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37話 残穢の影

 クロツキ達はリンに助けられてモンスターを殲滅することができた。

 二人もようやく動くことができるようになってきている。

「ありがとうございました」

「いえいえ、困っていたならお互いさま……クロツキ?」

 握手するリンはクロツキを怪訝そうに見る。

「えっ、どこかで会ったことがありましたか」

「すみません。あの動画を見ていたのでつい……」

「あー、あの動画ですか。無断で投稿されたみたいで困ってるんですよね」

「そうだったんですね」

 リンは表面上では冷静ながらも内心、驚きを隠せなかった。

 それはつい最近話題にしていたクロツキとこんな偶然に会うことがあるのか。

 その驚きもあったし、想像していた人物像とのギャップにも驚く。


 動画では黒い靄を纏って不気味なお面をして敵を駆逐していたところから、気性の荒い性格だと思っていたが目の前のクロツキは非常に穏やかで仲間を助けるためにその身を挺するところもリンからすれば好印象だった。


 話をしている途中でリンとクロツキは異変を感じ取る。

 霧が濃くなっていき、おどろおどろしい空気があたりを包んでいく。

 濃くなっていく霧の向こうから不気味な笑い声と共に現れたのは複数の残穢の影。

 そして中央で一際、異彩を放っているのがボスモンスターなのだと理解できた。

 滅多にポップしないはずなのに運悪く遭遇してしまう。

 いや、クロツキからすればリンがいる状態で出会えたのは幸運だったのかもしれない。

 死穢(しえ)の影は残穢の影以上に情報が少ないが、残穢の影の厄介さを考えれば強敵だと分かる。


「クロツキさん!!」

「分かってる」

 死穢の影が手をかざすと瘴気が放たれる。

 その瘴気の範囲は広く、俺とリンは回避できたが後方で回復しかけていたルティとリオンの二人が再び戦闘不能に陥る。


 影達の不気味な笑い声が墓地を木霊する。

「まずは周りから片付けましょう」

 クロツキは苦にしていなかったが残穢の影の攻撃は四次職間近のリンをもってしても厄介。

 攻撃を受ければ動きが止まり、それが延々と繰り返されハメループとなってしまう。

 リンは槍を使って的確に残穢の影の核を打ち砕き、クロツキもリンの指示通りに残穢の影を片付けていく。


 残すも死穢の影が一体だけになったところでリンが一気に仕掛けにいく。

 リンの職業は槍術士、人気の職業ということもあり槍を使うプレイヤーは多い。

 その中でリンの槍捌きは1、2を争う熟練度を誇る。

 特にランキングのような指標があるわけではないが出会った槍使いを見てリンはお粗末だと感じていた。

 しかし慢心はなく、己を鍛えるため強者と戦い技術に磨きをかけてきた。

 そんなリンの最強の攻撃。

「噛み砕け『リュウノアギト』」

 高速で放たれた刺突の槍先に魔力で作られた竜の頭。

 竜は口を大きく広げて敵を噛み砕かんと迫る。


 死穢の影は向かってくる槍に対してなおも不敵な笑みを浮かべる。

 竜が噛み付いたと同時に甲高い音が響く。

 死穢の影は手から黒い靄を発生させアギトから身を守っていた。

 驚くべきはその硬度、リュウノアギトは黒い靄に噛み付いているが噛み砕けていない。


 黒い靄が一気に拡散するとリュウノアギトは逆に砕かれ、槍先に大きくヒビを与えた。

 さらにそのまま、リンを包み込もうと動く。

 リンは間一髪で避けたかに思えたが、左腕が黒い靄に触れ黒く変色して、だらんと左腕がたれる。

「大丈夫か?」

「左腕は使い物になりませんね」

「どうしたものか……」

「隙をついてクロツキさんだけでも逃げてください。もうまともに動けるのはあなたしかいない」

「何をいってるんだ。最後までやってみるさ」


 死穢の影は右手を出すと拡散した黒い靄が集まっていく。

 さらに、先ほど残穢の影を倒した時に霧散していた靄も同時に集まっていく。

 靄は圧縮され徐々に形を作っていく。

 漆黒の大鎌が一度振るわれれば墓石がバターのように斬られ大地が裂ける。


 状態異常攻撃だけでなく強力な物理攻撃を獲得したようだ。

 しかも厄介なのは死穢の影本体は人型はしているが黒い靄が集まった気体で移動する時や攻撃する時は靄が拡散して動きが読みづらい。

 そして宙に浮いて縦横無尽に大鎌を振るってくる。

 距離をとると瘴気が襲ってくる。

 万能タイプな戦闘スタイル。


 死穢の影が攻撃するたびに瘴気が場に残り、体に影響を与えてくる。

 俺はまだそこまでだが、リンは顕著に動きを悪くしている。

 何度か攻撃を避けているとリンがとうとう膝をついた。


「リン……」

 聞くまでもないが言葉が先走る。槍を杖代わりに立とうとしているが戦闘不能なのは明らかで、黒い変色は毒のように全身にまわり、見ていて辛くなるほどだ。

「クロツキさん、まえ……」

 しまった、膝をつくリンに目をやっていて注意力が散漫になっていた。

 瘴気の渦が体を包んでいく。

 体の力が抜け、立っていることはできそうもない。

 状態異常に高い耐性がある俺ですらこの有様なのか。

 ダメージこそ出てないがこの場から動けない。

 俺も膝をつき、上を見ると死穢の影が大鎌を振りかぶっていた。

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同シリーズを毎日投稿しているので、ぜひよろしくお願いします!!

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