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23話 暗殺者

 大方の話は理解できた。

 しかし、疑問なのは拉致監禁されている点である。

 プレイヤーは死ねばリスポーン地点に戻る。

 デスペナルティはあるものの自殺もできない状態なのか。

 麻痺の話を聞けばそういったもので自殺できないようにしていることもあるのかな。


 後はイヴィルターズの目的はなんなのかだが、これはリオン本人から情報があるらしい。


 拉致監禁されてる本人からってどういうこと!?

 ってなるがログアウトができないわけではない。

 リオンとルティは姉妹でリアルで直接話ができるのでそこで状況を教えてもらったらしい。

 まず、状態異常にさせられて自殺ができずに地下の牢屋のような場所に監禁されている。

 そこには大勢の村人が監禁されている。


 そしてイヴィルターズが監禁する目的はスキルを監禁している人間に使用して熟練度を上げること。

 どうやらこれの効率がいいらしい。

 殺し屋の練習では本物の人間を使うと映画か何かで見たがそんな感じなのだろうか。

 それにしてもゲームとはいえ胸糞が悪い。


 公式が自由にどうぞというスタンスであってもやはり受け入れることができない。

 これは個人的な感想でPKや迷惑行為で楽しんでる輩がいるのも個人の趣味と言って仕舞えばそれまでなのだが。


「分かりました。出来る限りリオンと村人の救出に尽力します」

「ふーん、村人もね……」

 ジャンヌが意味ありげな目を向けてくる。

 おかしなことは言ってないはずなのに。

「クロツキ様、村人は現地人(ローカルズ)ですよ、来訪者(ビジター)であるあなたには助けるメリットがあるのですか?」

 セバスさんの補足にも慣れてきたな。

 どうやらジャンヌは俺が現地人(ローカルズ)を助けると言ったことが引っかかっているようだ。


 確かに普通のゲームなら助けない選択肢もあるかもしれない。

 でもこのゲームはあまりにもリアルすぎる。

 リオンを助ける際に村人を見てしまえば助けたくなるだろう。

 それにしてもそんなことを現地人(ローカルズ)のジャンヌがいうのも不思議な話だ。


来訪者(ビジター)だからこそですよ。それにどうせ向こうに行って助けを求められたら俺は助けると思います。それなら最初から助ける覚悟で準備して行った方がいいと思ったので」

 来訪者(ビジター)なら死んだって甦れるんだ。

 それに比べて現地人(ローカルズ)は死ねば終わり……


「ふむ、そうか。それなら救出の難易度は一気に上がるな」

 確かに村人全員を助けるとなるとかなり難しいだろう。

 それでも出来る限りのことはしたい。


「元々はリオン一人を殺して逃げてもらおうと思っていたが、村人を助けるとなるとイヴィルターズの殲滅が必要になるな。残念ながら我々は助けに行くことはできない。それでも助けるというのか?」

 普通の救出のように考えずにリオン一人を殺せば死に戻れるからそれでよかったのか。

 そこまで考えていなかったが、それで難易度が上がるということね。

 まぁ、助けるつもりしかないし。

 元から現地人(ローカルズ)のジャンヌやセバスさんが助けてくれるなど期待もしていない。


「はい。気持ちに変わりはありません」

「セバス、準備を手伝ってやれ。確実に勝てるようにな」

「はい、仰せの通りに。ではいきましょうかクロツキ様」


 セバスさんに連れてこられたのは城の中にある訓練場。

 広く何もない殺風景な部屋にメイド達の手によって殺伐としたアイテムが次々と運び込まれてくる。

 それは様々な形のナイフに始まり、手裏剣やクナイ、煙玉、仕込み杖、指輪に刺のついたものや鉄扇、爆弾のようなものに糸、果てには小さめの銃まで出てきた。

 鈍くても気付くだろうが全て暗器だ。


「一通り運ばせましたが今回の戦闘ではこれらのものが役立つでしょう」

 セバスさんが数あるアイテムからピックアップしてくれたアイテムの使い方を学ぶ。


 まずはナイフ、俺の主力の武器であるが、それならばセバスさんに貰ったダガーナイフもあるし、ユニークアイテムの小刀『刹那無常』もある。

 それらは近接用の武器となるがセバスさんが持っているのは中距離に対応した投擲ナイフだ。

 セバスさんが投げれば人型の模型の額と心臓に無数のナイフが刺さる。


「基本的には使い捨てになりますが、拾えば再利用することも可能ですし持っていて損はありません」

 中・長距離のこういったアイテムではDEXが重要になるが俺の職業の暗器使いはそこに補正がかかるので過信はできないながらも使える場面は多そうだ。

 ただし、防御の高い敵には攻撃が通らない点は変わらないので後衛への攻撃が多くなりそう。


「次はこれですね」

 セバスさんは手袋をはめピアノの鍵盤を弾くように指を動かすと微かに目で見える糸が模型の方に向かっていき模型はバラバラに崩れる。


「これは難しいですね……」

 俺も手袋をはめて試してみたがまるで思い通りに動かない。

「やはり今のクロツキ様では難しいですか」

 操糸術といって直接糸を操り攻撃をしたり、相手を捕らえたりすることもできるが、俺のDEXでは不可能だった。

 代わりに糸を使ってのシンプルな罠の張り方を教えてもらった。


 そして最後に教えてもらったのが毒煙玉。

 これは本当に簡単で投げるとそこら一帯が毒の煙に包まれる。

 どういう風に使うのが最も効率的に相手にダメージを与えれるかを教わった。


「少しばかり詰め込みましたがクロツキ様は非常に優秀で助かりました。これならば十分に勝算はあるでしょう。既にルティ様は現地で下準備を始めているので合流ください」

 ほぼ徹夜で叩き込まれたが不思議と辛くはなく、むしろ楽しさすら感じていた。


「下準備ですか? 分かりました」

 何をしているのか気になるが合流してから聞けばいいか。

「それとクロツキ様おめでとうございます」

「……?」

 何を言っているのか分からなかったがすぐにメッセージが表示されて意味が理解できた。


-クエスト-

『罪を犯し者への裁きの準備』を達成しました。

『暗殺者』へ転職が可能です。転職しますか?


 いつの間にかクエストを達成したことになっていたようだ。

 しかも中々に大仰なクエスト名をしている。

 もちろん俺はイエスを選択する。

 リオンや村人には申し訳ないが実は少しだけ、イヴィルターズとの戦闘にワクワクしている自分がいる。

 今の自分にどれだけできるのかは分からない。

 しかし、できる限りの準備はできた。

 クエスト通りに言うならば罪を犯し者への裁きに向かうか。

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もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
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