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16話 不死の王

 避けようのない炎を前にただただ顔を隠すしかできない。

 炎が体を覆い尽くすが熱さも痛みも感じない……

 ダメージも受けていない。


「ヘビィアーマー」

 俺の体を覆っているのは炎だけではなく、鉛色の透明の鎧もだった。

 ヘビィアーマーが炎から俺を守ってくれて、炎が消えていく。

「ありがとう」

 俺は後ろでスキルを発動させていたサクラにお礼言ってウィザードを乱刀・斬で斬り刻む。

 ソルジャーと違って防御は低かったようですぐに倒せた。


 ウィザードを倒してもヘビィアーマーは俺の体を覆っていた。恐らくは一定時間防御力を上げるスキルなのだろう。

 しかも、鎧に重さは感じない。

 これがパーティプレイなのかと感動してしまう。

 とはいっても助けて貰ってばかりなのだが。

 もっと頑張らなければ。

 例の如く、ウィザードを倒した頃にはソルジャーはすでに粉々に砕かれていた。


 そこからも止めどなくスケルトン達はやってくる。基本は三体で出てくるのだが種類は様々で確認できたのはソルジャー、ウィザード、シールダー、アサシンだった。


 シールダーは大楯を持ったスケルトンで俺ではどうすることもできずサクラに任せた。

 申し訳なさがあったがアサシンのおかげで少しはサクラの手助けもできたかなと思う。


 アサシンは俺と同系統でAGIが高く、サクラがどれだけ頑張っても攻撃を避けられるらしく俺が倒した。


 スケルトン50体が波のように出てきた時はきついなと思ったが、ヘビィアーマーを再度かけて貰って後はひたすらに斬り続けるだけでスパスパと倒せるものだから、あれはなんとも気持ち良かった。

 ただのスケルトンで助かった。


 100匹以上はスケルトン種を狩り続けているおかげでレベルも面白いように上がっていく。

 今のレベルもかなり上がって、暗器使いの職業レベルが18になっている。

 レベルが上がって新たなスキルも覚えた。

 不意打ちは暗記使いLv10で獲得できるスキルで相手の意図していない攻撃を当てるとダメージが増える。

 残念ながら意志のないスケルトンでは不意打ちは発動しないのでこのダンジョンでは使えそうにない。


「かなり奥深くまで潜ってきたが、まだ潜るのか?」

 まだまだ余裕はあるが奥深くまで潜ったということはそれだけ帰りも大変だということになる。

「大丈夫、もう少しでボス部屋だから」

「なるほど」

 ダンジョンボスを倒せばそのパーティはダンジョンの外へワープができる。

 戻るよりも効率がいい。

 もし負けてデスペナルティになってもそれ以上にこのダンジョンで経験値を獲得することができた。


 だが、サクラは違うだろう。

 レベルが上がれば上がるだけデスペナルティは重くなる。

 なんとかボスを倒したいものだな。


 サクラの言葉通り、何体かスケルトンを倒してボス部屋の前に辿り着いた。

「ステータスを上げておこうと思うから少し待ってくれ」

「分かった、私も装備を替えるから」


 俺はAGI極振りで行こうと思う。

 サクラの言う通り、中途半端に上げるくらいなら極振りだ。

 もしも範囲攻撃があれば、その範囲外に逃れるスピードがあればいいだけだ。

 防御力の高い相手は相性が悪いと諦めるか、どうしても倒したいならパーティを組んで倒せばいい。


 パーティプレイの楽しさをサクラのおかげで知ることができた。


 サクラが装備を替えた姿はフルフェイスの赤を基調としたゴツい鎧で近くで見ると燃え盛る炎のような模様が入っている。


「フッ、驚いた?」

「いや別に驚いてないよ」

「むっどうして、正体は隠していたはずなのに……」

「いやいや、街では気づかなかったけどパーティを組めば相手の名前なんて分かるだろ。逆に隠してるつもりだったのか」

「そっ、そんな……衝撃のミス、偽名を使ったのに」

「偽名って言ってもサクラが本名なんだろ、自分でそう言ってたからゲーム名じゃなくて本名で呼んで欲しいんだなと思ってたよ」

「恥ずかしくて、ヒットポイント0になる」

「勘弁してくれよ、今からボス戦なんだぞ」

 まさかあれで隠してるつもりだったのが驚きだ。

 しかし、サクラ、いやオウカか、どっちで呼べばいいんだ。


「確かに……負けられない戦いがある」

「ちなみに俺はどっちの名前で呼べばいいんだ」

「むむむ、今更変えられるのは恥ずかしいけど……」

「じゃあ今後はオウカって呼ぶからな、だいたいどうしてこんなダンジョンにこだわるんだ。しかも俺を誘ったのはどうしてだ」

 隠しダンジョンは表のダンジョンと違ってレベルが高かった。

 だがオウカのレベルを考えればこだわるのは不思議だし、俺を誘った理由も分からない。


「ここは私しか知らない隠しダンジョン。そして私が初めて死んだ場所でもある」

 なるほどリベンジマッチというわけか。


「じゃあ俺はどうして……」

「三次職になってからリベンジに来た。そしてまたやられた。私とは相性が悪かった……でもクロツキのお兄さんとならなんとかなるかもって思った」

 ということはアサシンのようなAGIの高いボスということか。


 ボスの特徴を聞いて作戦会議を行う。

 なんとそのボスは地下迷宮の真のボスで表のボスモンスターは今から戦うボスが作り出したスケルトンが成長した一体らしい。


 俺たちは満を辞して扉を開けた。

 広い正方形の部屋の最奥に玉座があり、そいつは堂々と座して待つ。

 部屋の真ん中程まで歩みを進めるとそいつは動き出した。


「客人とは珍しいな……あぁ、そこの女は何度かきたことがあるな、再び殺されにくるとは」

 邪悪な法衣を纏ったそいつは杖をついて立ち上がった。

「今日こそはお前を倒す」

「ふっ、ハッハッハッハッハッハ、無駄と言うのになんとも健気だな。初めてのものもいることだし紹介をしておこう」

 骸骨の目に赤き光が灯り、邪悪なオーラが立ち込める。


「我こそは『スケルトン・オーバーロード』、不死の王にして死を超越する者なり」

 オーバーロードが杖で地面を叩くと、地面から無数のスケルトンが出現する。

 それはこれまでに倒してきた様々な種類のスケルトン達。

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もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
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