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20話 相乗り馬車

 怒涛だったダンジョンクリアの日から一夜明け、ログインする。

 うーん、澄んだ空、暖かいお日様の光、なんともいいゲーム日和です。

 ゲームの中なんだけどね。

 そういえば今更ながら太陽が3つあるんだと気づく。

 街の精巧な作りにばかり目がいって上を見るのを忘れていた。

 大きな太陽を中心に少し小さな2つの太陽が回転している。


 ギリギリの戦闘は当分お腹いっぱいだな。

 今日はのんびりと行きますか。

 まずは転職屋からだな。

 ダンジョンクリアの報酬のアナウンスで存在感を失っていたが暗殺者Lvがマックスの20に上がっていました。

 ということで三次職への道が開けたはず。


 しかし悩む。

 ここアルムニッツで転職するか、それとも王都『グランシャリア』で転職をするのか。

 情報ではグランシャリアでしかなれない職業もあると聞いてしまったので迷いが生まれた。


 よーし、グランシャリアまではモンスターもほとんど出ないことだし、そっちで転職しよう。

 こんなことならグランシャリアに送ってもらえば良かったな。

 まぁ、気にしても仕方ないか。


 モンスターがほとんど出ないこともあって馬車が走っている。

 貸し切りタイプもあるが、無駄遣いは良くないので相乗りタイプの馬車を選択する。


 馬車を使用するのは戦闘職ではない生産系の職業や文化系の職業のプレイヤーが多い。

 王都はそういった職業が活動しやすい環境が整っている。

 商人は商売をしやすいし、鍛治師にとっても質の良い工房があり、アイテムの売買がしやすい。

 現地人(ローカルズ)も店を出しているし、プレイヤーの露店で購入したりもする。


 うーん、湖都(こと)のいった通りあの馬車とは比べものにならないほど揺れてお尻が痛い。

 ダメージを受けるんじゃないかと思うほどだ。

 しかも二匹でひいているのに遅い。

 黒馬の本気を出した姿ではない通常時と比べても断然に遅い。

 ちなみに黒馬の種族はバイコーンというらしく、ユニコーンの亜種らしい。

 幻獣ということであればあの性能も頷ける。

 それと普通の馬を比べてはかわいそうというものか。


「やぁやぁやぁ、私は弩弓術士のてるみんっていいますにゃん」

 急に一人の猫耳女性が自己紹介を始めた。

 猫耳は装飾品ではなく獣人という種族で初めて見た。

 尻尾もしっかりと生えている。

 しかし、語尾がにゃんになるなどはなかったはず。

 凝ったロープレだ。


 馬車には数人乗っているがそのノリの自己紹介に付き合うのはハードルが高い。

「ハッハッハ元気な娘さんだな、俺は重戦士のガーベルだ」

 いの一番に自己紹介を返した筋肉隆々のガーベルは現地人(ローカルズ)だ。

 それでも場は少しは和んだ。


「俺は斧術士のジークだ」

「暗器使いのクロツキです」

 よし、しれっと混ぜれたぞ。

「刀匠の青江(アオエ)じゃ」

「御者のワトソンです。本日は当ワトソン便のご利用ありがとうございます」

 最後に砕けた挨拶を返したワトソンは現地人(ローカルズ)ではなくプレイヤーだ。


 てるみんのおかげでつまらなかった馬車の中も明るくなり会話が弾むようになった。

 ワトソンの職業である御者はなんと三次職らしい。

 文化人から商人になり、運輸を商売にする御者になったとのことでそこそこ稼いでいるらしい。

 この相乗り馬車も本来の目的は物資の運送で余ったスペースを安く提供しているとのことだ。


 てるみんの職業も射手から弓使いそして弩弓術士なので三次職。

 横に折りたたまれた弓を置いている。


 ジークも戦士から重戦士、斧術士なので三次職。

 巨大な戦斧が特徴だな。


 青江さんは生産者から鍛治師、そして刀匠で三次職。

 一応武器として大槌を装備している。

 青江さんをさん付けなのは厳格そうな老人の見た目だから自然とそうなってしまった。


 つまり現地人(ローカルズ)の重戦士ガーベル以外は三次職ということになる。

 なんだか急に居心地が悪くなってきた……こともなかった。


「暗器使いかー、隠者系統の二次職だにゃん。今日あったのも運命、レベリング手伝ってあげようかにゃ?」

 喋った印象でてるみんは明るくお人好しだとすぐ分かった。

 そんでちょっといた……いやそれ以上は言うまい。


「それなら俺も手伝うぜ」

 ジークもそういってくれる。

「戦闘はあれじゃが武器ならワシが見繕ってやろうかのう」

 あれ、なんだか皆がすごく優しい。

 俺がここまで出会ったプレイヤーなんてPKばっかだったのに。

 もっと早く出会えれば良かったのに。

 いや、これから繋がっていけばいいだけさ。

「ありがとうございます。ただ、もうレベル30なんですよ」

「そうなんだにゃ、隠者系統でレベル30って私の知ってる中だと一番高いにゃん」

「いや、確かイヴィルターズのナナシがすでに三次職だったんじゃないか」

「あー、そういえばそうだったにゃ」

 てるみんとジークは掲示板をかなり見るらしい。

「まぁ、職業柄滅多に表に出てこないし、他にもいるかもしれないけど少ないとは思うな」

「隠者系統はレベリングが大変だからにゃあ」

「まぁ、色々ありまして気づけば上がってましたね」


 俺はシュバルツ家のことを隠してPKやオウカとのダンジョンクリアを話すと馬車の中は爆笑の渦に包まれた。


 主にてるみんとジークだがな。

 シュバルツ家のことは隠しながら喋る。

 お世話にもなっているし無下にはしない。


「運がいいのか悪いのか分かんないね」

「すげぇな、公式イベントも来てないのにすでにそんなに面白いことを経験してるなんて」

「まぁ、何はともあれこれからはユニークアイテムのおかげで戦闘も楽になれるはずです」


「なぁ、できればそのユニークアイテムとやらを見せてはくれんかのぉ。それなりにお礼もさせて貰う」

 ユニークアイテムの情報はかなりレアだ。

 しかし、お礼もくれるといっているし別にいいんじゃないかなと思ってしまう。

 それほどにこの馬車内は楽しい。

 俺が不運だったせいで余計にそう思えてるだけかもしれないけど……


「いいですよ、小刀《刹那無常》です」

「おほっ、こっこんな美しい刃が存在するのか……これが見れただけでもゲームを始めた甲斐があったというもの」

 冷静そうな青江さんがここまで興奮するとは。

 理由を聞くと青江さんはリアルでも刀匠らしく、勉強の一環でこのゲームを始めたところ、あまりにもリアルすぎてハマってしまったらしい。

 今ではゲーム内のクオリティの刀をリアルで作ることが目標らしい。


「王都に着いたらこのお礼はさせて貰う。準備が出来たら連絡しようと思うんじゃが……」

 青江さんからフレンド申請され、もちろんYESを選択。

 結局、現地人(ローカルズ)のガーベル以外のプレイヤー全員とフレンド登録をした。


 ゲームって最高だ!!

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同シリーズを毎日投稿しているので、ぜひよろしくお願いします!!

もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
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