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30話 黒歴史

 宴から一夜明け、目を覚ますとベットの上にいた。

 見覚えのない部屋、ふかふかの高級布団、天井にはシャンデリア、壁にはよくわからない絵画が飾られている。

 どうやら高い確率でここはシュバルツ家のどこかだ。

 昨晩の記憶がほとんどないのが証拠だ。

 徹夜明けの俺はログアウトせずに寝落ちしたらしい。

 そしてここに運ばれたと……

 微かにだが記憶も蘇ってきた。


 あれは確か、村人達に勧められ飲んで飲んで飲まされていたな。

 ジャンヌが功績を称え恩賞を渡すときにはすでに超酩酊状態だった。


「まずは村の代表である村長、前に」

「はい」

「今回の件で最も被害を受けながらも諦めずに無頼漢共の殲滅に助力をしたとして、金一封と家畜100匹を贈呈する」

「ありがたき幸せ、感謝いたします」

 村人達から拍手と歓声が飛ぶ。

 しかしおかしい、村長も似たような量を飲んでいたのに何故か足取りはしっかりとしていて酩酊状態には思えなかった。


「続いてルティ」

「はい」

「大規模魔法のサポートという緻密で繊細な作業、その重圧に負けずによくぞ最後まで務め果たしてくれた。金一封とシュバルツコイン一枚を贈呈する」

「ありがとうございます」

 村人達から先ほどよりも大きな拍手と歓声が飛ぶ。

 ルティはそれほど飲んでいなかったようだし酩酊状態になっていないのも頷ける。


「続いてリオン」

「はい」

「囚われながらも村人の盾となり、反撃のチャンスを窺い見事勝負を決める場面での活躍にシュバルツコイン一枚と金一封を贈呈する」

「ありがとうございます」

 村人からの歓声も大きく特に子供から人気があるようだ。

 それにしてもいつもとは全く違う。

 これが猫をかぶるってやつなのか。


 そして俺は衝撃的な光景を目の当たりにしたのを思い出した。

 前3人は呼ばれる前にセバスさんが何かを渡していたのだ。

 あれは恐らく状態異常回復のポーション。

 どうして俺には渡してくれなかったのか……

 そのせいで俺の黒歴史が確定した。


「クロツキ、前へ」

「はーい」

 俺が呼ばれ村人達は今日一番の盛り上がりを見せた。

「クロツキ様、ありがとうございます」

「英雄様の誕生だ!!」

 わけも分からずふらふらと前へ歩いていく。


-称号獲得-

英雄の称号を獲得しました。


 何かのアナウンスが流れるが気にならない。

 呼ばれた名前が30年呼ばれ続けた名字でなかったら気付いていなかったかもしれないほどに思考は低下していた。


「イヴィルターズ殲滅から救出まで今回の一件の特別功労賞だ。誇るがいいクロツキ。そして村の民よ、今ここに英雄が誕生したぞ!!」

 われんばかりの歓声が酩酊状態の脳に響いていたのはよく覚えている。

「シュバルツコイン2枚に金一封と何か欲しいもの一つを可能なものであれば用意して贈呈しよう。装備やアイテムなど何かあるか?」

「……おれは……ドラゴンが欲しい!!」

 欲しいものはと聞かれて、あの時のドラゴンに乗っての飛行が脳をよぎりそれをそのまま口走ってしまったようだ。

 だってファンタジー世界といえばドラゴンは定番だろ。

「ど、ドラゴンか……!? しかし、それは……」

 ジャンヌにとってまさかの返答だったらしく珍しく困惑した表情をしていた。

「あーあ、できないのかぁ。天下のシュバルツ家様でもドラゴンは無理なのかぁ」

「なっ、なんだと……いいだろう。そこまでいうなら用意してやろうではないか」


 そこまでがなんとか思い出せるギリギリだ。

 とりあえずベッドから起きて廊下に出てみる。

 さすがはゲーム世界、二日酔いはないんだな……

 よく眠れたらしく頭が冴えているだけに昨日の出来事は心へのダメージがでかい。

 できれば忘れたままでいたかった。


「おはようございます、クロツキ様。ジャンヌお嬢様はこちらでございます」

 廊下に出るとメイドが待機していたようでジャンヌの元へと案内してくれる。


 廊下を数分歩き……ってどんだけ広いんだよ。

 ここまで来ると不便しか感じないだろ。

 ジャンヌがいる部屋へ辿り着く。

「入っていいぞ」

「失礼します」

 俺は扉を開けてすぐさまジャンヌの位置を確認。

 ジャンプして空中で正座の姿勢を整えジャンヌの目の前で着地からの額を床に押しつける。

 開口一番のジャンピング土下座。

「申し訳ありませんでした」

「あっあぁ、まぁそんなに気にするな。昨日は無礼講というやつだ……ところでドラゴンの件なのだが……」

「本当に申し訳ありませんでした。もちろん無理なのは承知しています。さらにいえばいただいた恩賞も返還させていただく所存です」

「いや、準備ができたと報告があったから受け渡しについて話をしようと思ったのだが……」

「えっ……!?」

 顔を上げると困惑したジャンヌの顔があり、後ろで控えるセバスさんはにこやかに笑っている。


 どうやら本当に許してくれたようでドラゴンの受け渡しの話を聞くことになった。

 なんと心の広いお方なんだ。

 受け渡しできるのが王都グランシャリアでさらに俺が当初いたのも王都なので送ってくれるとのことだ。

 なんか特定のモンスターの売買や受け渡しは王都でしかできない法律があるみたい。

 もちろん馬車でのんびりと王都へ向かうのではなく、またまたドラゴンに乗せてくれるってさ。

 最高すぎだ!!


 そんな手配まで既に済ませてるなんて、と思ったがもう昼過ぎでした。

 ルティ、リオン、村人達は朝には行動を開始してそれぞれ出発したってさ。

 昨日の黒歴史に追加で一人だけ昼過ぎまで眠るという汚点まで追加された。

 いや、逆に考えればそれがあったからドラゴンが手に入るんだ。

 普通の思考ならそんなこと口走るわけがない。

 ポジティブにそう考えて、ドラゴンを楽しみにしよう。

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もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
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