが二段階の解放をしている。
これでまだ本気には程遠いのだから恐ろしい。
そしてセバスさんはこのサンドラの師匠であり、さらに強い力を持っているらしい。
その背中は遠すぎてよく分からない領域だ。
「よーし、ある程度は形になったな。これなら断罪者を名乗ってもいいだろう。だが調子に乗るなよギリギリ許せるって程度だからな」
「ありがとうございました」
訓練を終えて庭に出ると満面の笑みのジャンヌがお茶をしていた。
「クロツキ、ギルドの準備が整ったぞ」
俺にとって緊張の時間がやってきた。
ギルドメンバーとの顔合わせだ。
ジャンヌ曰く、全員が知り合いらしい。
現れたのは3人。
「クロツキよろしくな」
「クロツキさんよろしくお願いします」
右手を上げて元気に声をかけてくるのはリオン、そして顔を赤くして頭を下げているのがルティだ。
まぁ、ここまでは予想していたよ。
そもそも俺の顔見知りと言っていたが、自慢にはならないけど俺に知り合いなどそう多くない。
その数少ない中でも最初のいざこざがありはすれど、今の関係は悪くはないし、シュバルツ家の関係者と思われるセン婆さんとも二人は見知った中だ。
そして、フードを被って顔を見せていない小柄な人が一人。
その人物はフードを取る。
「えっ……!?」
「よろしく頼む」
嘘だろ……
確かに関係性は悪くないかもしれないけど、すでにギルドに入っているはずだ。
そして、もしもそのギルドを敵に回しでもしたら大変なことになってしまう。
まず、真っ先に一人は俺を殺しにくるだろう。
そんな京都弁の女性が頭に浮かぶ。
目の前にいるのは修羅の副団長を務めているはずのオウカだった。
「いやいやいや、オウカは修羅に入ってるだろ」
「辞めてきたよ」
「修羅の団長はなんて言ってたの?」
修羅の団長の龍といえばPKであり実力者としても有名な男だ。
敵対するなんて考えれない。
「団長はお前の決めたことなら文句はないって送り出してくれた」
「そうなのか……」
確かにPKではあるが龍は正々堂々の勝負を掲げていて、漢の中の漢という話も聞いたことがある。
それならば修羅全体としては大丈夫か。
「それとクロツキにぜひ機会があれば殺りあおうぜって言ってた」
うーむ、そんな機会は訪れないので気にしないでおこう。
「ところで湖都はなんて言ってたの?」
こいつが一番の問題でオウカ大好きな変態だ。
素直にオウカを手放すわけがない。
「湖都も最初はそんなギルドぶっ潰すとか言ってたけど、私がそんなことしたら二度と口聞かないよって言ったら一発だった」
あぁ、それは湖都にクリティカルで効き目のありそうな言葉だな。
「あいつはマジモンの変態だったな」
「ずっと泣いてたから、少し可愛そうな気もしたんだけど……」
「二人共、湖都と会ったのか?」
「ここにくるまでに馬車に乗せてもらえたから」
「オウカと離れるときなんて言葉にならない言葉を発してたよ」
うん、想像ができる。
「ということで、問題ないよね」
「いや、確かに問題はなさそうなんだけど、なんでこっちのギルドに入ろうと思ったの? というかどうやってギルドができるって知ったの? あと、三人は知り合いなの?」
わざわざ修羅のような有名なギルドからまだできてもいない弱小ギルドに移るメリットが思い浮かばない。
まぁ、ジャンヌのサポートのおかげで外面は一流になりそうだが……
そして、どうやってこれからギルドを作ると知ったんだろうか?
ギルドメンバー募集なんて出してないだろうし。
三人が仲睦まじく喋っているのも気になるところだ。ここまで湖都に送ってもらったようだし、さっき出会ったったてわけではないだろう。
「うーん、なんでだろ? 楽しそうだったからかな。もちろん修羅にいる時も楽しかったけど団長の背中ばかり追いかけてるのも違う気がしたんだ」
「まぁまぁ、そんなもんか……」
修羅ってPK集団だしメンバーは殺伐としてそうだよな。
そりゃあ、PK集団に比べたらほとんどのギルドが楽しそうに見えるんじゃね。
「ギルドができるからって誘ったのはウチらだな」
「私たちがパートナー探しの旅に出てたらたまたまオウカちゃんと出会ってそれでクロツキさんの話が出て知り合いだってことで力を貸してもらったんです」
「影に潜る黒い竜なんてクロツキしか思い浮かばないからな」
そういえばリオンとルティはディーのようなモンスターを探してたんだったな。
ふむふむ、その過程でオウカと出会ったと。
世の中というか、ゲーム世界というのか、狭いもんだな。
「それで見つかったの?」
「それは後でのお楽しみってやつだな」
「ものすごく苦労しましたから」
どうやら見つかったようだな。
「その辺で良いかの、最後の一人がまだなんじゃが……」
「あぁ、申し訳ない」
「最後の一人はこいつじゃ!!」
ジャンヌは力強く最後の一人を指差した。




