表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/117

66話 無力な不意打ち

 結果からいうとジャックの訓練も壮絶を極めていた。

 死なないギリギリでセバスさんに切り刻まれてはポーションで回復するを繰り返している。


 そもそもなぜジャックが訓練をしているのか分からない。

 もしかしたらシュバルツ家で働くために必要なのかもしれないが、そうでなくともこの訓練は今後活きるはず。


 厳しい部活動をしていれば他のことなんて乗り越えれるの精神。

 まあ、俺がサンドラに何度も殺されて平然としていられるのは社畜時代の副産物かもしれない。

 あの頃は寝る時間も食事をとる時間もなくて睡眠不足に栄養不足で精神がどうにかなっていた。

 確かに死の感覚と痛みは決して気持ちのいいものではないが社畜時代に比べれば何でもない。


 訓練を終えたセバスさんにサンドラの話を聞くことにする。

 というよりはコツ的なものを聞きたかった。


 セバスさんに言われたのは、1日でそれだけできれば十分ですと、そして変わらずにその時に感じたまま体を動かせばいいだけとだった。


 二日目の訓練が始まる。

 訓練の激しさは一層増して訓練というよりは拷問に近い。


「クロツキ、その程度じゃイヴィルターズの2回目の攻撃を防げていなかっただろうね」


 イヴィルターズの2回目の攻撃!?

「どういうことですか?」

「お前がチャリックで死にかけてた時に村に襲撃があったんだよ」

 そんなの初めて聞いた。

 現地人(ローカルズ)と違ってプレイヤーは殺してもデスペナがあるだけで復活したあとはまた好き放題できる。


「余計なことは考えるなよ。 今は強くなることだけに集中しな!! もう、お前が考えてるようなことには対処がされている。私が言いたいのはそこにお前がいても村の人を守ることができなかっただろうってことだ。守りたければ力をつけな!!」


 いろいろと聞きたいことはある。

 サンドラは普通に会話しているが、槍は常に俺の命を奪おうとしてくる。

 俺に会話をする余裕はなく、そして余計な思考をする暇すら与えさせない猛攻がはじまった。


 攻撃は見えているよりも大きく回避せざるをえない。

 そうなると自然に相手から離れるように距離を取りながら槍を繋すのだが、 すぐに距離は詰められる。

 俺に遠距離の攻撃方法があればそれで牽制しながら距離を取れるのだが、ディーはこの訓練に参加することは禁じられている。ないものねだりをしても仕方がない。


 安易に近寄っての攻撃もできない、あの槍が本物なのか陽炎の見せる幻なのか判断できない。


 ふっ、俺と相対していた相手はこんな気持ちだったのだろうか。

 サンドラの戦闘方法は俺の戦闘方法にかなり似ている。というよりも似せてくれている。

 相手にフェイントをかけて惑わし、疑心暗鬼に陥らせる。

 まさに今の俺の心情そのものといえる。

 恐怖は感じないが、どうしようもないという絶望感は漂ってきてしまう。

 だが諦めることはしない。


 何か手立てを探す。自分にできることで普段とは違うことを試してみる。

 罠を張る……時間はないよな。

 そういえば遠距離攻撃というのなら投郷があったな。


 左手に持つ『赤竜氷牙アグスルト』を影の小窓(シャドーポケット)でダガーナイフに入れ替えて投げる。

 もちろん簡単に槍で叩き落される。

 次に『刹那無常』を出して投げつけ、刹那無常から少しずらすように、影に隠して『赤竜氷牙アグスルト』と『月蝕』を投げる。

 俺の手持ちの武器全てを使っての総攻撃。


「やけになって武器を全て手放してどうすんだよ!!」

 サンドラには影に隠して投げた『赤竜氷牙』も『月蝕』もバレバレでいとも簡単に弾かれて、一気に距離を詰められる。

 だが本命はこっちだ。

 右拳を強く握って殴る動作を行う。

 サンドラとの距離は槍は届いても俺の拳が届く距離ではない。


 サンドラはそう思っているだろう。

 それを宵闇の手套しゅとう繊魄(せんぱく)』が覆してくれる。

 速度を射程に変える能力はナイフを使用していなくても反映される。

 俺の拳が黒い影で伸びて、サンドラの頬を殴る。


 遠距離攻撃としては短すぎる僅か1メートルちょっとの射程はサンドラの槍よりも短い。

 もう少し速度が出れば射程も伸びるが近距離ではこれが限界。

 拳でも使用できるということは蹴りでも使えるが俺は使おうとは思わない。

 そもそも拳だけでも使おうとも思わない。

 今回使ったのはサンドラの思惑を外すのがこの方法しか思いつかなかったから。

 予想通りに初めてサンドラにまともに攻撃を当てることができた。


 サンドラはニヤッと笑みを溢した。

「やるじゃないか、まさか一発入れられるとは思いもしなかった」

 残念ながらまともに顔にヒットしたのにダメージはない。

 これが普段使わない理由。

 射程が伸びても攻撃力が上がるわけではない。

 俺の攻撃力じゃあサンドラにダメージが入るわけもない。


 それでもサンドラはよくやったと褒め、俺はその後に上機嫌のサンドラに一瞬で十回殺されてその日の訓練は終わった。

 結局、まともに攻撃がヒットしたのは一度だけで、この不意打ちも通用しない。


 ずっと実践をしているがサンドラは詳しい説明をしてくれず、俺を殺すと満足そうに部屋を出て行く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング



同シリーズを毎日投稿しているので、ぜひよろしくお願いします!!

もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
― 新着の感想 ―
[気になる点] 改稿前の話が出てますよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ