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38話 その姿はもはやモンスター

 振り下ろされた大鎌は小刀『刹那無常』に阻まれ俺の首の寸前で止まる。

 本来のステータスであれば抑えることなど出来ず、首を落とされているだろう。

 俺の体は今、死穢の影の発する黒い靄と同じものを纏っている。

 ギリギリで発動条件を満たした怨恨纏いのお陰でステータスが爆発的に上がっていた。

 死穢の影の力の源は怨念であり、奇しくも俺の使う怨恨纏いと同系統のスキルと推測。


 死穢の影はボスモンスターではあるがユニークモンスターではない。

 オウカと潜ったダンジョンのスケルトンオーバーロード・ヴェルヴァやスケルトンネクロマンサー・フォメレスの方が段違いに強かった。

 大鎌は確かに攻撃力が高く、さらに状態異常攻撃でもある。

 受ければ即死につながる。


 だが当たらなければ意味がない。

 正直、大鎌を使いこなせておらず、万能型といえば響きはいいが全てが中途半端ともいえる。

 死穢の影が大鎌を一つ振るえば10倍以上の斬撃の数で反撃をする。

 徐々に死穢の影の黒い靄が小さくなってきているのが分かる。

 称号の不死殺しがクリティカルに刺さってるな。


 十分削ったところで怨恨纏いの発動時間が迫ってくる。

 核を狙った攻撃。何度か核を狙っての攻撃にはトライしたがさすがに守りが硬く、全て大鎌で防がれていた。

 そして今回も大鎌で防がれた。

 しかし違ったのは大鎌の刃の部分が綺麗に折れたこと。

 小刀『刹那無常』は不変を許さない。

 固定ダメージは生物だけでなく無機物にもダメージを与えていた。

 大鎌で防ぐたびにその耐久値は削れていく。


 死穢の影に表情はなく感情があるのかも分からない。

 ただ、大鎌が折れたことで隙だらけなのは確かだ。

 影の小窓(シャドーポケット)でダガーナイフに持ち替える。

「乱刀・斬」

 無数の斬撃を受けて核はひび割れこそすれど耐久値をまだ残している。

「乱刀・突」

 さらに無数の刺突を浴びせることで完全に核の破壊に成功した。



§



「なんですかあれは……」

 リンは戦闘不能にはなりながらも戦闘区域から脱してリオンとルティの位置まで退がっていた。

「クロツキの奥の手的なやつかな」

「あの状態のクロツキさんを捉えるのは至難の技ですよね。ほとんど何が起きてるか分からないですから」

 二人は圧倒的なスピードのクロツキを目で追うことができず、削れていく敵の姿からその凄さを感じ取っていた。

 しかし、リンはクロツキの動きを目で追うことができていた。

 それは、レベル差もあるが何よりも離れた位置から見ているからこそ何とか目で追うことができ、もしもあの刃を自分が向けられていたなら何が起きてるのか理解しないうちに斬り刻まれるだろうと考えていた。


 スピードもさることながら、その戦闘スタイルにも驚きを隠せない。

 AGI特化ということは防御面は紙のようなもののはず。

 普通は相手の攻撃が当たらないように注意を払って攻撃しては安全圏へと逃げるヒットアンドアウェイが基本なはず。

 それがクロツキはむしろ、より死地へと近づく。

 そして超接近戦で相手の全ての攻撃を紙一重で躱し続ける。

 その胆力たるや相当なものだ。


「凄いですね」

「確かによくよく考えると凄いやつなのかも」

「よく考えなくてもクロツキさんは凄いですよ」

「ほとんどモンスターにしか見えないですけど……」

「めっちゃかっこいいじゃん。私もあんなスキル欲しいな」

「あはは……」

 死穢の影が倒され後に残るのは黒い靄を纏ったクロツキの姿。

 その姿は残穢の影や死穢の影に似ていて別のプレイヤーが見たらモンスターと勘違いしてもおかしくない。


 スキルが切れたようで黒い靄が霧散してクロツキが3人の元へと歩いてくる。


「3人とも生きてて本当によかった。動けそうならこの場から離れよう」

「助かりました。ありがとうございます」

「いやー、マジで死ぬかと思った」

「状態異常の対策をもっとしないといけないですね」

 リンは戦闘中のクロツキの笑顔を思い出しゾッとする。

 クロツキはバトルジャンキーで戦闘になるとスイッチが入ったように人が変わるんだと考えていた。


 4人は墓地から出て王都へと帰る。

 リンとは王都についてすぐに別れ、3人は無言でアイコンタクトを取る。

 とうとうメインディッシュのお時間だ。

 今回のモンスター狩りも全てはこの時のための準備に過ぎない。

 少し、イレギュラーがあってボスモンスターと遭遇してしまったが誰も死なずに本当によかった。

 デスペナルティになってしまうと強制ログアウトされ、それだけ世紀の瞬間が遠のいてしまう。

 3人は三次職なので強制ログアウトの時間は6時間にもなる。


「あとはどこで行うかだけど……」

「じゃあ私たちのホームに行こうよ」

「ホーム……?」

「王都にホームを借りたんですよ」

「ホーム……?」

「まさかクロツキ、ホーム機能知らないのかよ」

「あんまよく分かってない」

「アイテムとかどうしてんだよ?」

「えっ、アイテムボックスがあるじゃん」

 アイテムどうしてるってアイテムボックスに入れてれば問題ないと思うんだけど。


「クロツキさんはミニマリストなんですか?」

「普通はアイテムボックスに入り切らなくなるからホームを借りるか購入するんだよ、アホだなクロツキ」

 そうなのか、俺は今までまともにモンスターと戦闘したのなんて数えるほどしかないからアイテムボックスがいっぱいになるなんて気にもしてなかった。

 確認すると確かにアイテムボックスの8割は埋まっている。


 今までログアウトするときは宿に泊まっていた。

 街中でログアウトしても体はその場に残る。そんなプレイヤーがいても何もしないのがマナーだが、世の中にはPKのような悪人も少なくはない。

 多少のお金は必要になるが安全には変えられない。

 この問題は後日考えることにしよう。

 今はそれよりもやらなければいけないことがあるからな。

 俺はリオンとルティのホームにお邪魔することにした。

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もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
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