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51話 チャリックの殺人鬼

 情緒あふれる欧風の民家が並ぶ街。

 時間は夕暮れ時、歩く人々はシックなスーツにストローハットを被っていたり、ドレス姿で歩いていたりとお洒落で優雅な気品を漂わせていた。


 街灯に光が入り、人の往来は少なくなっていく。

 昼の優雅さや気品溢れる街並みは夜の街へと姿を変える。

 大通りを歩く一人の紳士に裏道の影から声をかける女性がいた。

「お兄さん、どうだい?」

 薄いドレスから谷間を強調してその紳士を誘惑する。

「いくらだ?」

 紳士は女性に誘われ二人で夜の街へと消えていく。

 あちらこちらで見かけられる光景だ。


 そんな夜の街を支配する娼館が3つある。

 その内の一つ、『シャングリラ』に3人のオーナーは集まっていた。

「今回集まって貰ったのはくだんの件ではあるが、被害者がまた出てしまった。しかも一夜に5人もだ」

 紳士服を着てふくよか、髪は綺麗にセットさせれているがそれはサイドだけ。

 頭頂部分が光を反射させているシャングリラのオーナー、ハリントンは肩を落として事実を告げる。


「5人以上だとっ!? バカな、これで50人を超す被害者の数ではないか」

 老眼鏡をかけた小柄で白髪の老人。

 机を強く叩く彼は娼館「ユートピア」のオーナー、ヘンリーである。


「まぁまぁ、ここで興奮しても仕方がないでしょう。警備隊は一体何をやっているのやら……」

 娼館『アヴァロン』オーナー、バロンはカイゼル髭を触りながら思案する。


 3人が頭を悩ませているのは巷を賑わせている殺人鬼についてだ。

 既に50人以上を殺害していると思われる犯人は未だ捕まらず、被害者の数は増えていく一方だった。

 特に娼婦ばかりが狙われているとあっては他人事ではいられない。

 警備隊だけでは信用もできず、自警団にも犯人について当たらせているがめぼしい情報はない。


「王宮には市長を通じて嘆願書を送ったが、回答は近日中に有力者を送るのでしばし待てだった」

「国の動きなどいつでもその程度ということか」

「期待はできそうにもないな。市長殿もこういった事柄には少し頼りないからな」

「やはり我々がなんとかするしかないのか」

 3人はワイングラスを掲げる。

「理想郷のために」

「「理想郷のために」」


 全く素性の見えない犯人は殺人鬼Xと呼ばれていた。



§



「ここが二つの顔を持つ街『チャリック』か」

 クロツキはチャリックにクエストでやってきていた。

 平穏にモンスター狩りをしていたところジャンヌからとある依頼を受けたのだ。


「クロツキ、初めて会ったときとはレベルも装備も見違えるほど成長したの。つい昨日のように思えてくるぞ」

 ジャンヌは目元を擦って変な小芝居をしている。

 こういう悪戯好きな一面があるのは既に承知している。前の宴で俺をベロベロに酔わせたのもジャンヌだと聞いた。

 まぁ、お詫びでアイテム貰えたから全然いいんだけどな。


 こういう時は今までのパターンで言うとクエストの依頼だな。

 しかもただのクエストではない。

「まぁ、お主も察しはついていると思うが、とある依頼をしたいと思っている。達成した暁には新たな職業を提示してやろう。やってくれるか?」

 ほらね、転職クエストだ。

 モンスター狩りをしていて、レベルが60になったジャストなタイミングで連絡してくるのだから勘の鈍い人間でも気づくだろう。


「もちろん受けますよ」

 ジャンヌも分かっているだろうが、俺は二つ返事で答えた。


-転職クエスト-

『殺人鬼Xの暗殺』が開始されます。

殺人鬼Xを特定して暗殺せよ。


 なんとも物騒なクエストだ。

 殺人鬼が相手の上にそれを暗殺せよとは、なんとも暗殺者らしいクエストともいえるが……


「くだんの殺人は二つの顔を持つ街『チャリック』で行われている」

「二つの顔を持つ街ですか?」

「まぁ、行ってみればその意味も分かるじゃろ。まずはチャリックの市長にでも詳しい話を聞くといい。お主が行くことは伝えておく」

 こうして俺はチャリックに足を踏み入れた。

 もちろんディーも影の中にいる。


 街の感想は歴史ある欧風の街並み。

 まずは市長に話しを聞きに行くか。

 市庁舎へと向かい門番に止められるもジャンヌの使いだとシュバルツ家の刻印の入ったナイフを見せれば建物の中へと通してくれた。

 待合室で待つこと数分、入ってきたのは眼鏡をかけた金髪の女性。

「申し訳ありません。市長はただいま外出中でして……恐らく図書館にいると思うので、すぐに使いのものに呼ばせにいきます。今しばらくお待ち下さい」

「いえいえ、こちらこそアポも取らずにきてしまったものですから申し訳ありません。私が図書館を訪ねてみますよ」

「しかし、いない可能性もあるので……」

「大丈夫ですよ。いなければまた後日お伺いさせていただきます」

「ではこちらをお持ちください」

 カードのようなものを渡された。


「図書館に入るにはこの許可証が必要になりますので、司書の方にこちらを見せれば伝わるようにしておきますね」

 女性は魔力をカードに込めている。

「ありがとうございます」

「あと、これが私の連絡先になります。もし図書館にいなかった場合はご連絡ください」


 さて、図書館の位置も聞いたし向かいますか。

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もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
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