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43話 王国最強

 Bルート第一部隊は困惑していた。

 強いモンスターが出てきたわけではない。

 聞いていた話しでは傾斜は強いが登れないことはないということだったのに目の前にあるルートはほぼ絶壁。

 クライミングできなくはないが物資の搬入はできそうもない。

 そのことを第二部隊に伝えて登頂を開始する。


 目的はボスモンスターの討伐である。

 数千メートルの絶壁を休憩を挟みながら慎重に進む。お陰で今のところは犠牲者はいない。

 絶壁を乗り越えると少し開けた場所があり、はじめてのモンスターのお出迎えがあった。

 ユニオールエイプの群れで中央に倍はありそうな巨大なエイプがいた。


「グランドクロス!!」

 十字に光る斬撃が巨大なエイプにダメージを与える。

「よし、後につづけ」

 聖騎士のあーさーは指示を飛ばす。

 彼はギルド『円卓の騎士団』のギルドマスターであるが、今回のレイド戦に参加しているのは彼だけだった。

 他のメンバーは条件を達成しておらず別のレイドに行ってしまっていた。

 それでも彼がBルートを指揮しているのは今回のレイド戦の中で、いや王国の中で最も高レベルのプレイヤーだからだ。そのレベル86。王国でレベル80台は3人しか確認されていない。


闇斬(ダークスラッシュ)

 光の斬撃に対抗するように黒の斬撃が飛ばされる。

 暗黒騎士のカルだ。彼女もまたレベル82の猛者。


「素晴らしい!!」

 その黒の斬撃を見てあーさーはそう漏らした。

「このレイドが終わったらウチのギルドに来ないか?」

 そしてあろうことかボスと戦闘をしながら勧誘を始めた。

「考えておきます」

 光と闇の斬撃が交差しながら敵を斬り刻んでいく。他のメンバーもきついクライミングで鬱憤が溜まっていたようで、ユニオールエイプに八つ当たりをするように攻撃を浴びせ続ける。

 気づけばあっという間に死体の山が完成した。

「こっからはもう楽なもんだ、もう一踏ん張りして行こう」



§



 Cルートは割と穏やかなものだった。

 道はあまり気つくないし、時折出てくるユニオールエイプは瞬殺している。

 しかし、Cルート隊長の(たつ)は少しつまらなさそうにしていた。

「団長、そないつまらなさそうにせんといてぇな。ドラゴンとの戦闘が待ってるんやで」

 湖都(こと)がタツの喜びそうな話しをするがタツは首を振る。

「コトは分かっていない。団長は一人でドラゴン退治がしたかった」

 オウカがタツの心を代弁する。

「そうなんだよなぁ、こんな大人数で戦うのは性に合わねぇ」

「レイド戦なのだから仕方ない」

 アートマが呟く。


 4人は足取り軽く進むが4人以外のメンバーの足取りは重かった。

 理由はこの4人が有名なPK集団だからだ。

 ギルド『修羅』、ギルドシステムが解放される前から有名だった集団。

 白の特攻服にオールバックの団長(たつ)、重厚な赤と黒の鎧で肌の一つも見せることのない副団長オウカ、着物姿に鞭を持つ湖都(こと)、分厚いローブにとんがり帽子をかぶっているアートマ。

 全員が強者のオーラを放っている。


 特に虎徹、ベルドール、サフランの3人は以前にオウカにボコボコにされていることもあり苦手意識を持っている。

 さらに湖都が親の仇のようにこちらを威圧してくるのだ。


 目的地も後少しのところでこれまでとは毛色の違うエイプが出てきた。

 他のユニオールエイプが白い毛なのに一匹だけ全身真っ黒の毛で目が真紅に光っている。

 ボスモンスターだ。


「あいつには手出すなよ。俺がやる。さぁ、タイマンはろうか」

 タツがボスに指でかかってきなと挑発をかます。

 荒れ狂うようなドラミングの後、一瞬で距離を詰め拳を振り下ろす。

 攻撃を受けたタツの足元が陥没するが、腕一本で完全に防御している。

「こんなもんなのか」

 そうは言ってもタツは防戦一方でボスの連打を受け続ける。


「おいおい流石にまずいだろ」

 虎徹はベルドールとサフランにアイコンタクトをしてタツを助けに行こうと動こうとするが足元を鞭で叩かれる。

「あかんあかん、邪魔したらあかんやろ」

 タツとボスの戦闘に魅入ってる間に周りにいたユニオールエイプの群れが3人によって殲滅されていた。そして3人はタツの戦闘をのんびりと観戦している。


「たっ、助けないの?」

 サフランが声を出すと湖都とアートマが笑う。

「あれのどこが助けが必要に見えんねん」

「湖都に同意。助けなど必要なし」

「えっ、でも……」

 どこからどう見ても防戦一方で手が出てないように見える。


「まっそんなに遊んでる時間もないか。団長、そろそろ終わらせてや」

「おいおいこれがお前にとっての限界だってのか。残念だぜ」

 タツの空気が変わったのをメンバー達は感じた。

 最も変化を感じ取ったのは先ほどまで気持ちよく殴りつづけていたボスのユニオールエイプだろう。

 ただただ小さな人間が振りはなった何の変哲もない1発の拳。

 そのはずなのにボスは死を感じ取っていた。

 野生の勘は正しく、拳を受けた直後に多大なダメージを感じる。

 腹部を見ると巨大な風穴ができていた。

 痛みはなく静かに崩れ落ちて絶命していく。


「これじゃあ、ドラゴンにも期待できねぇかもな」

 修羅以外のメンバーには理解できない。

 武器を何も装備せずただの拳の一撃でボスが沈む。

 普通、拳をメインにする職業でもナックルなどの武器は装備する。

 王国最高レベルの実力に格の違いを感じてしまっていた。

 修羅の団長、喧嘩最強の(たつ)。レベル86。

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