63話 ギルド創設
六章から七章の間で数ヶ月分を省略していましたが、ご指摘を受けて省略していた部分を書くことにしました。
進んでいた部分の話は後々出てくるので今は少々お待ち下さい。
詳細は活動報告にも書いているのでそちらを読んで頂ければ分かると思います。
もし不明点あれば気軽にご質問お願いします。
分かりづらくて申し訳ないですが、よりよい作品にしたいと思ってのことですので温かい目で見ていただければ幸いです。
では新たに始まる七章をお楽しみください!!
領都レストリア、王国の初期スタート地点の一つで俺が初めてルキファナスの世界に降り立ったのもここだった。
街は初日ほどではないにしろそれなりのプレイヤーが歩いている。
しかし、その多くのプレイヤーは初心者装備で初々しさを感じさせる。
少しプレイして慣れればここを離れ次の街へ旅立つ。
となれば、レストリアに用事でもない限りは戻ってくることはない。
普通は次の街、次の街へとステップアップしていくのがゲームの進め方というものだろう。
つまり初心者プレイヤー達の中に俺のようなガチガチの装備の人間がいればもの凄く目立ってしまう。
多数の視線が俺に向けられ、ヒソヒソと会話をしているのがうっすらと聞こえてくるが詳しく何を話しているのかは分からない。
逆に聞こえなくていいと思っている。
もし、全て聞こえてバカにされるような内容なら俺のハートが崩れ去ってしまう。
しかし、今この場ではそんなことは気にしないフリして堂々と街を歩いて目的地を目指す。
「凄いねクロツキさん」
「何のことだ?」
そう、ジャックと一緒に歩いているためこそこそするのも違うと思って必死にポーカーフェイスで冷静を装う。
「街のみんながクロツキさんを見て凄いって言ってるし、やっぱラフェグもほぼ一人で倒しちゃうクロツキさんは有名な人だったんだね」
「うっ……どうして俺を見て凄いなんて言われてるかは分かるか?」
この凄いというのは現地人、いやこの世界の現地人はもう人間と変わらないからあれだけど、まだ幼いジャックは勘違いしてる可能性がある。
凄いの意味には本当に心の底から凄いという場合とヤバすぎて逆に凄いっていう場合もある。
聞くのは怖いが気にはなる。
「うーん、ラフェグを倒したってことがもう伝わってるみたいで、クロツキさんに近づいたら殺されるってみんな思ってるみたい」
…………。
「またかよ!?」
どうして俺の戦闘が毎回勝手に配信されてるんだよ。
俺も後で見てびびったよ!!
最初はあれが自分だなんて思わなかったよ。
まさに化け物だったよ。
ゲームを始めた当初は目立ちたいとかも若干は思ってたけど化け物になって恐れられるのはちょっと違うんだよ。
「凄いねクロツキさん」
「いやいや、暗殺者としてダメだろ」
そう、暗殺者が目立ってどうするんだろうか。
その後も視線に晒されながらやっと目的地のシュバルツ城に到着した。
ジャンヌは俺を見て爆笑しながら化け物弄りをしてくる。
何を隠そう配信したのはジャンヌだからだ。
イヴィルターズの時もそう。
ちょこちょこと俺を盗撮しては勝手に配信してる。
「勘弁してくれよ。街でどんだけの視線に晒されたと思ってるんだよ」
「いいではないか、チャリックの街を救った英雄なのだぞ」
「いーや、化け物として目立ってるね」
「力を見せつけるのは強者の特権だぞ。それに撮られるのが嫌なら撮ってるやつを注意すればいいではないか」
そう自信満々にいうジャンヌはタチが悪い。
撮ってる人間が見つからないと分かっているんだ。
実際にどれだけ気配を探っても見つけることができない。
単純に俺よりも格上の人間がついてるのだろう。
まぁ、こんなやり取りをしているが俺も本気で嫌がってるわけではない。
今までもジャンヌもとい、シュバルツ家の面々にはお世話になっている。
黒竜のディーを貰えたのもシュバルツ家のおかげだし、アイテムやサポートも良くしてもらっている。
「そのうち見つけてやるよ。まぁ、言わなくても知っていると思うけどチャリックでの仕事は終えました、でいいんだよね」
「あぁ、もちろん、もちろん。予想以上の働きで満足しておる。褒美としてそうじゃな、転職はもちろんなのだが、お主はギルドが作りたいと聞いたが間違いはないか?」
「そうだな、いずれは作りたいと思っている。もしくはいいところがあれば入れてもらいたいと思っている」
「ふむふむ、ではギルド創設に力を貸してやろう。セバス」
「はい、お嬢様。すでに王宮への申請、王都に土地の確保も済んでいて、建設作業に入っております」
「というわけじゃ。お主がマスターとして運営するがよい」
「はっ!? 創設費用に土地代、建設費用は?」
ギルドを作るにはレベル60以上のギルドマスター、その他のメンバーが4人、そしてギルド創設費、ホームが必要になる。
ギルド創設費もそれなりのお金がかかるのだが、何よりもホームに莫大な費用が必要になる。
しかも王都のような立地となるとさらに金額は跳ね上がる。
「気にするな、今回の働きに比べれば安いものよ」
「それはありがたすぎるけど……でも、メンバーもまだ俺一人なんだぞ」
レベル60以上は達成できるので問題ないが他のメンバーが問題だ。
「それも問題ない。4人揃えて、今この城に向かわせてるところじゃ」
「えーっと……いやいやいやいや、知らない人と急にギルドやるなんて、俺はそこまでコミュ力高くないぞ。厳しいって」
「心配するな。全員がお主の知り合いじゃ。それともここまで用意させて断るのかのう?」
いや、たしかに王都にギルドはありがたすぎるし、断る理由もない。
だからこそ逆にここまでしてくれることに違和感を感じる。
「さぁ、お主はまず我にいう言葉があろう。ほれ、ほれ」
「ありがたく受けさせていただきます」
俺は全てを飲み込んでジャンヌの提案に乗ることにする。




