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13話 逃げるが勝ち

 巨大な腕と胴体の鎧が消えていく。スキルを解除したのだろう。

 まさか、このタイミングでの攻撃なんてないと思っているはずだ。

 そこに最速の攻撃をお見舞いすれば倒せるはず。


 敏捷向上(アジリティアップ)を使用して、一瞬でオウカの背後に回り、ダガーナイフで首元を斬りつける。

 そして、見事に鎧に弾かれた。

 首元まで覆われているフルアーマーのオウカの防御を俺の攻撃力で抜けるはずがなかった。


「むっ、さっきまで遠くにいたはずなのに、いつの間に……」

「なっ!?」

 気づかれていたこと、そしてその声の主が少女のものだったことに驚いたが、そんな驚きも一瞬で消え去るほどのプレッシャーが上空から降ってくる。


 鎧巨人の豪腕は避けれない一撃ではない。

 問題は避けたはずなのにダメージを負っていること。

 肌が焼けるように熱い。

 炎を纏った攻撃は熱風を発生させている。

 普通は気にならないんだろうけど、俺の場合はその風にさらされただけで瀕死に近いダメージを与えられた。


 どうするか、どうすれば倒せるのか。

 相手は三次職の3人を圧倒した。

 プレイヤーからの報告も公式発表もされてない四次職はまだ解放されていないはず。

 オウカは4次職に近い3次職ということになる。

 一次職の職業Lvの上限が10、二次職なら20、三次職なら30となる。

 オウカの総合Lvは50台に乗っている可能性が高い。

 俺の総合Lvが22、その差は2倍以上になる。


 叶うわけがない。

 そもそもなぜ攻撃を仕掛けたのだろうか。

 しかも倒せると思うだなんて……

 まさか!?


 慌ててステータス画面を確認して気がついた。

 そこには狂乱と表示がされている。

 正常な判断が出来なくなり攻撃的になるという、精神状態異常の一種。

 重戦士の中でもタンク役がよく使う挑発スキルを受けたときなどの状態異常だ。


 いつの間にかけられていたんだ。

 いや、オウカは俺が遠くから観戦していたのを知っていた。

 それで挑発をかけて近寄ってくるのを待っていたのか。

 逃げの一択しかない。

 まず勝ち目がない。

 いや、逃げるが勝ちだ。


 幸いにもオウカはAGIをほとんど振っていなかったことと、先の戦闘で消耗していたこともあり逃げ切ることができた。

 それにしても挑発スキルとは恐ろしいスキルだ。

 まるで自分で思考し、さもそれが当然のようになってしまっていた。


 しかし、まとめサイトにも書かれていた暗器使いの弱点が改めて浮き彫りになってしまったな。

 それは圧倒的な火力不足……

 とりあえずはこの街でどうするか考えてみるか。

 俺はオウカから逃げはしたものの、当初の予定通りに次の街へ到着していた。

 第二の街『アルムニッツ』、ここには楽しみにしていた店もあるしな。



§



 オウカは自らのスキルで荒野になった大地で1人立ち尽くしていた。

「帰るか……」

 来るときは大人数でワイワイとしていた。

 少しうるさすぎて嫌になっていたのだが、誰もいなくなって1人での帰路、それはそれで寂しく感じる。


 現在のホームになっている三つ目の街に向かうにはオウカのAGIでは時間がかかる。

 このゲームに街と街を繋ぐワープゲートのようなお手軽な移動手段はない。

 来るときは仲間の1人の乗り物でやってきた。

 その一人も見事に死んでしまった。

 オウカはアルムニッツで迎えを待つことにして、フレンド達に連絡をつけた。

 オウカのフレンド達とは全員が修羅のメンバーだ。


 修羅と名乗ってはいるもののこのゲームにはまだギルドがない。

 公式の発表では簡単な条件で出るようになるとあったが未だにその条件をクリアしているプレイヤーはいなかった。


「みんなやられて一人なう。迎えにきて」

 通話相手は修羅の主要メンバーである3人。

「おう、お疲れさん。どうだったステイラの奴らは?」

「弱かったよ、団長はつまらないっていうと思う」

「なんだよ、それは残念だな。湖都(こと)かアートマどっちか迎えに行ってやってくんね」

「ウチは今立て込んでるんやけど……」

「どこにいけばいいのだ?」

「アルムニッツ」

「少し遠いな、時間がかかるがよろしいか?」

「うん、ありがと。あっ、そういえば面白い人がいたよ」


「なんだと、誰だ!?」

「うーん、名前は分かんないけど、めちゃくちゃ速かった。すぐ逃げられた」

「挑発かければよかったのでは」

「かけたけど効き目イマイチ」

「ということは、隠者系統ですかな」

「やってみてぇな」

「時間もあるし、その人もアルムニッツにいるはずだから探してみる」

「おう、サンキュー」 


 通話を切ったあと、のんびりとアルムニッツを目指して歩みを始める。

「むっ……」

 モンスターの群れが走ってきているのが見えた。

 挑発はかけてないが知能のないモンスターは近くにいる敵にすぐに攻撃を仕掛ける。


 結構な距離からこちら目掛けて一直線。

 近くに他のプレイヤーがいないのだろう。

 人間の倍のサイズを悠々と超える巨体が四足歩行で駆けてくる。

 アルム(いのしし)の群れはレストリアからアルムニッツへ初めていくプレイヤーにとっては鬼門になる。

 しかし、それは二次職成り立てに限った話で三次職後半のオウカの敵にはならない。


「はぁ……」

 さっきの全身黒いお兄さんも何の苦労もせずに通り抜けただろうと思案しながらオウカは大きくため息をついた。


 ため息の理由はオウカの戦闘スタイルにある。

 職業、鎧巨人(よろいきょじん)に武器スロットはない。

 その代わり装備している鎧の能力をコピーしたものを巨大化させ顕現させて自由に扱える。

 攻撃にも防御にも応用が効くがデメリットも多い。

 まず、発動中に自身は動くことができない。


 鎧巨人の豪腕で軽々とアルム猪を蹴散らした。

 そしてオウカは移動を開始するが、少し歩くとまたモンスターが襲ってくる。

 再び止まって蹴散らして、歩いて、モンスターに襲われてを繰り返してようやくアルムニッツに到着した頃には日が落ち始めていた。

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もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
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