31話 いたずらごころ
宴の翌日、ジャンヌはクロツキに頼まれたドラゴンを入手するべく手配をしていた。
断らなければいけなかったにも関わらず挑発されつい熱くなり受けてしまった。
その瞬間は大勢に見られていたし、一度受けたものを実はダメでしたなどシュバルツの名に泥を塗るような真似はできなかった。
しかし、それでも簡単にいく問題ではない。
「すまぬがそういうわけでドラゴンを来訪者に渡すことになってしもうた。調整を頼めるかの」
「ジャンヌさん、また先出しするんですか? さすがに怒られますよ」
「そこをなんとか、お主にしか頼めんのじゃ」
「社長に確認をとってみてからですよ」
「さすがはたぬきじゃ」
なんとか通話先の相手との会話を終え、一つ大きなため息をつく。
「はぁ、どうしてこんなことになったんじゃ。貸しばかりできるなど恐ろしいわ」
「全てお嬢様の撒いた種ではないですか」
セバスは顔を俯けるジャンヌへ呆れ顔を向ける。
「まさかこんなことになるなんて思わんじゃろ」
「これに懲りたらもう少し落ち着いた姿を見せていただきたいですね」
実はクロツキが酔っぱらって暴走した背景にはジャンヌの影響が大いにあった。
それはほんの些細ないたずら心。
ジャンヌは村での戦闘を監視していた。
もちろん現場で直接ではなく、モニター越しにリアルタイムで見ていたのだが、クロツキが普段自分と接するときとは全く違う顔があるのだと見ていて感じた。
普段はどうにも他人行儀で面白みがない。
クロツキの違う側面を見ようと思いつきで開催したのが昨日の宴。
そこでとった手段が酔わせるというなんとも古典的な方法でクロツキに渡すお酒だけ度数の高い特別なものを混ぜていた。
クロツキの暴走している様子を録画しながら作戦通りだと内心でニヤニヤしていたら、ドラゴンを渡すことになっていた。
どこからどう見てもただの自業自得。
「ふむぅ、それにしてもクロツキはあんな状態じゃったから分からんでもないが、リオンとルティはシュバルツコインをやったというのに反応が薄くなかったかのぅ」
「それは当然でございますよ。まだ正式にシステム解放されているわけではないので知らないのは当然でございましょう。あれもお嬢様が先出ししたものですしね。良かったのですか? 勝手に4枚も配布して」
「……」
その事実に気付いてなかったジャンヌはシュバルツコインを自信満々に渡していたことを後悔する。
「なぜいってくれないんじゃ。まーた貸しができるではないか」
「まぁ、他の方も配布しているらしいのでそこまでは心配しなくても大丈夫かと。解放も近いようですから。それよりもまずはクロツキ様への謝罪が必要でしょうね」
「うむ、そっ……そうじゃな」
「どうやら起きられたようですね」
少し待つと扉の向こう側にクロツキの気配を感じる。
「入っていいぞ」
「失礼します」
ジャンヌが謝ろうとしたとき、クロツキが飛んだ……
「申し訳ありませんでした」
ジャンピング土下座に圧倒され、そこからは終始クロツキのペースで謝る隙を与えてくれず、クロツキは王都へと旅立った。
「謝罪はまた後日にしようかの……」
「そうですね」
いつもは冷静沈着で何事にも動じないセバスでさえもクロツキの土下座には圧倒されていた。
「我も練習しておこうかの……あれ」
本気の謝罪というものを見せられたジャンヌは二つのことを謝罪しなければいけない事実に次にクロツキに会うのが少し億劫になる。
酔わせたことともう一つは録画していたイヴィルターズとの戦闘を無断投稿していたこと。
§
【LFO】PK晒しスレ
ここはPKするようなカスを晒す場です。
次スレは自動で立ちます。
382:名無しの戦士
よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ
イヴィルターズ壊滅
383:名無しの魔法使い
動画みたけど見事なもんだったね
384:名無しのエルフ
まさか一人でやるとは……
385:名無しの戦士
いや、流石に一人ではないだろ
別からの魔法も入ってたし
386:名無しの魔法使い
あの黒いもやもやはスキルだよな
物凄くおぞましかったんだけど
387:名無しの弓使い
それでいうと囚われていたプレイヤー?
あの人が使ったスキルもすごくなかったか
389:名無しの戦士
あれは盗賊の一定時間アイテムを盗むスキルだったはず
390:名無しの魔法使い
ということはあの女性は盗賊か
391:名無しの戦士
男の方は暗器使いの上の殺し屋だと思う
392:名無しの弓使い
さすが名前負けしてないな
393:名無しの戦士
ただあんな黒いもやのスキルはβテストではなかったはずだから、調整入ったのかもね
394:名無しの魔法使い
暗器使いが当たり職業の可能性
395:名無しの弓使い
マ・ジ・デ……ハズレ職業同士で友情芽生かけてたのに
396:名無しの戦士
実際弓使いも何かしらの調整入ってるんじゃね
397:名無しの弓使い
今のところはない
398:名無しの魔法使い
レベル上げするしかないな
399:名無しの弓使い
そのレベル上げが厳しい問題
400:名無しの鍛治師
ところで誰も触れないなら俺が言ってやるけど
壊滅したっていっても、デスペナあけたらすぐに戻るんじゃね
401:名無しの弓使い
あーあ、触れないようにしてたのに
402:名無しの戦士
そうなんだよな
結局デスペナがあるだけでそれ以上の何かがあるわけでもないし、運営にはがっかりだな
403:名無しの魔法使い
まぁまだ希望はあるぞ
運営曰く、リリース1ヶ月イベントの後に大型アプデを入れるらしいから、そこで改善されるかも
404:名無しの戦士
マジで二度とログインできないようにして欲しい
405:名無しの魔法使い
もし対処がなかったら自治グループ的なの作るしかないよな
406:名無しの弓使い
それはありかも
407:名無しの戦士
なら俺が作るわ
408:名無しの魔法使い
そうなったら手伝うわ
409:名無しの弓使い
あの殺し屋も誘わないとな
410:名無しの戦士
自分たちでこの世界を守るしかない
411:名無しの魔法使い
早めに動いた方がいいなら、もう人集めしようかな
412:名無しの戦士
そうだな、運営の対応がどうなるかわからないけどとりあえず作っておいて、啓蒙活動でもするか
412:名無しの弓使い
サンセーイ