35話 火山地帯
「すげー、とうとうギルド機能が解放されたって」
「でもギルドに入るのはまだまだ先になりそうだね」
二人が話をしているギルド機能はつい先ほど解放されたばかり。
ギルドを作るにはレベル60以上かつ初期メンバーとして5人以上が必要でそれなりの資金もいる。
レベル60となるとストレートに行けば四次職到達でいいが、今はそのクラスに近い人は多くない。
相対的にギルド数が少なく入るだけでも難しそうだ。
ギルドについては先の話になりそうだ。
俺は今リオンとルティとパーティを組んで卵の孵化に必要な素材を入手しに来ている。
二人の目的は単純にレベリングらしいので狩るモンスターは俺に合わせてもらった。
必要な素材は計三つ。
まずはそのうちの二つが手に入る火山地帯へ向かう。
「あちぃーーー」
「火山地帯らしくなかなかの熱気だな」
「そうですね、ダメージが入らないギリギリみたいです」
まだ麓でこの熱気。
俺は環境適応のスキルを持っているがスキルランクが低くて多少ましになった程度だ。
火山内部のダンジョンに入るには熱耐性のスキルか装備が必要になるだろう。
しかし、今回はそこまで行くつもりはない。
俺たちのレベルでは太刀打ちできず、目的のモンスターは麓にポップする。
「出てきたよ」
溶岩の影から出てきた複数の蜥蜴モンスター。
手首、足首と尻尾の先が燃えている、火炎蜥蜴が目当てのモンスターだ。
火炎蜥蜴の一匹が口を大きく広げて炎を吐いてくる。
「闇槍」
炎はルティの放った闇の槍と相殺する。
その間に俺とリオンは火炎蜥蜴に近寄り攻撃を開始する。
「乱刀・斬」
50以上の斬撃が火炎蜥蜴の一匹を斬り刻む。
「バンデッドスイング」
リオンの振り下ろした武器はナイフというには大振りなククリ刀。
それが火炎蜥蜴を一刀両断する。
火炎蜥蜴の攻略として即殺がベスト。
のんびりと戦闘しているとどんどんと仲間を呼び寄せてしまう。
俺たちは持てるスキルを使用して全力で狩りまくる。
とりあえずは一帯の火炎蜥蜴を処理して一安心といったところで休息を取る。
俺とリオンは次のスキル使用までのチャージ待ち、ルティは瞑想とポーションを使ってMPを回復する。
素材が必要な個数に届かず、再び火炎蜥蜴を狩りに行こうとした時、山の上から悲鳴が聞こえ近づいてくる。
「ぎゃあーーー」
「お前らふざけんなよー」
「俺のせいじゃねぇだろ」
「足引っ張りやがって、デスペナ受けてんならいえよ」
あー……目の前で4人パーティがやられてしまった。
中にはアメノマヒトツの前で一悶着を起こしていた男女ペアも混じっていた。
デスペナを受けた男はステータスが下がった状態で狩りに出てご覧の有様だ。
光の粒子が儚く散っていく。
後に残ったのは引き連れてきた多くのモンスター。
火炎蜥蜴の群れにフレイムパピヨンという蝶のモンスターも複数いる。
全部で20体以上はいるだろうか。
「はぁぁぁぁ、まじで最悪なんですけど、クロツキ一人で時間稼げる?」
「作戦でもあるのか」
「まぁね」
「引き受けた」
「ルティ準備よろしく」
俺はモンスター達に少しずつだけ攻撃してヘイトを集める。
俺へ一斉に火炎蜥蜴の吐き出した炎が襲ってくる。
しかも、先ほどよりも強力な炎が。
原因は空中を飛ぶフレイムパピヨン。
羽根を羽ばたかせるたびに鱗粉が舞い散り、その鱗粉が炎の威力を上げている。
まっ、避けることに専念すれば特に問題はない。
全ての攻撃を回避し続ける。一度も炎は俺の体に触れてはいない。
それでもHPが減っていく。
炎の直撃は避けても高熱のせいでダメージを受けてしまう。
そこまで高いダメージではないが、チリも積もれば俺の低いHPには十分な脅威となっている。
「まだかっ?」
「もう少しだけ待ってください」
「ちっ、しまった」
モンスターの中央に陣取り避けていたが、攻撃を大きく回避しすぎてしまった。
端の方の火炎蜥蜴のターゲットが俺から二人へ変わり、二つの炎が吐かれる。
「ダブルスラッシュ」
リオンは二連撃で二つの炎を相殺しにいくが多少の威力を抑える程度でリオンが炎に包まれる。
その甲斐あってルティには届いていない。
「準備できました」
「アチィィィ、やっとかクロツキ、その場を離れな」
リオンは所々を黒焦げにしながらなんとか生きていたようだ。
俺はすぐにその場を離れると、黒い霧がモンスター達を覆っていく。
これは闇霧?
たしか、視界を奪う魔法のはず。
この隙に逃げるのか。
「全てを覆い隠せ闇霧、伝って引き裂け黒雷」
ルティの指先から一筋の黒い電気が霧へ向かって飛ぶが、それはあまりにも小さな小さな電気だった。
しかし、霧に触れた瞬間、無数に分かれて凄まじい音と稲妻が霧の中からほとばしる。
霧が晴れていくと中には黒焦げの火炎蜥蜴と地に落ちたフレイムパピヨンがいた。
なんとか生き延びたのは火炎蜥蜴の一匹だけだった。
「へぇ、あれを喰らって生きてるなんてやるじゃん。私がとどめを刺してやるよ」
リオンがククリ刀を振り下ろす。
「ダメだよ!? リオンちゃん」
ルティの声も虚しくククリ刀は火炎蜥蜴を一刀両断した。
いや火炎蜥蜴に似た蜥蜴を両断したのだ。
その蜥蜴の絶命と同時に大爆発が起きる。
あたりが黒煙に包まれるが俺とルティは無事だがあの爆発ではさすがに生きてないだろうな。
俺は手を合わせて黙祷する。




