36話 トレヴィネ大墓地
あーあ、リオンは爆発に巻き込まれて死んでしまった。
あんなにここにくる前ルティに注意されていたのに。
火炎蜥蜴に似たモンスターの爆発蜥蜴は体力が多く、絶命時に爆発を起こす。
色も少し違うので焦らずに見てれば気付くもんなのに。
はいっ、手を合わせて黙祷。
「おいっ、クロツキ何を手を合わせてんだよ。パーティなんだから生きてるの分かるだろうが」
黒煙を払いながらリオンが出てきた。
リオンの言う通り、パーティを組めば味方のHPは確認できる。
もちろん確認してギリギリHPを残して生きてるのは知ってたけど、何となくノリで手を合わせただけだ。
「てかっ、なんであの爆発で生きてんの?」
「新しいスキルのおかげかな」
妙に自慢げだしよっぽど凄いスキルなのか。
しかし、あんま聞きすぎるのもマナー違反だしなぁと思ってると自分から語り出してくれた。
俺たちはポーションを飲みながら会話をする。
「なんと未だ判明されていないレア職業、義賊になったときに獲得したスキルなのさ」
確かに義賊は聞いたことのない職業だが似合わなすぎる。
初心者狩りをしていた奴のなれる職業とは思えない。
この間のイヴィルターズとの戦闘が反映されたんだと思うけど。
「どんなスキルなの?」
「聞きたいか、聞きたいだろ。実は義賊の施しってスキルでな、相手から盗んだものを付与できるんだよ。つまり火炎蜥蜴の炎耐性を盗んで自分に付与したってわけさ。そのおかげで生き残れた」
なかなかに強力なスキルだ。大抵は得意な属性は耐性も同時につく。
つまり相手の得意攻撃に合わせた耐性が付与できる。
しかし、変換できる容量が意外と少なく使いづらいとルティが捕捉を入れてくれた。
現に炎耐性があっても瀕死であることに変わりはないので納得だ。
続けてなぜかルティも職業や手に入れたスキルの紹介を始めた。
「私は黒巫女に転職しまして、魔眼のスキルを手に入れました」
魔眼は魔力の流れを見ることができて、どこに魔法を撃てばどのような効果が及ぶかが分かるらしい。
それであるとき、闇霧と黒雷の組み合わせを見つけたようだ。
なぜかペラペラと喋ってくれるがそんなに話しても大丈夫なのか不安になってしまう。
スメラギが言っていたのはこういうことなのか。
俺も気をつけるようにしよう。
ただ、相手に喋ってもらって自分が喋らないのもあれだし、俺も職業やスキルを教えた。
リオンもルティも暗殺者がカッコいいと目を輝かせていたな。
パーティを組むとステータス画面がいくつか変わる。そのうちの一つが分配というボタン。
これはパーティを組んでる間に倒したモンスターからドロップしたアイテムや経験値をパーティ内の貢献度によって分配してくれる機能。
そして一気にモンスターを倒したことで欲しかった素材の二種類が揃った。
火炎蜥蜴のフェザーテール×10、フレイムパピヨンの鱗粉×5、一人では揃わなかったがいくつかのアイテムを交換と足りない分はルティに譲ってもらった。
ルティが貢献度は最も高く、アイテム量が一番多く、譲ってもらう代わりにドラゴンの孵化の瞬間に立ち会わせることになった。
もう火山地帯には用はなくこの日は一旦街へ戻りログアウト、翌日もう一つの素材を集めに行く約束をする。
翌日、太陽はまだ真上に位置しているがここの雰囲気は暗く、怪しげな霧が漂う。
トレヴィネ大墓地、かつての戦場跡地に跋扈する死者を鎮めるために作られた墓地だが不気味さは拭えていない。
そもそも跋扈する死者はいなくなったと言ってるがしっかりとアンデット達が歩いている。
過去、鎮めるために浄化に当たった聖職者が不正で成り上がったヤブ聖職者でスケルトン種のみが浄化されただけでそれ以外のアンデットは健在だ。
アンデットに健在という言葉が合ってるのか分からないが。
王国もこの場所が浄化されていないのは認知しているが冒険者達からするといい稼ぎ場所になるため反対運動があって完全浄化には至っていない。
俺は早速、それにあやかるわけだが……
「グールは任せてくれ」
「じゃあ、リビングアーマーもーらいっ」
「私はウィスプをやります」
グールは生命力が高く、複数攻撃しなければいけない。
リビングアーマーは防御力が高い。
ウィスプは物理攻撃がほぼ通じない。
それぞれの得意分野を活かして戦闘を行う。
これはもの凄くパーティ感が出ている。
だが、お目当てのモンスターはこいつらではない。
火山地帯の時と違ってあまりスキルを使わずともモンスターを倒せるので楽だ。
これは俺たちの職業が噛み合っている。
多くのモンスターが状態異常を使ってくるが俺たちは耐性があるためほとんど効かない。
モンスターを倒しながら先へ進んでいくとようやく出てきてくれた。
戦場の怨念が黒い靄となり人の姿を形作っている。
実はこいつについてはあまり情報がなかった。
モンスター名は残穢の影。
残穢の影は広がり俺たちを包み込むように展開する。
闇雲に攻撃しても一切通じることはない。
冷静に核をみつけそれを砕くと靄は晴れて倒したとカウントされる。
特に攻撃をしてくるわけでもなく、俺は弱いなと思ったがそうでもなかったようだ。
後ろにいた二人が膝をついている。
パーティ画面を見ると、恐怖の状態異常。
耐性があるはずの二人に効き、攻撃らしい攻撃がないことを鑑みると状態異常特化のモンスター。
「二人とも下がっていてくれ」
まだまだ残穢の影は奥から現れる。
二人には残穢の影に触れない位置に移動してもらいたいが、行動ができる状態ではないか。
残穢の影だけならダメージは負わないがここに通常のモンスターが組み合わさるとどうしようもない。
「くそっ……」
四方からグール、リビングアーマー、ウィスプが近づいてくる。
「手助けするよ」
颯爽と現れた少年が槍を振るうたびにモンスター達が蹴散らされていく。




